孤独凡人応援歌
テーマ【憂鬱】
朝が嫌いだ。
都合の良い、優しい夢を見ていたのに、
携帯電話のアラームが容赦なくそれを壊す。
夢の続きを見たくても、一度手放してしまった夢は二度とは来ない。
それよりも、現実に帰ってきてしまった悲しみで、
僕は今日も目を覚ます。
朝のニュースが嫌いだ。
無駄に明るい笑顔で、「今日も頑張ってください!」という女子アナの笑顔とその声を聞くと気が重くなる。
無責任で、腹の立つことなのだが、顔が可愛いから見続けてしまう。
朝の通学時間が嫌いだ。
満員電車の中で、朝なのに汗臭いおじさんに押され、
良い歳をして化粧や香水の匂いにまみれたおばさんに足を踏まれ、
そんな中でも文句も言えず、ただ目的地にたどり着くのを僕は待つ。
僕はベルトコンベアーの上の部品。
そう念じながら、ただ時を待つ。
駅から学校への通学路が嫌いだ。
眩しいほどの笑顔、希望に満ちた声、活気にあふれた足音。
下を向いて歩く僕に入ってくる情報はこれだけだ。
それでも、僕の心は悲鳴を上げている。
早足で学校に向かう。
早く着いたところでいいことなんてないのだけれど。
学校の下駄箱から教室へ向かう階段が嫌いだ。
一歩、一歩、進む度に、胃が軋みを上げ、胃液がこみ上げてくる。
一段、一段、階段を昇るたびに、足が震えだす。
にぎやかな教室、誰も近寄らない自分の席。
透明人間の僕は誰にも気が付かれずに席に座る。
昼休みが嫌いだ。
授業中なら自分の席に座り続けることに、なんの疑問を持たずに済むけれど、
昼休みになり、クラスメイトが自由に移動し始めると、
とたんに居心地が悪くなる。
自分の席なのに。
追い出されるように席を立つと、こういう時だけクラスメイトが空いた席に座る。
僕は人気のない場所で、一人ご飯を食べる。
帰り道が嫌いだ。
満身創痍で心も体もボロボロな僕に、通学路という長い道は容赦なく立ちふさがる。
これが最後だと、心も耳も塞いで、目線は斜め下に。
誰にも目を合わせず、誰にも関わらず、誰にも迷惑をかけない。
自分の影だけが、いつも僕と一緒にいてくれる。
なんて、強がりすら言えないくらい、僕は疲れている。
これで最後。
そう念じながら、何度繰り返してきただろうか。
あと何度繰り返せばいいのだろうか。
カレンダーに祈るように刻むバツ印。
数えるのを止め、ただの心を保つ行為にしかなっていない。
世間という名のやすりで擦られた心は、だんだんと痛みを感じなくなっていき、
人の目線に怯え、恐怖で麻痺してしまった脳は、だんだんと考えるのを止めてしまった。
夜は好きだ。
誰もいない。誰も僕を見ない。五月蠅くない。
寝る前のわずか数時間、僕の心のオアシス。
つかの間の充電時間。
けれど、疲労困憊の僕の瞼は、すぐに重くなってしまう。
倒れるようにベッドに倒れると、埃っぽい毛布が僕を包んでくれる。
また夢を見よう、僕だけの、優しい夢を。
そう思いながら僕は意識を手放す。
けど、寝たらまた朝が来るから、やっぱり夜は嫌いだ。
【読了後に関して】
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