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続・シュレディンガーの鴨葱  作者: ネギ愛好家
10/17

祈りの名

テーマ【名前】


あたしは自分の名前が嫌いだった。

他の友達の名前みたいに、音の響きも良くないし、漢字も可愛くない。

極めつけに、古臭い。良くないの三拍子。

だから、あたしは下の名前で呼ばれるのが嫌いだった。

皆が下の名前をあだ名で呼ばれているのに対して、いつもあたしは名字であだ名をつけさせた。


あたしを下の名前で呼ぶ人ができた。

好きでもない名前を「良い名前だね」とその人は言ってくれた。

彼は、あたしが嫌だと言っても、あたしのその名前を呼ぶ。

嫌だというたびに、良い名前だよ、と言われて黙ってしまう、あたし。

そのうち、だんだんと、昔ほど自分の名前が嫌いにならなくなっていた。


あたしが名前を付ける番になった。

あたしの名前を呼ぶ人と一緒に、その子の名前を考える。

季節、響き、漢字、画数。

どの名前も素晴らしく見え、どの名前も違うように見えた。

今度こそ、この名前だ、と思っても、頭の中で、あたしの声で、叫び声が聞こえるのだ。


「こんな名前をつけてほしくなかった」

小さい時、そう言ったあの日の母の表情が今も忘れられない。

なんて酷いことを言ってしまったのだろうか。

母も、今のあたしのように、こうしてたくさん本を読んで、徹夜して、頭を悩めて、この名前をつけてくれたに違いない。


それなのに、あたしは、そんな母の祈りに気が付かず、その願いを否定した。


「こんな名前をつけてほしくなかった」


あたしの声で、生まれていない我が子がそう言う夢を見る。

因果応報。

自分の名前を好きになれなかった自分が、人の名前を付けるなんて、なんておこがましいのだろうか。


大きくなるお腹。

比例して膨らむ、希望と、悩み。

決められないあたしに、彼は

「まずは、自分の名前を好きになればいいんじゃないか?」

と、子供の姓名判断の本で、あたしの名前を引いた。


――女性がつつましく清らかであるさま。


「ははは……。全然、違うじゃない」

今のあたしとあまりに違い過ぎる願いに、思わず乾いた声が出てしまう。

「だから、親の願い、なんだよ。どう生きるかは、君次第なんだよ」

「あたし、次第……?」

「そう、だから、この子がどんな名前だろうが、どう生きるかは、この子次第なんだよ」

「そっか――」


その言葉で、肩の荷が下り、気が楽になったような気がした。

願い。

それは、あくまでも願い。

あたしが嫌いになった名前も願い。

あの人が好きになった名前も願い。

だから、これからこの子につける名前も、願い。

あたしが、この子に名前を否定されようと、それに負けないくらいの、祈りを注ごう。

この子が幸せに、多くの友人に恵まれ、才能に溢れる子になるように。


――願い過ぎだって?


だって、願うのは自由でしょう。


【読了後に関して】

感想・ご意見・ご指摘により作者は成長するものだと、私個人は考えております。


もし気に入っていただけたのであれば、「気に入ったシーン」や「会話」、「展開」などを教えてください。「こんな話が見たい」というご意見も大歓迎です。


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