30 大きなトカゲ 02
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グランヴァイツはトリスティアを自分の前に乗せて馬を走らせ、フランツは一際足の速い馬に乗ってグランヴァイツについて行った。
トリスティアを守るために数十名の護衛騎士も従った。アルスターが森に向かう時よりもしっかりとした守りだった。
しかし、その様子にサラは安心よりも悔しさが募った。自分も、馬に乗れたならついていけたのに。
トリスティアを見送ってからサラは城を守るための騎士たちを振り返った。そのサラの厳しい視線に騎士たちは自ずと背筋を正す。
「どなたか、わたくしに乗馬を教えてくださいまし!」
次にこのようなことがあった際には、絶対に自分がトリスティアを馬に乗せるのだと息巻いて、サラはやる気に燃えていた。
グランヴァイツたちが数日を費やして森の近くまで行くと、頭上が急に暗くなった。
「どうやら、迎えが来たようだ」
すでに経験済みのグランヴァイツは上を見上げ、ドラゴンが来たことを周囲に知らせた。
トリスティアの力を感じたのか、ドラゴンにはトリスティアが来たことがわかったのだろう。
ドラゴンの前足にはアルスターが掴まれていた。
まさか、ずっとあの状態だったのだろうか? とグランヴァイツは少し心配になった。
トリスティアの体調を気遣って、ここまでこまめに休憩を挟んできてしまったが……
ちなみに、休憩を終えて走り出す時には毎回、誰がトリスティアを馬に乗せるかで揉めるため、護衛騎士含めて、皆で少しずつトリスティアを乗せてここまできたのだった。
「ドラゴンよ! 聖女様を連れてきたぞ!」
騎士団長は馬を止めて、そう声を上げた。
ドラゴンは翼を羽ばたかせて、地上に降りてきた。
騎士団長はトリスティアをしっかりと抱きしめて、マントで覆い、風圧から守った。
「これは……本当に子供ですか?」
フランツはドラゴンの大きさに疑問を呈した。
「フランツは大人のドラゴンを見たことはないか?」
「私は基本的には城から出ませんからね。ドラゴンを見たのはこれが初めてです」
アルスターが遠征する時でも、フランツは大抵城にいた。
「大人のドラゴンはこの比ではない」
フランツはドラゴンが生物の中で最強の存在だと言われていることに納得した。
どんな生物よりも大きい。それだけで、十分に脅威だろう。
【偉大なる存在に愛されし聖女よ。僕のママを助けて】
トリスティアに向き合ったドラゴンは涙を流し始めた。
「わたくしができることならできる限りのことをするわ。でも、その前に、アルスター様のことを返してほしいの」
トリスティアの言葉に、ドラゴンは【いいよ】と、あっさりと右前足で掴んでいたアルスターを放り出した。
そして、そのままその前足をトリスティアの前に差し出した。
【さぁ、僕と一緒に来て】
トリスティアはその前足に小さな体でよじ登ろうとしたが、なかなかうまく登れない。
「トリスティア様! 危険です!」
フランツが止めようとしたが、ドラゴンが軽くブレスを吐いてフランツの足を止めた。
「大丈夫です!」
トリスティアはなんとかドラゴンの足によじ登ってフランツを振り返った。
「ドラゴン! トリスティアを連れて行くのならば、私のことも連れていってくれ!」
トリスティアの前で尻餅をつくような無様な姿を晒すことに耐えたアルスターは、両足でしっかりと立ち、ドラゴンを見上げた。
【再び捕まりたいということ? 随分物好きだね】
「トリスティアと同じ手? 足? に乗せてくれればいいのだが?」
【聖女を攫われたら困るからそれはできない】
アルスターたちからすれば、トリスティアを攫おうとしているのはドラゴンの方だが、結局のところドラゴンの力にはどう足掻いても叶わないので、アルスターはおとなしくドラゴンの前足に掴まれた。
先ほどは右前足だったが、今度は左前足だ。
ドラゴンは右前足にトリスティアを乗せて、そして、左前足でアルスターを掴んで、翼をはためかせて空へと上がった。
【人間たちよ、聖女のことは後でちゃんと返すから、待ってて】
それだけ言うと、ドラゴンは森の奥へと飛んでいった。
「トリスティア様は大丈夫だろうか?」
「アルスター様も一緒だ。きっと大丈夫だろう」
遠ざかるドラゴンを見つめながら、フランツとグランヴァイツが言った。




