24 森へ
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トリスティアの社交デビューともなった歓迎パーティーが終わって数日後、アルスターと騎士団長は魔物たちの様子を実際に見に行くことにした。
少数の騎士で出向き、多くの騎士たちには城の守りを任せる。
(執務は溜まりそうだが、仕方ないか……)
そうアルスターは思っていたのだが、アルスターが不在の間、オトカールが大公代理として執務を進めておいてくれるそうだ。
大公を継ぐのも、自分の子孫に継がせるのもごめんだという態度だった老貴族がなんの気まぐれかと思ったが、どうやらトリスティアと親しくなることが目的のようだ。
もしかすると、トリスティアのことが気になっているらしい孫の応援がしたいのかもしれない。
最近では隠居を仄めかす発言も出てきていたというのに、年寄りの考えとはわからないものだとアルスターは苦笑した。
まさか、無理やりトリスティアと孫をくっつけるようなことはしないとは思うが、アルスターは少し心配になった。
「フランツ、もし、オトカールや他の者がトリスティアに何か強要しようとしたら……」
「そのようなこと、決してさせません」
フランツがにっこりと笑みを深めた。
アルスターは大公という権力を持つ自分よりも、フランツの方がよほど怖いと思った。
「それに、トリスティア様のそばには常にサラがいますから、大丈夫でしょう。サラは最近、剣術も始めたのですよ」
トリスティアの侍女としてついてきたはずのサラはなぜか熱心に筋トレを行い、剣術まで習い始めたらしい。腕前は騎士には劣るものの、フランツよりは強いそうだ。
「アルスター様、ご無事のご帰還をお待ちしております」
出発当日の朝、トリスティアがアルスターを見送ってくれた。
ちなみに、アルスターがいない間、サラがトリスティアと一緒に寝ることになっている。
そのためか、サラは機嫌が良さそうだ。
「トリスティア、ありがとう。ちょっと様子を見てくるだけだから心配いらないよ」
心配そうに大きな瞳を揺らすトリスティアにアルスターは安心させるように微笑んだ。
それと同時に、娘が見送りをしてくれる父親の心情とはこのようなものかと、その喜びを噛み締めてもいた。
「サラ、フランツ。トリスティアのことを頼んだよ」
二人は「お任せください!」と力強く返事をした。
城のある都を離れて数日後、騎士団長のグランヴァイツとアルスターは聖王国の境にある大きな森の手前まで来ていた。
そこに至るまでの道中も当然、魔物に警戒していたが、一匹たりとも見ることはなかった。
そして、森の目前まで来ても、魔物がいないことにアルスターもグランヴァイツも驚いていた。
「ここまで来ても魔物の姿を見ないとは……」
「やはり、魔物が劇的に減少しているようですね」
「しかし、それでは、魔物たちはどこに行ったのだろう?」
アルスターの視線は自然と森の奥、聖王国の方へと向けられた。
「わかりかねます……」
グランヴァイツもそのような言葉しか返すことができなかった。騎士見習いの頃からこの森には何度も来ているが、このように静かな森は初めてだった。
グランヴァイツも、やはり、聖王国の方へと視線を向けた。
たとえ、本当に聖王国に魔物が押し寄せているのだとしても、トリスティアに行ったことを思えば、同情の気持ちもそれほど起きなかった。
いや、正確には、国民には心から同情するが、王族に対してはそうではなかった。
「では、状況を確認したことだし、早く城に戻ろう。トリスティアが心配しているといけない」
「そうですね」
森の中の状況などを調査するための騎士たちは残していくが、アルスターは長居をする必要はない。
早々にトリスティアのもとに帰ろうと馬の向きを変えたその時、明るかった周辺が急に暗くなった。
雨雲が出てきたのだろうかと思って空を見上げた二人は、息を呑んだ。




