23 歓迎パーティー 02
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老貴族の歓迎の言葉に、貴族たちはほっと緊張を緩めた。
前大公殿下の弟であり、兄である前大公に聖王国から養子をとることを勧め、そして、実際に聖王国と交渉してアルスターを前大公の養子に迎えた大公国の重鎮、オトカールだ。
現在は隠居して政治からは距離を置いているものの、その影響力はいまだに衰えることはなく、オトカールに嫌われた者は大公国での居場所を失うも同然だった。
トリスティアを囲む周囲の大人達はトリスティアならば大丈夫だとは思いながらも、実際にオトカールに会わせるまでは多少の不安はあった。
オトカールがトリスティアに歓迎の言葉をかけたことにより、その不安も払拭されたのだった。
「これまでも年に数回、聖女様が来てくださっておりましたが、これからはずっとこの国にいてくださると思うと、とても心強いです」
オトカールの言葉に、トリスティアは首を傾げた。
「心強い、ですか? わたくしが?」
「ええ。悲しみの聖女様の声は、我々の心に安寧をもたらしてくれますので」
「……わたくし、お役に立てますか?」
トリスティアの言葉に、アルスターもサラもフランツも、そしてアルスターの護衛としてそばにいたグランヴァイツも緊張した。
オトカールの答えによっては、トリスティアはこれまで以上に頑張り、無理をしてしまうかもしれない。
トリスティアの言葉にオトカールはその場にしゃがみ、トリスティアと視線を合わせた。
その姿に貴族たちは驚く。オトカールがしゃがみこむところなど、これまで見たことがなかったからだ。
「貴方様は、この国にいてくださるだけでよいのですよ。誰かの役に立とうと思うのは、聖女としてのある種の本能のようなものなのかもしれませんが、貴方様は存在そのものが高貴なのです」
老貴族にそう微笑まれて、トリスティアも微笑んだ。
「お優しいお言葉をありがとうございます」
そのトリスティアの様子に、老貴族はしばし彼女を見つめて、それから苦笑した。
「聖女様は、私が思っているよりも随分と大人であられるようだ」
その時、ダンスのための音楽が流れ始めた。
「トリスティア様、ファーストダンスをお願いします」
フランツに声をかけられたトリスティアが振り向くと、アルスターが手を差し出した。
「お嬢さん、一曲踊っていただけませんか?」
なんとも芝居がかった誘い言葉に、トリスティアは笑った。
「喜んで」
アルスターの手に手を重ねて、二人は広間の中央へと向かった。
お互いに礼をして、改めて手を重ねて、アルスターがトリスティアの足取りを導くように踊る。
トリスティアの小さな体が大人の力に負けないように、丁寧に丁寧に扱うアルスターの姿に、会場にいる女性たちは見入っていた。
実際の年齢よりもずっと年上に見えるアルスターに一目で恋に落ちるような若い令嬢はいなかったが、それでも、アルスターの穏やかな人となりを見て、淡い気持ちを抱いている令嬢はいた。
そして、幼い聖女を庇護するアルスターの姿に心動かされる令嬢が増えていた。
トリスティアへの接し方で、彼が非常に繊細で優しい人柄だと気づいた令嬢たちは、アルスターに惹かれる。
トリスティアのファーストダンスが終わると、夫婦や婚約者同士で踊る者たちが中央に集まってきて、音楽に合わせて踊り始めた。そんな彼ら彼女らからトリスティアとアルスターは少し離れる。
「トリスティア、疲れただろう?」
トリスティアに飲み物や甘いものでも持ってこさせようかと声をかけたアルスターだったが、すぐに周囲のトリスティアへの熱視線に気づいた。
少女たちも興味深そうにトリスティアに視線を向けているが、少年たちの視線が集中している。その中でも、オトカールの孫が近寄ってきた。
「トリスティア様、私と踊っていただけませんか?」
まだトリスティアを一人にするのは心配だったが、こうしてダンスの申し込みをしてくれているのだ。
彼らと踊ることによって、この国により馴染んでくれるのならばと思ったが、一度は離れたトリスティアの手がアルスターの手を握った。
「すまない。トリスティアは慣れない状況に疲れてしまったようだ。休憩の時間をくれないだろうか?」
「僕のほうこそ、配慮が足りずに申し訳ございませんでした」
彼は礼儀正しく頭を下げた。
アルスターはトリスティアを連れて壇上の席まで案内する。
すると、まだ飲み物を頼んでいないにもかかわらず、フランツがすぐにトリスティアに飲み物を用意した。
「トリスティア様、ダンス、お上手でしたよ」
「わたくし、きちんと踊れていましたか?」
サラの言葉にトリスティアは少しホッと息をついた。
「非常にお美しかったです」
フランツも褒めた。
「上手にできていたのなら嬉しいです」
トリスティアが嬉しそうに微笑んでいる姿に、やはり少年たちの熱視線が注がれている。
それを受けて、サラもフランツもどことなく自慢げである。
トリスティアの可愛さが他の者たちに知られて誇らしいようだ。




