99.大切な忠告をするようです
難産回
【人造人間とはその文字の指し示す通り! 何者の手で生み出された人間の事であるっ!】
【人造人間……それは一般的に男女が厚く結ばれた後に産まれてくる様な赤ん坊とは違い、あくまで目的があり強引に生み出された存在であり、明らかに通常の人間である我々とは違っている。
そしてその一例となるモンスターと言えば、かつてこの博識王ガリヴァ―ことこの私が昔に研究の為に立ち寄った闇の大陸……その名も死霊モンスター達の天国ゾンビアイランドに住まう『デビル・フランケン』が最たる例となるだろう。
その青白く巨大な体、全身にはつぎはぎの痕跡が残っているという如何にもな姿をしていたそのデビル・フランケンに狙いを付けた私は約半年に渡り、彼らの生態や歴史を追っていった。
そして私が知りえた二つの情報を次に纏める。
・肉体年齢と実年齢が一致していない。
これは考えれば非常に単純な話だ。
赤ん坊は母親の体内から産まれ出た時点からだが、人造人間は覚醒した時点で【0歳】となる。
よって例に挙げたデビル・フランケンの場合は【見た目こそ20代前半】の成人の男性だったが、知能や精神などについてはまだ幼く、言ってしまえば幼児に等しい未成熟状態である事が分かった。
・異世界の技術の可能性が示唆される。
これに関しては確証とまではいかない点もあるが、彼らのアジトに残っていた人造人間の製造方法についての資料をこっそり読んでみたが……どれもこの世界で使われている文字では無かった。
さらにそのアジトとなっていた研究所自体も酷く老朽化しており、この目で確認出来たのは何者かが彼ら製造をした際に使用されたと思われる肉片や、何かの頭蓋骨などスプラッター好きならば興奮しそうな代物ばかりが残されていたのだ。
だからこそ現代の文明では製造技術を復元する事も難しく、今となってはこの人造人間という主題だけが独り歩きし、これをモチーフとした様々な作品が出回っているという形となっている。
とまあ、こう言った具合でまだまだ不鮮明な点も多い点はあるが人造人間については締めよう。
まあ、本音を言うならば可愛い女の子でも作ってみたいものだが……流石の私でもそこまで生物に関しての専門知識もないし、何より無防備の女の子を襲う程の変態でもないので止めておく。
だから、今これを読んでいる君達もだぞ!
特に将来的にマッドサイエンティストを志す男性諸君は変な妄想をしないようにしてくれっ!
例えば御主人様として柔らかいおっぱいに触りたいとか……何とは言わないがパフパフしたいとかエロい事は考えたりしてはダメだからな!
この博識王ガリヴァ―との約束だぞ!
だが、もしも妄想をするのであれば傍に両親がいない所でこっそりエロい事を考えるように……。
~ガリヴァ―書房刊『博識王ガリヴァ―が送るマッドサイエンティストに近づく一歩 初級編』99の項【人造人間という生命体】より引用~
―― ―― ―― ―― ―― ――
「――というワケで……誠に勝手な願いですが、このフランシアをより人間らしくする為にはどうしても【心】という感情の器が欲しいんです」
改めて聞いても滅茶苦茶な依頼だった。
そう頭を下げてヴィクター博士が持ちかけてきたのは、その隣で彼を護る様に待機する彼女。
「お願い……マスターの依頼……受けて」
この赤い短髪頭に白肌の少女フランシア。
過去に読んだ愛読書の例に挙がっていた人造人間とはまるで違う、一般的な女性らしい風貌をしたこの子の為と博士は僕に依頼をしてきたんだった。
「……詳しい事情を聞かせてくれる?」
「じ、事情ですか?」
「うん。なんでそこまでして彼女に心を芽生えさせることに固執するのか。それを聞いてから僕が依頼を受けるか受けないのかの判断に移るよ」
でも……僕はあえて二つ返事で返さなかった。
ハッキリ言って僕の【万能】の能力ならば、彼の望み通りに彼女に感情を芽生えさせる事は出来ない話じゃない。
(だけど……)
流石の僕でも依頼の選り好みだってする。
もし無差別的な殺人をしたいなんて吐き気を催すような依頼をしてくる客が店に入って来たら、被害が出る前に僕が叩き潰すみたいな感じに……。
だから今回は思わず返事を躊躇したんだ。
(なんだか嫌な予感がする……)
だけど……この嫌悪感の元になる証拠が無い。
そこで僕は依頼を聞いた後にこうして今一度その詳細を尋ねる事にしたんだ、すると?
「彼女は……このフランシアは私がこれまでに生み出した中でも最高傑作なんです。それにこれまで私達一族が受け継いできた生命の研究は世間に認められず日の目を見る事が無かった――」
なるほど、最高傑作……か。
ぶっちゃけ聞いていてあんまり気分の良い言葉じゃないね。
僕からすればまるで彼女が【モノ】か何かとでも勘違いしている様な物言いに聞こえてしまうよ、博士。
(うーん……やっぱり嫌悪感の原因はここかな? まあ研究熱心な博士には悪いけど断る――)
「で、ですが!」
……うん?
「ですが……彼女が産まれたのは本当に奇跡なんです! ですから私は彼女を産んだ研究者としてより彼女を素晴らしい形に成長させたいと願い、今回完成にどうしても不可欠な【心】のパーツを求めてやってきたという訳なんです!」
「完成に不可欠な……」
「はいっ!」
へぇ……なるほど。
そんな考えを持ってここに来たのか。
よし、じゃあ貴方がその気ならば――
「分かったよ。依頼を受けよう」
「ほ、本当ですか!?」
ふと自分の視線が鋭くなっていた気がしたけど、僕はそう承諾の言葉を返す事にした。
「レ……レオナルド? いいの?」
すると……きっと彼女も僕と同じ嫌悪感。
何かモヤモヤした感触を抱いていたんだろう。
嬉しそうな表情を浮かべる博士とは裏腹に、傍に座っていたエミリアが不安な声を向けてきた。
でもね、エミリア……ここは僕に任せて。
「で……では早速――」
「待って。その前に確認と忠告がある」
「えっ? 確認と……忠告ですか?」
「うん。まず僕は貴方の望み通りフランシアさんに心を与える。まあ正確には貴方が言った通り【感情の器】に近いものを僕の能力で作りだして、彼女の体に埋め込む……それでいいんだね?」
「は、はい。それで構いません!」
ヴィクター博士は嬉しそうにそう返してきた。
けれども僕が彼に確認したいのはこんなしょうもない依頼内容じゃない……だから次に今回の依頼の肝となる最重要な部分の確認に移った。
「じゃあ……ここからが本題の忠告だ。ただし多くは語らないよ。僕がこれから語る内容の意味は博士自身が考えることだからね。分かった?」
「ご、ごくり。はい……お願いします」
よし……それじゃあ。
「……僕達はこの依頼が終わった後に何が起ころうと責任は一切負わない。たとえどんな不都合な事が起こってもだ。仮にもし何か起こって前の状態に戻してほしいって泣きついても僕達は一切応じない……それでもいいんだね?」
……自分でも怖い顔をしていたと思う。
でも……こればかりは本当に重要な事だ。
今、僕の中によぎっているある予感が当たった時の為の保険として、お互いに後悔の念を抱かない為にも確認しておかないといけないんだ。
(それにこれは彼の為じゃない。むしろ――)
「はい! 責任は全て私が負います!」
即答か……別にいいけどさ。
まあ、まだ何かが起こった訳でも無いしね。
僕の取り越し苦労で済めばそれが最善だし、
「……分かった。じゃあ準備するね」
「ありがとうございます!」
それにもしかすれば彼自身が早々に気付いて、あの人造少女さんを幸せに出来るなら御の字だし、望み通りに助ける事にしよう。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
また期間が少し空きましたがどうにか最新話を投稿出来ました。
次話は現在執筆中ですので完成次第投稿出来ればと思います。
むしろ次話で記念すべき100話を迎えるので必ず投稿してやるのです(*´Д`)
それではまた皆様とは次話でお会い出来る事を祈っております!! それでは!




