100.岐路とは突然来るようです
レオナルドさんに依頼して正解だった。
「ドクター、フラスコここに置いとくね」
「ありがとうフランシア。助かるよ」
「ホント? じゃあフランシア……褒めて?」
「ははは。ったく、しょうがない子だな」
彼の能力……そう確か【万能――心層新理】によって心を持ち、感情が芽生えた私のフランシアは今やこの通り。
「よしよし、フランシアは良い子だ」
「えへへ、もっとお手伝い頑張る……ね」
「ああ、また何かあったら頼むよ」
以前までの無機質な表情が多かった状態とはまるで違い、まだぎこちない微笑みではあったがそれでも今みたいに喜んだりするようになった。
「うん、それじゃあ……フランシアはドクターの言いつけ通りに部屋の掃除してくる……ね?」
「うん頼んだぞ。ああ、それと今度は虫に驚いて部屋中を馬鹿力で破壊しないようにしてくれよ。まあ昨日の内に殺虫用の薬液を随所に撒いておいたから出ないと思うけどな。私と約束だぞ?」
「分かった……ドクター。フランシア、害虫見ても驚いて攻撃しないようにする。マスターの言う事ちゃんと聞ける様にする……の」
「うんうん、偉いぞフランシア」
そして他にも虫の出現や飛行に驚いたり、何か新しい物を発見すると興味津々になったりと我々人間で言う好奇心も芽生え始めているようだ。
まあ……時々それが引き金で大混乱する時もあるが、こればかりは弊害として目を瞑ろう。
「さあて……そろそろ私もコーヒーばっかり飲んでないで、働き者のフランシアを見習って研究を再開するとしようか。今日もまた別の人造生物の製作に取りかからないとな!」
そうやって私は椅子から身を起こし隣の部屋。
祖父とその息子である父親が私へ残してくれていた研究資料と空いたコーヒーカップを持ち、隣のラボに場所を移そうと足を動かす。
(えっと、昨日は祖父の残した資料を元に植物の細胞を研究し、再生力の強い細胞を作ったんだったな。まったく私の祖父はどんな頭脳を持った人だったんだろうか……同族でも見当が付かない)
そしてその移動中。私は親の代から授かったこの紙一杯に凄まじい密度で研究内容が記された資料に目をやりながら、ふとそんな言葉を溢す。
なんでも生前の父から聞いた話だと祖父はとんでもない生物学者だったそうだ。だが、ある時を境に祖父は一部の研究資料だけを残しそれまでにしていた研究を全て凍結、封印したらしい。
(しかし、そこまで凄い生物学者でも世間の目には触れなかったのか……まあだからこそ、こうして私がこの研究結果をいつか日の元に――)
「ド……ドクター?」
って……うんん? 今の声は。
おや? 随分と早いじゃないか。
「もう掃除は終わったのかい、フランシア?」
頭と口元に布巾を巻き掃除する気満々だったフランシアが私を呼び止めてきた。だが掃除を始めてものの数分も経っていない筈だが……しかしかと言ってサボる子でもない、一体何の用――
「ううん、違う……のドクター。今、窓を拭こうとしたら、誰かが玄関の前に立っているのフランシア見たの。もしかしたらお客さん……かも?」
「えっ、客? こんな人里離れた研究所に?」
「うん……なんだかかめら?を首からぶら下げた人がいたの……少し変な雰囲気だったけど、フランシアはまだそこはよく分かんないから、一旦ドクターに相談しようと思った……の」
「そ、そうか……分かった」
ふむぅ、カメラを持った集団か……だが話を聞いた感じ警察とかってワケでもなさそうだ。それにもし仮に警察がここに来たとしても、わざわざカメラなんて持ってこないだろうし――
「フランシア。そのお客さんは何人だった?」
「えっと、確か3人くらいだった。全員男性で、体格は皆バラバラで痩せた人や太った人もいた。でも……全員かめらと後……何かをメモする為のボードも持っていたの。それだけがフランシアがさっき確認したお客さん達の姿……」
「なるほど。分かった、ありがとう」
カメラにメモ用紙を貼りつけたボードか……。
(うーん、ますます訪問者に全く心当たりがないけれど……まあ呼び鈴のベルも壊れているし、ドアを叩かれる前に直に確かめてみるとしようか)
そうして、私は誰とも分からない客人の姿を自分で確認すべく研究資料とカップを傍のテーブルに置いてラボから玄関へと足を進めていった。
―― ―― ―― ―― ―― ――
「すいません! こちらグランドタイムズの記者の者なんですけど……貴方様は生命の研究家ヴィクター博士でお間違いなかったでしょうか?」
「えっ? あっ、はい。私がヴィクターですが」
玄関を開けた途端だ。
私はフランシアの言った通り、玄関先で待機していた3人の男達に周囲を瞬く間に囲まれた。
だが……なに? グランドタイムズだって?
あの【大手新聞会社】が一体私に何の用――
「じ……実はですね! その……」
「博士が御存じかどうかは分からないのですが、単刀直入に申し上げますと現在、我が国の生命研究の分野が世界中から大注目されてまして――」
「そこで我々は数世代に渡り生命の研究に没頭しており、なおかつ貴方様ヴィクター博士がなんと世界中でも初の成功例となる人造人間を産んだ人物という情報を聞きつけまして――」
えっ、なに? 今彼らは何と言ったんだ?
余りに唐突過ぎて状況が全く掴めん……。
世間が生命の研究に注目しているだって?
「い、一体……君達は何を言って――」
「と、とにかく! 取材料も博士の言い値でお支払いするとの本社からお達しが出ていますので! どうかここは我々グランドタイムズの取材に一つご協力していただけないでしょうか!?」
「もしも協力していただけたならば、貴方様は生命研究の権威として世界中から注目されるに違いないのです! ですからどうか取材をっっ!」
「お願いします博士! 貴方は我が国の化学分野に新たな光を照らす逸材だと我々は信じておりますので! どうか我々にご協力をっ!」
………………………………。
…………………………。
ま、まあ少なくとも……だ。
何の前触れも無く、唐突にこんな突拍子もない頼みを聞かされた私が、記者たちに返せる反応はたった一つだけだ――
「…………はい?」
ただ頭に疑問符を浮かべるだけだった……。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
少し期間が空きましたが最新話を投稿致しました。
そして……今回でなんと!! ついに!!
記念すべき大台の100話の更新&突破となりました(≧▽≦) イヤッホォー!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/
これも多くのユーザ様からいただいた評価のおかげでございます。本当にありがとうです!
これからもマイペースながら少しずつ執筆を続けていきますのでよろしくです!!
ではでは最後にもしよろしければブクマや評価であったり率直な感想などお待ちしております!!
皆様がくださる評価等はこの【黒まめ】の執筆モチベにマジで直結するので……あとは飛んで喜んだりもします!! では失礼致します!(∩´∀`)∩




