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6話 後章1 支配の『白』②

教楽来との戦闘前から、やけに調子がいい。

異能が使う時に、避けようのない全能感が全身満たしている。

目の前の敵が強敵であることは間違い無いのに、十数回という死を積み重ねているはずなのに、勝てるという絶対的な確信を持って戦える。

「ハハッ!楽しいなぁ!」

「なんなのよッ!お前ッ!」

死にながら言葉は戦闘を継続する。復活までのラグは死ぬたびに短くなっていき、もう攻撃を受けた側から復活するようになっていった。

「気持ち悪いのよっ!死になさいッ!」

石動は勢いよく矢を放つが、言葉はそれらを一切防御する姿勢を見せず、放たれるままに矢を受け入れる。

喉、脇腹、肩。

三箇所に風穴を開けながら、それでも関係ないと石動へと距離を詰める。

「距離を取るのは悪手なんだろ?だったら、近づいてやるよ!『吹っ飛べッ!』」

伸ばされた手はついに石動の顔面を捉え、吹き飛ぶ勢いそのままに近くの柱へと叩きつける。

「くっ、怪物が」

頭から血を垂れ流しながら、石動は言葉を睨め付ける。

「あぁ、だからなんだよ」

それに対して、言葉笑いながら瞬時に手を離す。

「『吹っ飛べ』」

叩きつけられた言霊は石動ごと周囲を巻き込み、かろうじて形を保っていた校舎を粉微塵に吹き飛ばす。

「死ぬたんびに威力が上がってんな。調整がむずい」

「お前ッ!一体なんなのよッ!」

石動は吹き飛びながらも5本の矢を番え、言葉に向かって一斉に放つ。

「分かり合えないのならいくら言葉を交わしたって無駄か。いや、復讐という時点で対話もクソもねぇな。なら、しょうがないよな」

ため息をついて、迫り来る矢を眺める。

そのまま何もすることなくゆっくりと歩き、矢をその体で迎え入れる。心臓と脳を貫かれたというのに、わずかに血を口から垂らすだけで、言葉は死にもせずにそのまま歩き続ける。

矢は言葉の肉体が再生していくとともに、ぽとりぽとりと一本ずつ落ちていく。

「借りるぞ、佐代鹿。『加速』」

吹き飛んでいく校舎の欠片と石動の位置関係を見極めながら、クラウチングスタートの構えを取る。

「『三速』」

加速した言葉は音を置き去りにして、破片を次々と飛び移り、刹那の間に石動の目の前へと姿を現す。

「なっ………」

「あんまり学校を離れてもらっても困る。だから、運動場に行こうぜ」

石動の足をそのまま掴み、ジャイアントスイングの要領でぐるりと勢いよく回転しながら、校庭に向かって投げ飛ばす。

投げ飛ばされた石動は乱回転しながらも、紐のついた矢を近くの建物に突き刺して、勢いを削った後、地面を滑るように校庭に着地する。

「くっ………」

「そう顔を歪めるなよ。俺の命はどうやら限りがあるようだからな」

「そう、あと何回死ねるのよ」

「そうさなぁ、一億は固いんじゃねぇかな」

「なっ…………」

人間の規格外は化物と言われ、化物の規格外は怪物と呼ばれる。

「ハハッ、ハハハハッ。異能殺しってのは無能力者かちくを庇う、正義のヒーローごっこをする薄寒いやつだと思ってたのに。なんだ、あんたも私たち側の人間で、ただの怪物じゃない」

「あぁ?最初(はな)から人間だなんて名乗った覚えはないぜ。そもそも死なないという時点で、立派な怪物だろうが。それを今更何言ってんだよ」

言葉は呆れ気味に石動に目を落とし、腕に『身体極化』のオーラを集める。

「死ぬ準備はいいか?」

「えぇ、もう諦めたわよ」

「そうか、なら死ねよ」

言葉の腕は容赦なく石動の心臓を貫き、その命を一瞬で刈り取る。

「まぁ、そこそこ強かったぜ」

貫いた腕を振り払い、校庭に血を吸わせる。

「先輩ッ!」

「言葉ッ!」

敵の血で染まる言葉に向かって二人は走る。血だらけの腕を隠すように、言葉は二人に向かって半身だけを向ける。

「先輩……、先輩ですよね?」

「あぁ。先輩だぜ、後輩」

「言葉…………」

二人は驚愕していた。

先程の狂ったような戦闘もそうだが、それとは反対に、諦念を含んだような目で、目の前の死体を言葉が見つめていたからだ。

「あーあ、死んじゃったか」

「「「……ッ!?」」」

先ほどまで死体しかなかったはずなのに、その一言ともに白髪の青年が目の前に現れた。

「『吹っ飛べッ!』」

「先輩!?」「言葉!?」

二人を信じて言霊を叩きつけ、学校の外へと放り出す。

「判断が速いね。流石、天下の異能殺し様だよ」

パンパンと手を叩きながら、死体から言葉へと目線を向ける。

「お前、かなり強いだろ」

「強い?そんなバカみたいな質問を君はしているのかい?強かったらやめるのかい?弱かったら戦うのかい?君はそんなつまらない選別をしながら、僕たちと戦ってきたのかい?」

「"僕たち"ってことは、お前もニグレドってやつの組織のやつか」

「そうだね、そこのトップをしてるよ」

「……ッ!?」

トップをしているということは、こいつが親玉か。

「そうか、百道ってやつか」

「そうだよ、僕は百道。君の敵さ」

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