017 その腕に宿すもの
「いいよいしょっとぉお」
「キィイイーー」
ブルーバレットがリオンヘッズの胴体を大牙剣で斬り裂き、その場で振り抜いた。そして、銀色の機体がふたつに分かれて床をゴロゴロと転がっていく。
「そんで次ぃ!」
その様子を気にすることなくルッタはブルーバレットを走らせて、次の獲物へと向かっていく。
「キキィッ」
「問題ない。読めてる」
そう返したルッタは獅子の口から放たれる銀光の光球を最小の動きで避けながら接近して、リオンヘッズを斬り裂いた。
「うん。慣れてきたかな」
そう呟くルッタの表情に迷いはない。
ロアショットと名付けた光弾攻撃の発射タイミングは大体把握できた。銀光を纏ったパンチを放ってくることもあったが、そもそもルッタが間合いに入らせることがほとんどないために、全て空振りに終わっていた。
たてがみから発生するメインシールド(これもルッタが命名した)も一方面にしか発生できず、隙をついて正面以外から攻撃すれば倒すことは難しくなかった。
一番厄介なのはリオンヘッズが集合してシールドのドームを作られることだが、今のルッタは『とある方法』によりシールドの中和もできるため、リリに頼ることなく単独での攻略も可能であった。
(とはいえ、順調すぎる? 連中の動きも変だし)
ルッタの中で違和感は大きくなっていく。
ここまでの道中があまりにも上手くいき過ぎているためだ。マリア達と分断された以降も迎撃は続いているが、今のところ苦戦もなく、それどころか攻撃パターンにも慣れ始めて、やりやすくなっていた。
「ねえリリ姉。リオンヘッズたちの動き、ちょっとおかしくない?」
『うん、誘導されてるね。無視してるけど』
「ああ、やっぱり分かってたんだ」
『モチのロン』
一方でルッタが抱き始めていた懸念をリリはすでに把握し、対処も行なっていた。
ルッタは複雑になっていく通路と敵の不自然な退き方から、自分たちをどこかに誘導しようという意図が相手側にあるだろうと感じていたのだが、リリはワンダリングギガンティック側の意図を正確に読んで、すでに潰していたのである。
『あ。ルッタ、あっちの隔壁を破壊して』
「あれか。了ッ解」
リリが先ほどからリオンヘッズたちがやってきている通路とは真逆にある、隔壁が落ちて閉じている通路の入り口を指差し、それにルッタは大牙剣をチェンソーモードに変えると迷うことなく隔壁を斬り裂いた。
『うん。こっちで良い』
「本当?」
『多分?』
リリが首を傾げてそう返す。
頼りない返事ではあるが、ここまでの状況を類推して、こちらが正しいだろうとリリは判断していた。
斥候であるマリアともすでに離れているために、リリも正確な目的地が分かっているわけではないのだが、敵がもっとも嫌がるであろうことを予測し、彼女は最適解のルートを導き出していたのである。
「ま、良いけどさ」
ルッタもリリの判断に反論があるわけでも、別の選択肢を提示できるわけでもない。ただ、相手への違和感は誘導されている……と言うだけではないように感じていた。
「ねえリリ姉。敵さんの動き、やっぱりおかしいよね。ああ、誘導っぽい動きとは別の話でさ」
『ん、少し薄い』
「キーーーーー!」
リリとタラがそう返す。
「ずいぶん倒して戦力が減った……というのもあるかもだけど、分散してるっぽい?」
『うん。多分マリアたちも戦っている』
「なるほど。となると、マリアさんともそろそろ合流できるかもね」
ちなみにヴァラルはもう死んでるだろうなーとルッタは思っていたので、マリア単独という認識で返していた。
対してリリが『たち』と口にしているのは、ヴァラルはもう死んでいるだろうという予想はルッタと同じだが、マリア単体で合流するほど距離を詰められるとは考えておらず、であれば追加の戦力、アルヴィンとの合流ができているのだろうと考えていたためであった。
ふたりの認識のどちらが正しいか、或いはどちらも間違っているのかが分かるのはそう遠い未来ではなく……そして、リリのフレーヌが動きを止めてブルーバレットも合わせてその場で立ち止まった。
「リリ姉?」
『この先、ガトリング持ちのキャプチャーが勢揃い』
先行しているシルフの一機からの情報を受信したリリが告げるとルッタが「へぇ」と口にして頷いた。
散漫な攻撃で対処できないのであれば、戦力を集中して挑むのは当然の判断。ここからギアがひとつ上がるであろうことをルッタは予感する。
『リリが先に行って潰しとく?』
「問題ないよ。こいつもあるし」
ルッタが『銀色の腕』を持ち上げて、そう返す。ブルーバレットの弱点のひとつであった防御面での不安が今は解消されている。故に銃弾の海の中でもどうにかなるだろうと。
その様子にリリが僅かに微笑んで頷く。
『じゃあどっちがいっぱい倒せるか競争だ』
「競争って、そっちの方が速いんだけどね。て、さっさと行っちゃった。ま、先攻は譲るとしてリリ姉が踊っている間にプチプチ潰すよタラちゃん」
「キィイイーー!」
追うブルーバレットを尻目に、フレーヌとシルフたちがその先にある大広間へと飛び込む。
「よりどりみどり……って言うんだっけ?」
ルッタに聞いた言葉を呟きながら、リリが大広間の空間を横断する。
ガガガガガガガガガガッ
絶えることのない銃声が響き渡る。
けれどもオリジンダイバーの加速力にキャプチャーたちは即座に照準を合わせることができず、弾丸の軌跡はフレーヌを追う形で流れていき、その間にも遅れて入ってきたブルーバレットが、近くに配置されているキャプチャーから仕留め始めた。
「まずは一機」
一撃でキャプチャーを破壊したブルーバレットに、別のキャプチャーがガトリングガンを放つが、
「キーー!?」
「うん。問題ないよ」
それをルッタは『銀光のシールド』で防いだ。
「はは、ブルーバレットの出力でこの防御力だもんなー。さすが古代文明。いいもん使ってるよ」
そう口にするルッタの視線の先にあるのは、ブルーバレットの両腕、そこにあるのhwは銀色の獅子の頭部を模した手甲であった。
ガントレットレオ。ルッタがそう名付けた手甲は、リオンヘッズと同じもの。それが新たなるブルーバレットの力であった。
入手経緯は次話で。
ブルーバレットも使いますがアヴァランチのメイン武装になるかなー。




