018 獅子の如き流星
「はは、こいつはいいね。全くいい拾い物だったよ」
「キキーーーーーー!」
ルッタとタラが笑いながら、ブルーバレットを操作して戦闘を続けていく。
現在ブルーバレットやフレーヌが相手取っているのは、ガトリングガン持ちのキャプチャーだ。それらは反動の大きいガトリングガンの照準を正確に行うため、足先の爪を床の留め具に引っ掛けて機体を固定していた。つまるところ、ガトリングの雨さえ気にしなければそれらはただの的だった。
とはいえ、高い機動力を誇るフレーヌはともかく、いかにルッタの技量が高くとも量産型アーマーダイバーがこの限定された空間内で鉄の雨を避け続けるのは容易な話ではなかったが、その問題はブルーバレットの両腕の装着された『新しい装備』によって解消された。
それが獅子の頭部を模した銀色の手甲であり、ルッタ命名の『獅子手甲』であった。
(エネルギーシールドだからか衝撃がほとんどない。なのに、魔力消費は多分このサイズで考えれば最高効率。さすがイシュタリア文明の遺産ってことか)
獅子手甲のたてがみに当たる装甲板から発生しているメインシールドが、正面からのガトリングガンの攻撃をすべて防ぎ切っている。特に物理弾に特化したこのシールドは接触時に魔鋼弾の物理エネルギーを消失させて、ブルーバレットに届く前に落下させていたのである。
(シールドへの魔力供給は機導核に直結型だから溜めておけないタイプで、左右同時のシールド展開はフライフェザーも停止させないとできないけど、まあこれほどの防御力なら片方だけで十分か)
実のところ、片方のみのシールド展開でも召喚弾の再装填や頭部センサーの索敵モードを同時に行うことはできなくなるのだが、大牙剣も、弾丸が尽きない限りは全自動魔導散弾銃も使用できるのでそこまで大きなデメリットをルッタは感じなかった。
(本当に、道中でこいつを回収できたのは大きかったな)
この獅子手甲は、ここに来るまでに発見した、破壊されたアーマーダイバーから回収したものだ。
そのアーマーダイバーには第七兵団の徽章がついていたため、その機体がアルヴィンと共にワンダリングギガンティック内に入った精鋭部隊であることはすぐに判明したのだが、乗り手はすでに死亡していた。
ただヘヴラト聖天領軍のアーマーダイバーに装着されているということは、当然それは同じ規格のブルーバレットでも使用できるということであり、ルッタは回収した獅子手甲をその場で装着したのであった。
(かっこ良かったし、使えるかどうかは持ち帰ってから調べようと思ってたけど、実際に使ってる人がいたんなら問題ないよね)
本当に問題がないのかはさておき、ルッタは獅子手甲を手に入れ、こうして使いこなしている。すでに利用可能であることが試す前に知れたのは彼にとってはありがたいことだった。
(んで、これってアレだよね。多分アルヴィン団長がロックを解除した。マスターキーであるリリ姉に限らず、オリジネーターは相性によってイシュタリア文明の遺産とアクセスできるらしいってのは、ブリーフィングで聞いていたけど、実際解除できてるってことだ。アルヴィン団長はワンダリングギガンティックを制御することが本当にできるのかもしれないなぁ)
第七兵団の作戦の大前提が、第七兵団団長のアルヴィン・ゼダンがこのワンダリング・ギガンティック内のコントロールルームにたどり着き、制御することで成り立っている。
その情報はヴァラルたちによってルッタたちにも共有されており、リリとマリアが今作戦で選ばれたのは戦力としてだけではなく、アルヴィンが制御できなかった場合に代わってワンダリングギガンティックのコントロールを行える可能性を見込んでのものだった。
恐らくアルヴィンはワンダリングギガンティック制御の前哨戦としてリオンヘッズのロックを解除し、解除したリオンヘッズの装備を部下のひとりが装備したものの敢えなく撃墜された……ということなのだろうとルッタは理解していた。
(問題は結局アルヴィン団長とマリアさんがワンダリングギガンティックの制御に失敗して、リリ姉に任された場合だけど……マリアさんにマスターキーを知られること自体は最悪仕方がないって艦長も言ってたし、実際出たとこ勝負かぁ。んで)
「そんで、こんだけ近づけりゃあ、ただの的だな。タラちゃん、撃っちゃって」
「キキィィィ!!」
足場が固定されて動けないキャプチャーをタラが容赦なく撃ち抜き、そのまま加速したブルーバレットは一番近いキャプチャーへと向かい、攻撃をメインシールドで防御しながら接近して大牙剣で斬り裂いた。
また、その間にもフレーヌがガトリングの雨を避けながら魔導長銃で他のキャプチャーを仕留めていき、両機は次々とキャプチャーを破壊していった。そしてリリが最後のキャプチャーを仕留めると、この広間の入り口から複数の銀色の機体が入ってくるのが見えた。
「お代わり来たねルッタ」
「んー。戦力の逐次投入は悪手かなあ。まあ、接近特化のリオンヘッズと、ガトリングガン装備のキャプチャーじゃあ相性は良くないんだろうけどさ」
そんなやり取りをしている間にも、ウェーブの第二弾とばかりに十を越えるリオンヘッズたちがフロア内へと突撃し始めていく。
けれどもルッタは慌てない。迫る相手を見据え、シールドを張っていた右腕を前に突き出した。
「リリ姉。ちょっと新しい武器を試すよ。何かあったらフォローお願い」
「ん、お姉ちゃんに任せて」
「キキィイ」
「うん。タラちゃん。充填も十分だし、使ってみるよ」
ルッタの視線が右腕の獅子手甲に向けられる。手甲の獅子の瞳から白銀の光が漏れ出て輝いている。
その光は、ルッタがガトリングガンの弾を受けた際に発生した負荷エネルギーを蓄積したものだった。シールドを構成する銀光のエネルギーフィールドは攻撃を受けることで生まれる衝撃エネルギーを吸収することでさらに白く輝き、それを獅子手甲は蓄積しておく機能があったのである。
ここまでのリオンヘッズたちはその機能を活用する前に倒されていたが、ブルーバレットの獅子手甲はすでに発動可能なほどにエネルギーが溜まっていた。
「テールブースター発動。一気に飛び込む」
「キキィイ!」
ブルーバレットの動きに気づいたリオンヘッズたちが即座に集まり、ファランクス陣形を取り始め、ブルーバレットに対してロアショットを撃ち始めた。
対してテールブースター噴射により、流星のように加速したブルーバレットはロアショットを右の獅子手甲から放出される白銀光によって防ぎ、ソレは徐々に牙を剥く獅子のような形状となっていった。
そしてリオンヘッズの重ねられたメインシールドが強固な防壁となってブルーバレットを阻むが、
「無駄だァア!」
そこにブルーバレットが発生しているメインシールドが接触するとシールドエネルギーが中和される。それは攻防一体を為すために、設定された安全装置。けれども今はバックドアに等しく、そこにシールドを突き抜けた負荷エネルギーが放出され、それはレオンヘッズたちを次々と破壊していく。
その一撃はさながら獅子の如き流星。故にその技の名はこう呼ばれることになる。
『獅子の如き流星』と。
一番最初の遭遇時にルッタくんが懲りずにずっとガトリング撃ちまくってたらこの攻撃が連続で繰り出されてました。




