015 さらばガッツ。友よ。お前のことを俺は忘れない
この人、なんで一緒にきちゃったんだろう?(首を傾げながら)
『ああ、私のガッツがぁ!?』
「嘆いてないで、ちゃんと掴まっててねーヴァラルさん。落ちたら死んじゃうからさー」
胸部と左右の腕それぞれに獅子の頭部が飾られた銀色の機体が三機、ヴァラルの愛機であるガッツを取り囲んで銀光の拳でリンチにかけている。その勢いはもはや機体の原型を止めてすらおらず、ついにはガードボックスすらも砕いて内部の機導核が破損し、その場で爆発を起こした。
それを機体から脱出し、二機のアエロによって救出されたヴァラルが涙を流しながら嘆いて見ている。
「あーあ。あの爆発でもダメージはなしなんだ。手甲のシールドのおかげかー。攻防一体の装備ってわけだーねー。施設内の損害を意識したものなんだろーなー」
『ま、ま、マリア様。正面!? 前の方からも増援がきています!』
「うんうん。分かってるよー。もうルッタくんたちもいないから、こっからはヴィーニュも能力解禁で行こうかなー」
そうマリアが言うと、ヴィーニュのスカートアーマーの裏側からスカウトドローン『アエロ』が次々と飛び出し始めた。
『お、おお。アエロが……なんという数で』
その数は実に三十を越え、それぞれが通路の奥から迫ってくる銀色の機体へと向かい始めた。
「さー、アエロたち。らいおんちゃんたちをぶっ飛ばしちゃってー」
マリアの思考に沿ってアエロたちがそれぞれ複雑な軌道を描いて、銀色の機体『らいおんちゃん』へと向かっていく。
その動きにらいおんちゃんたちは対応できない。獅子頭手甲のシールドを張るが、展開できるのはあくまで面であって、機体の全てをカバーできるわけではないのだ。対してアエロたちは囮部隊と奇襲部隊に分かれてらいおんちゃんたちを撹乱しながらシールドの隙間を縫って、あるいは回り込んで突き刺さり、その場で自爆していった。
「ふんふーん。硬さは普通のアーマーダイバーと変わらない感じかー。アーキタイプの一種なんだろうけど、この構造からしてもうアーマーダイバーそのものと言ってもいいぐらいかも?」
そんな軽口を挟みながらも、マリアはアエロを操作して次々とらいおんちゃんを撃墜していく。
このシールドドローン『アエロ』はフレーヌのタレットドローン『シルフ』とは違い、魔導銃の召喚弾に近い存在だ。
アエロの連続召喚は複雑な魔力構造体でも構築可能な処理能力を持つヴィーニュだからできることで、このアエロは魔力が続く限り召喚し続けられる自爆ドローンでもあった。
つまりはこれこそがマリアがルッタに対するカウンターとしての役割を担った理由であり、これらを総動員した飽和攻撃であれば、たとえルッタが相手だとしても、乗っているのがアーマーダイバーである以上は勝ち目がないと第五兵団は考えていた。
『らいおんちゃん……ガッツを倒したのがらいおんちゃん』
ヴァラルが複雑な表情をしているが、らいおんちゃんはマリアが名付けた仮称だ。正式名になれば良いともマリアは思っているが、らいおんちゃんとリオンヘッズ、レオべロス、どれが正式名称になるかはまだ未来が行方不明であった。
『あ、マリア様。あいつら、集まり始めましたよ』
「ふーん。背中合わせに固まってカバーしたんだー。けーどねー」
複数機体が集まることで、面と面を繋ぎ合わせて、隙間のない一箇のバリアと化す。それは確かに強固な防御ではあるのだろう。けれども、それだけでオリジンダイバーに抗せると考えるのは甘いと言わざるを得ない。
「アエロ、ゲートを作って」
そして銀光のシールドに三機のアエロが取り憑くと、それぞれを頂点としてアンチフィールドを形成し、シールドに三角形の穴を開けた。
「ボンヴァ、吶喊!」
さらにはそこにアエロよりもふた回り大きいフクロウのようなドローンが突撃し、それはシールド内部に入ると大爆発を起こしたのである。
『ウォォオオオオオオ。ば、爆発が拡散されずに……シールド内に満ちていく!?』
ボンヴァは本来であれば室内の使用を想定していない、非常に高威力な自爆ドローンだ。けれども今回はらいおんちゃんのシールドによって爆発が内部に留められて拡散されなかったため、シールド内部にいたらいおんちゃんたちだけをまとめて葬り去ったのである。
『な、なんという威力か』
その様子を見ているヴァラルが身震いしながら呟く。目の前にいるヴィーニュは斥候型とはいえ、間違いなくオリジンダイバーの一機なのだと彼は改めて理解したのであった。
『はは……これは、連中のシールドがなかったら、私は爆発で死んでいたか』
「ヴァラルさん、良かったねー。らいおんちゃんが機転利かせてシールドを解かなくて」
『は……ハハ』
ヴァラルが乾いた笑いを浮かべ、自身の現状に恐怖した。
勿論騎士であるからには、常に自分の命を捨てることも覚悟の上としてヴァラルも任務に当たってはいる。けれども、それは愛機の中であればという想いが乗り手として当然のようにあり、何もできず、邪魔と判断されれば容赦なく捨てられるだろう今のような状況を想定していたわけではないのだ。
対してマリアはそんなヴァラルの気持ちを汲むことなく、後方からも迫ってくるらいおんちゃんを撃退しながら、先へと先へとアエロたちを飛ばし、このワンダリングギガンティック内の捜索を進めていた。
(ハァ、リリやルッタくんたちは問題ないだろうけど、こっちがなー。早く合流できないかなー。アルヴィン団長でもいいけどさー。うん?)
そして、さらに奥へと探索を進めさせていくマリアは、アエロの一機が戦闘音を拾ったことに気づき、わずかに眉をひそめたのであった。
レオべロス
リオンヘッズ
らいおんちゃん
究極の三択。




