013 ファランクス
リオンはフランス語で、ヘッズは英語だ。
(ライオンの頭が三つあるように見えたけど、人型としての頭部は頭部で普通にあって、胸部にライオン頭がひとつ、両腕に頭部を模したガントレットがそれぞれ付いてるのか。何それ、かっこいい)
ルッタはその機体に見惚れてしまった。
アーマーダイバーと同サイズのその機体はルッタの見ている通りの姿をしており、また全身の装甲はシルバーメタリックの塗装がなされていた。
それは単純に言って男の子の心に刺さる姿をしていたのである。それが無数に並んで、ルッタたちに向かって進んできていた。
「ライオンのケルベロスみたいだな。サーベラスとも言うんだったっけ? サーべライオンとか? リオンヘッズとか?」
『そのふたつならリオンヘッズで』
「そう? リリ姉が良いなら、そう呼ぼうか」
ルッタはそう言いながらガトリングガンを構えた。銃口の先にいるのはリオンヘッズたち。彼らの姿は確かにルッタのツボだった。だが撃つ。それがこの残酷な世界に抗う術なのだ。
「帰りに形残ってるをのお土産にしたいなぁ」
そう言いながらルッタがトリガーを引くとガガガガガガガガガガッという音と共に、絶え間なく弾丸が射出されていく。それは迫る敵を一掃するには十分な鉄量。けれども、結果はルッタの想定とは違っていた。
「あれ、全部弾かれてる?」
「キーーー?」
『両腕のたてがみからバリア? ……みたいのが出てるみたい』
リリの指摘にルッタが「うわ、ホントだ」と返した。
獅子頭ガントレットのたてがみ部分のパーツが花のように開き、そこから銀光の粒子が放出されてバリアのように展開していたのである。
それを行なっているのは一体だけではなく、見えているすべてのリオンヘッズが両腕を前に突き出してバリアを発生させており、重なり合うことで、より厚みが増した強固なバリアとなって展開されていたのであった。
「キイイーー!?」
「うーん。正面からだと、厳しいな。となるとボーナスタイムも終了かー。お?」
魔力レーダーの反応が上昇しているのに気付いたルッタが、フライフェザーを発動してその場を跳び離れた。それと同時にリオンヘッズたちの胸部の獅子頭の口が開いてエネルギー弾を撃ち始める。
「んー、そういうのもできるんだ。エネルギー密度が低いし、魔光銃とは違うね」
『ここは竜雲海の上じゃあないから』
「そっか。確かに」
一般的に、竜雲海の上では濃密な魔力の海との干渉で使用者から離れるような遠距離型の魔術は使用できないとされている。この世界にも魔術師は存在しているのだが、前述した理由のために竜雲海上での戦闘力は無きに等しく、アーマン大陸での彼らの多くは天領上での防衛でのみ活用されている。
また、アーマーダイバーの使うメインウェポンが銃器で、召喚という形式を経た上での物理弾なのも、魔光銃などの例外を除けば、魔力を直接用いた武器が使用し辛いという制約があるためであった。
「室内限定ってことか。射程距離は撃ち始めたところからとして……さすがにあの集弾密度は馬鹿にできないし、タラちゃん。バケツマガジンはパージ。ガトリングガンも捨てるよ」
「キィイーー!?」
即断即決。ルッタはブルーバレットからバケツマガジンとガトリングガンを手放すと、身軽になった機体でエネルギー弾を避けながら、リオンヘッズたちへと向かっていく。
(レーダーを見る限り、エネルギー弾を撃ってる間は魔力の反応が弱くなってる。シールドのエネルギーの一部を加速させて、千切って飛ばしてるみたいな感じかな。だとすれば)
『ルッタ。撃ちながら接近する』
「オッケー。やっぱりその手だよね」
フレーヌとブルーバレット、それにシルフたちが撃ち続けながらも距離を詰めていく。撃ち続けてシールドの維持に重点を置かせることでエネルギー弾は撃ち辛くなるはず……というふたりの予測は正しく、完全にではないがリオンヘッズたちが放つエネルギー弾の数は減少していった。
(数は減ったとはいえ、密集陣形で弾を防ぎつつ、織田信長の三段撃ちみたいに順序よく撃ってきてる。キャプチャーもそうだけど、連携が上手い。その上にあの感じだと)
ルッタは全自動魔導散弾銃を、タラは二連装ミサイルランチャーを、リリは魔導長銃を、またシルフたちも魔導銃で撃ち続けて、敵の攻撃を抑制している。シールドを打ち破る火力がないのであれば、撃ち続けて牽制しつつ、接近して近接武器でシールドを打ち破るしかないという判断は間違ってはいないだろう。
けれども、それがリオンヘッズたちのすべてであると考えるのは早計であった。
『ルッタ。来る』
「まあ。形からしてそうだよねぇ。タラちゃん、衝撃来るよ」
「キィイ!?」
リオンヘッズたちの集合シールドが爆発するかのように広がったと思うと、それはそのまま放射状に放たれていく。
「キィイーー!?」
「ガードすれば問題はない……けど、やっぱり密集陣形は餌を呼び込むための罠か」
放たれたシールドは広範囲に広がりすぎてエネルギー密度は薄く、フレーヌはおろか、ブルーバレットにすらダメージを与えられてはいない。けれども、突撃していたルッタたちの勢いは確実に殺され、さらには……
「腕のたてがみはシールドで、胸部のたてがみは後ろに伸びてノズルバーニアになるわけか。芸が細かいなぁ」
ルッタがそう漏らす通り、胸部のたてがみバーニアを噴出させたリオンヘッズたちがその場から散開しながら、ブルーバレットとフレーヌに向かって襲いかかってきたのである。




