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『俺だけ「10年後の値段」が見える。~未来価格で億万長者になるはずが、娘の絵に3億円の値札がついていた~』  作者: かばっち


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第39話 未来は何%?

【観測条件の変化を検知】



「……え?」


 視界の端に浮かんだ文字を見ながら、俺はその場で足を止めた。


 今までにも、未来が動いた瞬間は何度も見ている。



【未来変動を検知】



 美咲が何かを言ったとき。


 高城さんが研究を進めたとき。


 俺自身が、未来へ関わる選択をしたとき。


 表示されるのは、いつもそれだった。


 でも今回は違う。


 変わったのは未来じゃない。



【観測条件の変化を検知】



「慎吾さん?」


「待って」


「何か見えてるんですか?」


「うん」


 高城さんが一歩近づく。


「何が?」


「観測条件が変わったって」


「観測条件?」


「そう」


「いつからです?」


「今」


「今というのは?」


「高城さんが」


 一度、表示を見る。


「俺が見てるものは、未来そのものじゃなくて、今の条件から出た未来の可能性かもしれないって言ったあと」


「…………」


 高城さんの表情が変わった。


 さっきまでの驚きが消える。


 完全に研究者の顔。


「他には?」


「今のところ、それだけ」


「表示は消えました?」


「いや。まだ出てる」


「では、無理に続けないでください」


「え?」


「観測条件が変わった理由は気になります。でも慎吾さんには頭痛もある」


「研究者なのに止めるんですね」


「研究者だから止めるんです」


「…………」


 妙に説得力がある。


「今日は帰りましょう」


「続きは?」


「整理してからです」


「高城さんが?」


「慎吾さんも」


「俺も?」


「今まで見えていなかった表示が出たんでしょう?」


「はい」


「なら、今までと同じ感覚で使わないほうがいい」


「…………」


 確かに。


 能力が変わったのか。


 俺の見方が変わったのか。


 それすら、まだ分からない。


「明日、時間ありますか?」


「日曜ですけど」


「大学に来られます?」


「研究者、休まんの?」


「休みますよ」


「明日は?」


「休みながら研究します」


「それ休みじゃないです」


「趣味に近いので」


「怖いなぁ」


 でも。


 俺も知りたかった。


「分かりました」


「では明日」


 高城さんが歩き出す。


 俺もそのあとを追おうとして、最後にもう一度だけ表示を見る。



【観測条件の変化を検知】



 やっぱり消えていない。


 未来が変わったんじゃない。


 未来を見る俺の側で。


 何かが変わった。



     ◇



「パパ、おそい!」


「すみません」


「ゼロね!」


「はい」


「でんちない!」


「それはもう聞きました」


「かって!」


「帰りに買います」


「やった!」


 結衣がゼロを高く持ち上げる。


「ゼロ、ごはん!」


「単三電池を飯扱いするな」


 美咲が俺を見る。


「また高城さんと何話しよったん?」


「研究」


「まだ?」


「ちょっと気になることが出てきて」


「慎吾が?」


「何で毎回そこ引っかかるん?」


「だって」


「俺だって研究の一つや二つ」


「できんやろ」


「できません」


「即落ち」


 美咲が笑う。


 結衣も、よく分からないまま一緒に笑う。


 そのまま三人で大学を出た。


 帰り道、ホームセンターへ寄る。


「単三どこ?」


「こっち!」


「何で結衣が知っとるん?」


「でんち!」


「答えになってない」


 美咲がカートを押しながらついてくる。


「充電池にしたら?」


「そのほうがいいかも」


「毎回買うの、もったいないやろ」


「ゼロの維持費が発生し始めたな」


「パパ、おかねある!」


「またそれ言う」


「あるやん」


 美咲まで乗ってくる。


「普通です」


「土地買えるくらい?」


「…………」


「冗談」


「怖い冗談やめて」


 八百万円の土地を本当に現金で買った男を知っているせいで、妙に笑えない。


 結局、充電池と充電器を買った。


「これでゼロ食べ放題」


「やったー!」


「食べ放題ではない」


 そんな普通の買い物をしている間も、頭の片隅にはずっとあの文字が残っていた。



【観測条件の変化を検知】



 何の条件が変わった?


 高城さんに能力を話したことか。


 能力について一緒に考えたことか。


 俺自身が、表示されたものをそのまま「未来」と決めつけるのをやめたことか。


 分からない。


 ただ。


 今までとは違う。


 俺はずっと、自分が能力を使う側だと思っていた。


 見ようと思えば表示が出る。


 俺が見る。


 能力が答える。


 それだけ。


 でも今回は。


 俺が何かを知ろうとしたわけでもないのに。


 向こうから。



【観測条件の変化を検知】



 と知らせてきた。


「…………」


 気味が悪い。


 でも。


 同時に。


 初めて能力そのものへ近づいたような気もしていた。



     ◇



 夜。


「パパ!」


「はい」


「ゼロ、ふっかつ!」


「良かったですね」


 充電した電池を入れると、ゼロは何事もなかったように歩き始めた。


「ゼロー!」


 結衣が追いかける。


 その直後。


 ゴン。


 壁にぶつかって倒れた。


「ゼロ!」


「復活から十秒で事故ったぞ」


「慎吾」


「何?」


「HOSHIMI、ゼロにつけたら?」


「…………」


「何その顔」


「いや」


「冗談やん」


「美咲」


「何?」


「たまに怖いこと言うよね」


「失礼やね」


 本人は何も知らない。


 未来も。


 能力も。


 星見事故も。


 何も知らないまま、たまに妙なところを突いてくる。


「ゼロにHOSHIMIか……」


「本気にせんでよ」


「分かってる」


「高城さんに言いそう」


「言わない」


「絶対?」


「たぶん」


「言うやん」


 美咲が笑った。


 俺も笑う。


 でも、ゼロを見た瞬間。


 以前なら確認していたと思う。



【未来状態:未確定】


【分岐候補数:1,196】


【生存結果を含む分岐:34】



 でも今日は見ない。


 高城さんに止められたからじゃない。


 怖いからでもない。


 今までの俺は。


 表示された数字と、その意味を混ぜすぎていた。


 三十七から三十四に減った。


 だから悪くなった。


 星見事故の予定時期が後ろへ動いた。


 だから良くなった。


 未来改変率が上がった。


 だから成功。


 でも。


 本当にそうなのか?


 見えることと。


 意味が分かることは違う。


 そこを分けないと。


 どれだけ未来を見ても。


 間違った方向へ走るかもしれない。


「パパ?」


「ん?」


「ゼロみてる」


「見てました」


「かわいい?」


「かわいいですね」


「ゆいは?」


「もっとかわいいです」


「ママは?」


「…………」


 美咲を見る。


「何で止まった?」


「最適解を計算しています」


「は?」


「ママもかわいい!」


 結衣が助け舟を出す。


「ほら」


「四歳に助けられた」


「慎吾」


「はい」


「明日の朝ご飯、自分でしてね」


「計算ミスった」


 普通の夜。


 こういう時間を守りたい。


 能力の意味が変わっても。


 そこだけは変わらない。



     ◇



 翌日。


 大学へ着くと、高城さんはすでに会議室にいた。


「早いですね」


「九時集合ですよ」


「今、八時五十分」


「普通です」


「研究者なら泊まってるかと思った」


「どういう偏見ですか」


「昨日、休みながら研究するって言ってたから」


「ちゃんと帰りました」


「寝た?」


「四時間」


「帰った意味ある?」


「あります」


 机を見る。


 紙。


 ノート。


 タブレット。


 昨日使ったUSBメモリ。


 鍵。


 腕時計。


「絶対、帰ってから考えてたでしょ」


「少しだけ」


「四時間睡眠になるくらい?」


「少しだけです」


「研究者の『少し』信用できんな」


 椅子へ座る。


「で、何するんです?」


 高城さんは一枚の紙を俺の前へ置いた。


 上には大きく。



『確認したいこと』



 その下。



一.未来価格は本当に価格なのか


二.表示される未来は確定未来なのか


三.条件成立率とは何に対する確率なのか


四.未来改変率の基準値は何か


五.分岐候補数の各分岐は同確率なのか


六.算出不能と未確定の違い


七.観測条件とは何か



「…………」


「多くない?」


「最低限です」


「これ最低限?」


「本当は二十三あります」


「帰ります」


「待ってください」


「日曜ですよ?」


「だから七つに絞りました」


「褒めていいのか分からん」


 高城さんが紙を指す。


「今日は全部調べません」


「よかった」


「まず七番です」


「観測条件」


「はい」


 俺もそこが一番気になっている。


「昨日の表示は?」


「大学を出るまでは出てました」


「帰宅後は?」


「気づいたときには消えてました」


「何時?」


「分かりません」


「記録は?」


「してません」


「…………」


「その顔やめて」


「今日から記録してください」


「能力日記?」


「観測記録です」


「急に格好よくなった」


「表示が出た時間。対象。条件。頭痛の有無。できるだけ残してください」


「スマホでいい?」


「構いません」


「了解」


 高城さんが昨日のボールペンを置いた。


「まずこれを見てください」


「十年後?」


「はい」


 見る。



【現在価格:82円】


【10年後の価格:0円】



「ゼロ」


「他には?」


「ないです」


「観測条件は?」


「出ない」


「では、条件を変えます」


 高城さんが言う。


「十年間、私が保管する」


 見る。



【条件付き未来価格:0円】



「ゼロ」


「HOSHIMIの研究室で十年間保管する」


 もう一度、意識する。



【条件付き未来価格:1,200円】



「千二百円」


「変わりましたね」


「はい」


「理由は?」


「浅くなら」


 少しだけ意識する。



【関連事象:HOSHIMI研究記録】



「HOSHIMIの研究記録」


「なるほど」


 高城さんが書き込む。


「昨日と能力そのものに、大きな違いはなさそうですね」


「ですね」


「では次」


 USBメモリ。


「昨日、事故関連データを保存する条件で算出不能になった物です」


「はい」


「同じ条件で」


 HOSHIMI。


 事故関連データ。


 そう意識する。



【条件付き未来価格:――――】


【未来価格:算出不能】



「同じです」


「他には?」


「ない」


「観測条件も?」


「出ない」


 高城さんが腕を組んだ。


「では、昨日と何が違ったのか」


「俺が能力の話をした」


「その前から話していました」


「高城さんが、これ本当に未来かって疑った」


「それは直前ですね」


「俺も、その可能性を考えた」


「そして観測条件の変化が出た」


「はい」


 高城さんが紙へ書き込む。



『能力に対する認識変化?』



「俺の考え方で表示が変わる?」


「分かりません」


「便利ですね、それ」


「研究では大事な言葉です」


「黒瀬さんみたい」


「…………」


「あ」


 やった。


 高城さんのペンが止まる。


「黒瀬さん?」


「忘れてください」


「無理です」


「ですよね」


 しばらく沈黙。


「もう一人の未来に関する情報を持っている方」


「…………」


「黒瀬さんですね?」


「本人に確認してないんですけど」


「否定はしない?」


「…………」


「顔に出てます」


「研究者嫌い」


 高城さんは少し考えたあと、頷いた。


「それ以上は聞きません」


「え?」


「昨日約束しましたから」


「研究倫理?」


「はい」


「ちゃんとしてるな」


「失礼ですね」


 ただ。


「本人がいいと言ったら」


「お願いします」


「やっぱり研究者だった」



     ◇



 少し休憩を挟んだあと。


 高城さんが机に小さな鍵を置いた。


「今度はこれです」


「昨日の倉庫の鍵?」


「はい」


 見る。



【現在価格:0円】


【10年後の価格:3,200円】



「三千二百円」


「昨日と同じ」


「はい」


「では、その条件を確認しましょう」


「何を意識する?」


「HOSHIMI開発初期の研究資料として保存された場合」


 見る。



【条件付き未来価格:3,200円】



「一致しました」


「条件成立率は?」


「浅くですよ」


「もちろん」


 意識する。



【条件成立率:64.7%】



「六十四・七」


「…………」


 高城さんがメモする。


「何?」


「この数字です」


「条件成立率?」


「はい」


「六十四・七%で、その条件になるんじゃないんです?」


「おそらく」


「おそらく?」


「表示名から考えれば」


「慎吾さん」


「はい」


「昨日、何を決めました?」


「表示と解釈を分ける」


「そうです」


「…………」


「能力は」


 高城さんが紙を指す。


「【条件成立率:64.7%】と表示した」


「はい」


「この64.7%が、十年後に鍵が3,200円になる確率だとは書いていない」


「…………」


「あ」


 確かに。


「条件が成立することと」


「その未来価格になることは別?」


「可能性があります」


「例えば?」


「HOSHIMI初期資料として保管されたとしても」


「はい」


「その後、廃棄されるかもしれない」


「ああ」


「火事で失われるかもしれない」


「ある」


「逆にもっと価値が上がる可能性もある」


「ある」


「なら」


 一拍。


「この3,200円という未来そのものが、どれくらい確かなのかは別の話です」


「…………」


 俺は鍵を見る。


「未来は何%?」


「そうです」


「そんな表示、見たことないですよ」


「見ようとしたことは?」


「ない」


「危険のない対象です」


 高城さんが言う。


「無理のない範囲で試してみませんか」


「出なかったら?」


「そこで終わりです」


「分かりました」


 鍵を見る。


 十年後。


 三千二百円。


 その未来を。


 俺はどの程度確かに見ている?


 そう意識する。


「…………」


 何も出ない。


「出ません」


「なら、やめましょう」


「待って」


 視界の端に。


 何かが浮かんだ。


「出た」


「何が?」


 文字がゆっくり形になる。



【観測確度:72.4%】



「…………」


「慎吾さん?」


「七十二・四」


「何が?」


「観測確度」


 高城さんの表情が変わった。


「発生確率ではない?」


「書いてない」


「…………」


 高城さんが一気にメモを取る。


「昨日は観測条件」


「はい」


「今日は観測確度」


「うん」


「慎吾さん」


「何?」


「これ」


 一拍。


「重要かもしれません」


「未来が72.4%で起きる?」


「違います」


「即答?」


「少なくとも、そう決めるのは早い」


「観測確度なのに?」


「観測の確かさと」


 一拍。


「出来事の発生確率は別です」


「…………」


「例えば」


 高城さんが言う。


「ある予測モデルの精度が九十%だったとして」


「はい」


「そのモデルが予測した一つの出来事が、九十%の確率で起きるという意味にはなりません」


「ああ……」


「だから」


 一拍。


「今、結衣ちゃんの未来を見るのはやめてください」


「…………」


 読まれた。


「今、見ようとしましたね」


「ちょっとだけ」


「駄目です」


「でも」


「もし」


 高城さんがまっすぐ俺を見る。


「結衣ちゃんの死亡未来に【観測確度:90%】と表示されたら?」


「…………」


「慎吾さんはどう思います?」


「死亡確率九十%」


「ですよね」


「違うかもしれないのに」


「はい」


「逆に十%なら」


「安心する」


「それも危険です」


「…………」


 その通りだ。


 数字は見える。


 でも。


 数字の意味は、まだ分からない。


「まず安全な対象で確認します」


「ボールペン?」


「ボールペン」


「急に世界が小さくなったな」


「娘さんよりはいいでしょう」


「それはそう」


 もう一度、鍵を見る。



【観測確度:72.4%】



 七十二・四。


 何を表す数字なのか。


 まだ。


 そこまでしか分からない。



     ◇



「今日分かったことを整理します」


 高城さんが紙へ書き始める。


「一つ」


『観測条件という表示が存在する』


「はい」


「ただし何を条件としているのかは未確定」


「はい」


「二つ」


『観測確度という表示が存在する』


「うん」


「ただし、未来の発生確率とは確定していない」


「はい」


「三つ」


 高城さんのペンが止まる。


「何?」


「昨日まで、この二つは出ていなかった」


「そうですね」


「慎吾さん自身は?」


「何が?」


「能力を使うときの感覚」


「…………」


 少し考える。


「あんまり変わってないです」


「見え方も?」


「文字が増えただけ」


「頭痛は?」


「今日はない」


「なら」


 高城さんは紙に書く。



『能力そのものの変化とは限らない』



「どういうこと?」


「昨日まで存在しなかった情報が、新しく作られたとは限りません」


「じゃあ?」


「今までもあったけれど」


 一拍。


「慎吾さんが見られなかった可能性」


「…………」


 背中が少し寒くなる。


「何で見られるようになった?」


「分かりません」


「俺が能力について考え始めたから?」


「可能性はあります」


「高城さんに話したから?」


「それも」


「一緒に検証してるから?」


「それも否定できません」


「全部じゃん」


「だから検証するんです」


「研究者、便利だな」


「便利でしょう?」


 少し笑う。


 でも。


 俺は笑いながら。


 一つだけ気になっていた。


 昨日。


 高城さんへ能力を話した。


 それまで俺は、一人で未来を見ていた。


 黒瀬さんには相談していた。


 でも。


 能力そのものを。


 表示の意味から条件まで。


 一つずつ一緒に考えたことはない。


「高城さん」


「はい」


「もし」


 一度、言葉を選ぶ。


「俺一人で見るのと」


「はい」


「誰かと一緒に考えながら見るので」


「…………」


「出るものが違うとしたら?」


 高城さんの手が止まった。


「可能性としては」


「ある?」


「あります」


「どう確かめる?」


「慎吾さん一人のときと、私がいるときで同じ対象を確認する」


「でも今日もう一緒にやってますよ」


「だから」


 高城さんが鍵を見る。


「次は条件をそろえます」


「今日?」


「いえ」


「珍しい」


「今日はもう十分です」


「研究者が止まった」


「慎吾さん」


「はい」


「私はあなたより慎重ですよ」


「…………」


「反論できない」


 高城さんが笑う。


「次回」


「はい」


「慎吾さん一人で見る」


「うん」


「その結果を記録する」


「はい」


「そのあと、私と同じ対象について考える」


「それで?」


「表示が変わるか確認する」


「…………」


 単純。


 でも。


 今までやったことのない確認だ。


「もし変わったら?」


「そのとき考えましょう」


「またそれ」


「先に意味を決めない」


「…………」


「あ」


「覚えました?」


「はい」


「では今日は終わりです」


「本当に?」


「何で残念そうなんです?」


「いや」


 ここまで来ると。


 少し面白くなってきている自分がいる。


 未来は怖い。


 結衣のことは。


 今だって怖い。


 でも。


 今まで何も分からないまま振り回されていた能力を。


 少しずつ。


 確かめられるかもしれない。


「高城さん」


「はい」


「一人で見てたときより」


「何です?」


「ちょっと楽です」


「…………」


「意味分からん数字が出ても」


 一拍。


「俺一人で決めなくていいから」


 高城さんは少しだけ笑った。


「それなら」


「はい」


「話してもらった意味はありましたね」


「ですね」


 俺も笑った。


 机の上。


 倉庫の鍵。



【観測確度:72.4%】



 未来が七十二・四%で起きる。


 そういう意味じゃない。


 少なくとも。


 今はそう決めない。


 分からないなら。


 分からないまま記録する。


 そして。


 条件を変えて確かめる。


 未来を見ることより。


 未来の見方を。


 俺は初めて。


 学び始めていた。

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