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『俺だけ「10年後の値段」が見える。~未来価格で億万長者になるはずが、娘の絵に3億円の値札がついていた~』  作者: かばっち


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20/68

第20話 四十万円



 一千万円。


 達成。


 なのに。


【10年後の価格:294,000,000円】


「……なんで?」


 結衣の絵。す


 二億九千四百万円。


 変わらない。


 百万円から。


 一千万円。


 十倍。


 俺は。


 金を増やした。


 未来のために。


 結衣を助けるために。


 なのに。


「一円も下がらない……」


 当たり前。


 なのかもしれない。


 金が増えた。


 それだけ。


 結衣の事故。


 何も。


 変えていない。


「…………」


 俺は未来価格ノートを見る。


 最初のページ。


 目標。


 三億円。


 ゼロ円。


 そのために。


 金が必要だと思った。


 実際。


 金は必要だ。


 でも。


 金は。


 武器。


 目的じゃない。


「使わなきゃ意味ないのか」


     ◇


 翌朝。


「パパ、これみて!」


 例のロボット。


 床を。


 ウィーン。


 ぎこちなく動いている。


「おお」


「おじちゃんがなおした!」


「高城さんね」


「おじちゃん!」


「本人の前では高城さんって呼んであげて」


「なんで?」


「傷つくから」


「なんで?」


「三十代には色々あるんです」


 美咲が笑う。


「慎吾もおじちゃんやん」


「四十一歳です」


「おじちゃんやん」


「…………」


 否定。


 できない。


 結衣。


 ロボット。


 楽しそうに。


 床を走らせる。


「…………」


 俺は。


 ロボットを見る。


【現在価格:186,000円】


【10年後の価格:0円】


 そして。


 前に見えた理由。


【価格消失理由:市場流通なし】


「ゼロ……」


 売られない。


 市場に出ない。


 だから。


 ゼロ。


 俺が。


 欲しい数字。


「…………」


 結衣の絵も。


 いつか。


 こうなればいい。


     ◇


 会社。


 昼休み。


 未来価格ノート。


 アステラ。


 高城。


 教授。


 黒瀬。


 土地。


 今まで分かったことを。


 全部見る。


「金じゃない」


 俺が。


 結衣の未来を。


 変えるには。


 未来そのものに。


 触る必要がある。


「でも、何をすれば……」


 事故。


 まだ。


 詳細は分からない。


 場所。


 日時。


 原因。


 全部。


 分からない。


 唯一。


 分かること。


 アステラ。


 高城。


 教授。


 次世代生活支援AI。


 事故予測。


「…………」


 ここ。


 俺は。


 未来価格ノートに挟んでいた。


 高城の名刺を取り出した。


     ◇


 夜。


 電話。


『はい、高城です』


「慎吾です」


『どうも。ロボットまた壊れました?』


「いや、元気です」


『よかった』


「あの」


『はい』


「この前の研究」


『事故予測?』


「はい」


「…………」


 俺。


 何を。


 言おうとしてる?


 未来を。


 変えたい。


 でも。


 未来価格のことは。


 言えない。


「個人で」


『はい』


「支援とかできます?」


 沈黙。


『支援?』


「研究に」


『寄付ってことですか?』


「まあ……」


『どうしたんです急に』


「…………」


 当然。


 そうなる。


「娘がいるから」


 俺は。


 言った。


「事故をゼロにできるかもしれないって話」


『はい』


「いいなと思って」


 嘘。


 ではない。


 本気。


『嬉しいですけど』


「少額でも?」


『大学側の研究支援制度ならあると思います』


「どれくらいから?」


『ちょっと確認します』


「お願いします」


『でも』


「はい?」


『無理しないでくださいね』


「…………」


『研究なんて、いつ成果が出るか分からないですよ』


「分かってます」


『投資みたいに返ってくるものでもない』


「それでも」


 俺は。


 リビングを見る。


 結衣。


 ロボット。


 遊んでいる。


「未来が変わるかもしれないなら」


 高城。


 少し。


 黙った。


『……分かりました』


     ◇


 一週間後。


 大学。


 俺は。


 本当に来ていた。


「本当に来た……」


 研究支援。


 個人。


 寄付。


 説明を聞く。


 金額。


 自由。


「…………」


 一千万円。


 達成したばかり。


 俺は。


 いくら出す?


 一万円。


 十万円。


 百万円。


「…………」


 未来価格。


 金を増やす。


 それだけ考えれば。


 寄付。


 ゼロリターン。


 最悪。


 いや。


 違う。


 俺は。


 何のために。


 金を増やしてきた?


「三十万円」


 俺は言った。


「三十万円、寄付します」


 担当者が。


 少し驚く。


「ありがとうございます」


 書類。


 記入。


 支援先。


 次世代生活支援AI。


 事故予測研究。


 金額。


 三十万円。


「…………」


 初めて。


 未来価格を使って増やした金を。


 利益のためではなく。


 未来のために。


 使った。


     ◇


 帰宅。


「三十万!?」


 美咲。


「はい」


「寄付!?」


「はい」


「相談は!?」


「…………」


 また。


 やった。


「慎吾!」


「ごめんなさい!」


「車の次は寄付!?」


「ごもっともです!」


「三十万よ!?」


「はい!」


「三千円じゃないよ!?」


「分かってます!」


 怒られる。


 めちゃくちゃ。


 怒られる。


「なんで?」


 美咲。


 本気。


「なんでそこまで?」


「…………」


 言えない。


 未来。


 結衣。


 死。


 それは。


 言えない。


 でも。


「事故を」


「事故?」


「子供の事故を減らす研究なんだ」


「…………」


「結衣みたいな子供が」


 声。


 少し。


 詰まる。


「事故に遭わなくて済むなら」


 美咲。


 黙る。


「それなら」


 俺は。


 言った。


「三十万くらい、いいかなって」


「…………」


 美咲。


 ため息。


「先に相談して」


「はい」


「金額の問題じゃない」


「はい」


「次から絶対」


「はい」


「勝手に三十万使ったら」


「はい」


「旧車売るから」


「それだけは!」


「じゃあ相談して」


「します!」


 強い。


     ◇


 夜。


 俺は。


 自分の部屋へ戻った。


 机。


 結衣の絵。


「…………」


 期待。


 している。


 正直。


 めちゃくちゃ。


 期待している。


 三十万円。


 研究。


 未来。


「変わった?」


 見る。


【10年後の価格:294,000,000円】


「…………」


 変わらない。


「やっぱり」


 そんな。


 簡単じゃない。


 寄付。


 三十万円。


 巨大な研究。


 十年。


 未来。


 そんなもの。


 一回。


 寄付しただけで。


 変わるわけ。


「ないよな」


 俺は。


 絵を戻そうとした。


 そのとき。


「…………?」


 表示。


 揺れた。


【10年後の価格:294,000,000円】


 数字が。


 一瞬。


 消える。


 そして。


 再表示。


【10年後の価格:293,600,000円】


「…………」


 え?


 もう一度。


 見る。


【10年後の価格:293,600,000円】


 二億。


 九千。


 三百六十万。


「四十万……」


 下がった。


 三億。


 最初。


 そこから。


 二億九千四百万。


 そして。


 今。


 二億九千三百六十万。


「下がった……」


 俺は。


 椅子から立ち上がった。


「下がった!」


 四十万円。


 たった。


 四十万円。


 二億九千万円以上。


 残っている。


 誤差。


 みたいなもの。


 でも。


 違う。


「俺が……」


 今回。


 初めて。


 理由が分かる。


 俺が。


 研究へ。


 金を出した。


 そのあと。


 未来価格が。


 変わった。


「変えた……?」


 未来を。


 俺が。


「…………」


 手が。


 震える。


 嬉しい。


 中古品で。


 何十万円。


 何百万円。


 儲かったときより。


 一千万円。


 達成したときより。


 嬉しい。


「よし……」


 できる。


 未来は。


 変えられる。


「結衣」


 待ってろ。


 パパ。


 やるから。


 三億。


 全部。


 消す。


「絶対ゼロにする」


 その瞬間。


 絵の上。


 新しい表示。


 見たことのない。


 文字。


【未来変動を検知】


「…………」


 何だ?


 さらに。


【未来改変率:0.14%】


「未来……改変?」


 初めて。


 能力が。


 俺の行動によって。


 未来が変わったことを。


 認識した。


「0.14%……」


 小さい。


 めちゃくちゃ。


 小さい。


 でも。


 ゼロじゃない。


「四十万円で……0.14%?」


 一瞬。


 考える。


 三十万円出した。


 未来価格が四十万円下がった。


 未来改変率。


 0.14%。


「…………」


 いや。


 待て。


 金額と。


 未来改変率が。


 そのまま比例しているとは限らない。


 百万円出せば。


 もっと下がる?


 一億円出せば。


 一気に変わる?


「そんな単純じゃないよな」


 金額だけなら。


 それこそ。


 三億円。


 寄付すればいい。


 でも。


 たぶん。


 違う。


 俺がしたこと。


 三十万円を寄付した。


 その金で。


 研究が。


 ほんの少し。


 前に進む。


 誰かが。


 何かをする。


 それが。


 さらに。


 別の未来へ。


 つながる。


「…………」


 金じゃない。


 行動。


 その結果。


 未来が。


 変わる。


「だったら」


 0.14%。


 あと。


 99.86%。


「全部変えてやる」


 そのとき。


 表示。


 消えない。


「…………?」


 いつもなら。


 必要な情報を見せて。


 終わる。


 でも。


 今回は。


 違った。


 もう一つ。


 表示。


【未来改変に伴う関連事象の変動を検知】


「関連事象?」


 未来を変えた。


 その結果。


 別の未来も。


 動いた?


 表示。


 切り替わる。


【高城直人】


【未来影響度:94】


「…………」


 九十四。


 前に。


 高城の名刺で見た数字。


 変わっていない。


「じゃあ、何が変わった?」


 未来改変に伴う。


 関連事象の変動。


 そう表示された。


 なのに。


 高城の数字は。


 同じ。


「…………」


 分からない。


 変わったのは。


 高城の影響度じゃない?


 それとも。


 まだ見えていない。


 何か?


 そして。


 もう一人。


 名前。


【黒瀬隆一】


「…………」


 息が。


 止まる。


 俺は。


 黒瀬のことを。


 調べていた。


 でも。


 能力が。


 向こうから。


 黒瀬の名前を表示したことは。


 一度もない。


「なんで……」


 その下。


【未来影響度:――】


 数字。


 ノイズ。


「見せろ」


 頭。


 ズキッ。


「っ……」


 表示。


 揺れる。


【未来影響度:99】


「…………」


 九十九。


 教授。


 八十七。


 高城。


 九十四。


 そして。


 黒瀬。


 九十九。


「お前……」


 何者なんだ?


 さらに。


 表示。


【未来改変により接触予定時期が変動】


「接触?」


 誰と?


 俺?


 結衣?


 高城?


「いつ?」


 集中。


 頭。


 ズキン。


「っ……!」


 数字。


 揺れる。


【接触予定:――日後】


「見せろ」


 ノイズ。


 そして。


【接触予定:12日後】


「…………」


 十二日後。


 黒瀬隆一。


 八百万円の土地を。


 現金で買った男。


 十年後。


 日本を代表する企業になると。


 アステラへ投資しようとしている男。


 そして。


 未来を。


 知っているかもしれない男。


「十二日後……」


 そいつと。


 俺たちは。


 出会う。




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