↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけ「10年後の値段」が見える。~未来価格で億万長者になるはずが、娘の絵に3億円の値札がついていた~』  作者: かばっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/68

第16話 俺は、いつ死ぬ?




【10年後の価格:2,800,000円】


【価格上昇理由:死亡した著名人物の生前写真】


【関連人物:慎吾】


「俺……死んでる?」


 何度見ても。


 慎吾。


 俺の名前だ。


 十年後。


 この写真には二百八十万円の価値がある。


 理由。


 死亡した著名人物の生前写真。


 その著名人物が。


 俺。


「…………」


 椅子に座った。


 力が抜ける。


 結衣だけじゃない。


 俺も。


 今見えている未来では。


 十年後には死んでいる。


「何なんだよ……」


 娘を助けるために、未来価格を使い始めた。


 金を増やして。


 未来を調べて。


 本当に少しずつだけど。


 未来を変えられるかもしれないと思い始めた。


 なのに。


 今度は俺?


「ふざけんなよ」


 俺が死んだら。


 誰が結衣を助けるんだ。


     ◇


「慎吾?」


「うわっ!」


 振り返る。


 美咲。


「何?」


「いや……」


「さっきからアルバム見ながら固まってるけど」


「懐かしいなと思って」


「泣きそうな顔で?」


「…………」


 そんな顔してたのか。


 美咲が隣に座った。


「これ去年やね」


「うん」


 例の写真。


 公園。


 俺。


 美咲。


 結衣。


 三人で笑っている。


「結衣、小さい」


「一年しか経ってないよ」


「子供の一年はでかいよ」


「そうやね」


 美咲がページをめくる。


「これ覚えてる?」


「ああ」


「慎吾、転んだやつ」


「写真で残すなよ」


「面白かったもん」


 次。


「これ」


「うわ」


 俺。


 寝てる。


 顔。


 結衣のシールだらけ。


「これ消していい?」


「ダメ」


「なんで?」


「結衣が大きくなったら見せる」


「俺の人権は?」


「ない」


「ひどい」


 美咲が笑う。


 俺も。


 少しだけ笑った。


 でも。


 写真を見る。


 十年後。


 二百八十万円。


 理由。


 俺が死んでいるから。


「…………」


 やっぱり。


 笑えなかった。


     ◇


 その夜。


 美咲と結衣が寝たあと。


 俺は自分の部屋へ戻った。


 未来価格ノート。


 新しいページ。


 大きく書く。


『慎吾 死亡?』


「……嫌な見出しだな」


 でも。


 調べる。


 まず。


 自分自身。


 鏡を見る。


「俺の十年後」


 意識を向ける。


 何も出ない。


「やっぱり人間には出ないか」


 結衣にも。


 俺にも。


 美咲にも。


 人そのものには価格が表示されない。


 だったら。


 俺に関係する物から探す。


「死亡予定日……」


 例の家族写真を手に取る。


 集中。


【10年後の価格:2,800,000円】


【価格上昇理由:死亡した著名人物の生前写真】


【関連人物:慎吾】


「俺の死亡予定日」


 強く思う。


 頭の奥が。


 ズキッ。


【死亡予定日:――――】


「出た」


 心臓が速くなる。


「見せろ」


 ノイズ。


 文字が。


 少しずつ形になる。


【死亡予定日:算出――】


「算出?」


 さらに集中する。


【死亡予定日:算出不能】


「…………は?」


 算出不能。


「なんで?」


 結衣は。


 出た。


 日数まで。


 はっきり。


 なのに。


 俺は。


 算出不能。


「能力の限界?」


 それとも。


 俺の死は。


 まだ固定されていない?


「…………」


 分からない。


 でも。


 この違いは。


 絶対に意味がある。


     ◇


 俺は別の物でも試した。


 社員証。


【10年後の価格:320,000円】


【価格上昇理由:著名人物の所有品】


「死亡予定日」


 集中。


【死亡予定日:算出不能】


 名刺。


【10年後の価格:18,000円】


【死亡予定日:算出不能】


 仕事用ノート。


【10年後の価格:48,000円】


【死亡予定日:算出不能】


「全部ダメか……」


 なら。


 別の角度。


 俺は社員証を見る。


 今は価値がない。


 十年後には三十二万円。


 その間。


 いつ。


 価値がつき始める?


「もっと手前は……?」


 そう強く思った。


 その瞬間。


 いつもの表示が揺れた。


【10年後の価格:320,000円】


 数字が滲む。


「……え?」


 見慣れた十年後の表示が。


 一瞬。


 別の文字へ変わった。


【7年後の価格:12,000円】


「七年後?」


 すぐに消える。


「待て」


 俺は社員証を握る。


「もう一回」


 集中。


 頭が。


 ズキッと痛む。


 表示が揺れる。


【8年後の価格:86,000円】


 次。


【9年後の価格:210,000円】


 そして。


【10年後の価格:320,000円】


「…………」


 俺は息を止めた。


 自分で七年後や八年後を指定したわけじゃない。


 能力が。


 何か意味のある時点だけを。


 断片的に見せている。


「七年後から……価値がつき始める?」


 社員証。


 理由は。


 著名人物の所有品。


 だとすれば。


 七年後あたりから。


 俺の名前が。


 世間に知られ始める?


「…………」


 まだ。


 断定はできない。


 でも。


 変化する時期は。


 そのあたり。


 そんな気がした。


「じゃあ……この写真は?」


 例の家族写真。


 見る。


【10年後の価格:2,800,000円】


 強く思う。


 この価格が。


 いつから上がる?


 表示。


 揺れる。


【5年後の価格:12,000円】


 消える。


【7年後の価格:120,000円】


 さらに。


【9年後の価格:620,000円】


「九年後……」


 まだ。


 六十二万円。


 でも。


 その次。


 ノイズが激しくなる。


【9年――後の価格:1,100,000円】


「何年だ?」


 数字の一部が潰れている。


 さらに。


【9年――後の価格:2,300,000円】


「…………」


 十年後。


【10年後の価格:2,800,000円】


 俺は写真を机に置いた。


「直前で……跳ねてる」


 九年後。


 六十二万円。


 そこから。


 十年後に向かって。


 一気に上がる。


 つまり。


 俺に何か起きるのは。


 十年目に入ってから?


「結衣と……同じ時期?」


 嫌な汗が流れる。


 俺は結衣の最初の絵を取り出した。


【現在価格:0円】


【10年後の価格:294,000,000円】


 まだ。


 二億九千四百万円。


 死亡予定日。


 強く意識する。


【死亡予定日まで:3,5――日】


「…………」


 数字が。


 途中で潰れている。


 以前より。


 当然。


 時間は減っている。


 それでも。


 まだ。


 ほぼ十年。


 俺の写真の価値が急激に上がる時期と。


 かなり近い。


「同じ事故なのか……?」


 もし。


 結衣の事故に。


 俺も巻き込まれて死ぬ。


 だったら。


 一応。


 辻褄は合う。


「でも……」


 引っかかる。


 俺の死亡予定日。


【算出不能】


 結衣は。


 日数まで出る。


 もし。


 同じ事故。


 同じ日に。


 二人とも死ぬなら。


 俺にも同じように出てもよさそうだ。


「…………」


 何かが違う。


     ◇


 翌朝。


 ほとんど眠れなかった。


「パパ、ねむそう」


「眠い」


「ねれば?」


「これから仕事です」


「おしごとでねれば?」


「クビになる」


「くび?」


「仕事なくなる」


「じゃあパパずっとおうち?」


「そうなる」


「いいやん!」


「よくないんだよ」


 美咲がコーヒーを飲みながら笑う。


「結衣は嬉しいよね」


「パパ毎日あそべる!」


「収入ゼロのパパが誕生します」


「ゼロ?」


「そう」


「じゃあアイスかえん?」


「買えません」


「おしごといって」


「切り替え早っ」


 美咲が吹き出した。


 俺も笑う。


「行ってきます」


「いってらっしゃい」


「パパ!」


「ん?」


「きょう、あのくるま?」


「今日は普通の車」


「えー!」


「毎日あれで行けるか!」


 玄関を出る。


 普通の朝。


「…………」


 俺は。


 この普通を。


 絶対に守る。


     ◇


 昼休み。


 俺は未来価格ノートを見ていた。


 分かっていること。


 七年後あたり。


 俺に関係する物へ。


 少しずつ価値がつき始める。


 九年後から十年後にかけて。


 生前品の価値が急上昇する。


 そして。


 十年後には。


 俺は死亡した著名人物として扱われている。


 でも。


 死亡予定日。


 算出不能。


「情報が足りない」


 俺はペンを置いた。


 こういうとき。


 未来価格だけを見続けても。


 答えは出ない。


 今。


 調べられることを調べる。


「まずアステラだな」


 結衣の事故。


 現時点で。


 唯一。


 名前が出ている企業。


 アステラ・ロボティクス。


 現在株価。


 三百円前後。


 十年後。


 四万二千八百円。


 生活支援AI。


 見守り。


 そして。


 結衣の絵。


【関連企業:アステラ・ロボティクス】


「ここからだ」


 俺は。


 アステラについて。


 本格的に調べることにした。


     ◇


 会社。


 所在地。


 事業内容。


 研究開発。


 特許。


 提携先。


 ニュース。


 採用情報。


 今までより。


 ずっと細かく見る。


「…………」


 小さな会社だ。


 今はまだ。


 世間では。


 ほとんど知られていない。


 でも。


 研究内容は面白い。


 物流。


 工場。


 介護。


 家庭。


 人間と一緒に動くロボット。


「これが十年後……」


 巨大企業になる?


 株価だけを見るなら。


 そう考えてもおかしくない。


 そして。


 一つ。


 気になる記事。


 以前見つけた。


『次世代生活支援AIの共同研究を開始』


「これ……」


 記事を開く。


 大学との共同研究。


 家庭内の事故防止。


 高齢者。


 子供。


 行動予測。


「事故防止……」


 娘の。


 死亡事故。


 アステラは。


 事故を起こす側なのか。


 それとも。


 事故を防ぐ側なのか。


「どっちなんだよ」


 そのとき。


 記事の中。


 研究責任者。


 一人の名前が目に入った。


「…………」


 知らない人。


 四十代。


 大学教授。


 専門。


 ロボット工学。


 AI。


「この人……」


 今。


 聞いたところで。


 十年後の事故なんて。


 知るはずがない。


 それでも。


 アステラの未来を追うなら。


 覚えておくべき人物だ。


 俺は研究責任者の顔写真を見る。


 本当に。


 何気なく。


 見ただけだった。


 すると。


「…………え?」


 表示が出た。


【現在価格:――】


 人には。


 価格は出ない。


 結衣にも。


 俺にも。


 美咲にも。


 出なかった。


 でも。


 記事の中にある。


 教授の顔写真。


 そこに。


 今まで見たことのない文字が。


 重なった。


【関連価値:――――】


「関連価値?」


 初めて見る表示。


 俺は。


 画面へ顔を近づけた。


【関連価値:対象者の未来への影響度】


「…………」


 何だこれ。


 価格じゃない。


「影響度?」


 その下。


【対象:結衣】


 心臓が跳ねた。


「……また結衣?」


 さらに。


 数字。


【未来影響度:87】


「八十七……?」


 何の数字だ。


 百点満点?


 それとも。


 千?


 そもそも。


 数字が高いほど影響が大きいのか。


 低いほど危険なのか。


 何も分からない。


 ただ。


 今まで。


 一度も見たことのない表示だ。


「…………」


 俺は。


 教授の名前と。


 未来影響度87。


 その二つを。


 未来価格ノートへ書いた。


 その瞬間。


「…………待て」


 思い出した。


 土地。


 八百万円。


 十年後。


 一億八千四百万円。


 価格上昇理由。


 周辺開発。


 関連事象。


『次世代研究――誘致』


「次世代研究……」


 そして。


 アステラ。


『次世代生活支援AI』


「…………」


 同じ。


 次世代。


 研究。


 偶然?


 俺は。


 急いで。


 売れた土地の住所を調べた。


 そして。


 アステラと共同研究している大学。


 研究施設。


 周辺。


 地図。


「…………嘘だろ」


 土地。


 大学。


 距離。


 車で。


 十五分。


「近い……」


 あの土地。


 十年後。


 一億八千四百万円。


 次世代研究施設の誘致。


 アステラ。


 次世代生活支援AI。


 教授。


 未来影響度87。


 結衣。


 事故。


 そして。


 俺の死。


「全部……」


 バラバラだった点が。


 初めて。


 ほんの少しだけ。


 近づいた気がした。


 そのとき。


 俺は。


 もう一つ。


 気づいた。


「あの土地……」


 もう。


 別の人が買っている。


 俺は。


 東和不動産から聞いた言葉を思い出す。


 現金購入。


 一年以上売れなかった土地。


 俺が見つけた直後。


 突然現れた購入希望者。


「…………」


 偶然。


 そう思っていた。


 でも。


 もし。


 あの買主が。


 十年後の研究施設を。


 何らかの形で知っていたとしたら?


「いやいや」


 俺は首を振る。


 未来価格とは限らない。


 まだ公表されていない計画。


 大学。


 企業。


 行政。


 内部に近い人間なら。


 俺より早く情報を持っていても。


 別に不思議じゃない。


「…………」


 それでも。


 一年以上。


 誰も買わなかった土地。


 俺が。


 未来価格一億八千四百万円を見つけた。


 ほぼ同じタイミングで。


 現金購入の人間が現れた。


「偶然……だよな」


 口に出す。


 でも。


 妙に。


 気持ちが悪かった。


 そして。


 初めて。


 俺は。


 一つの可能性を考えた。


 俺は。


 この能力が。


 自分だけのものだなんて。


 一度も。


 確認していない。


「…………」


 未来価格が見える人間は。


 本当に。


 俺一人なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。