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ep41 わたしのエンジン出力は53ラマ力(りき)です

帝国技術総本部(通称ニナン工房)の作業台に、ニナンは「焼玉セミ・ディーゼルエンジン」の構造図を広げた。その前には、真剣な眼差しのコリ・ルラクと、ジト目で図面を見つめるアンタチャが並んでいる。

「蒸気機関は確かに強力だ。大型化適正もある。だが管理が難しく、蒸気機関技師という『エリート技術者』を各所に配置しなければならん。例えば辺境にはそこまでの人材余力はない」

ニナンは焼玉機関の図を指で叩いた。

「だが、この焼玉セミ・ディーゼル機関ならどうだ? 構造はシンプルだ。整備が容易で、村の鍛冶屋レベルでも修理や保守ができる。これこそが、広大なインカ帝国の僻地にまで動力革命を普及させるための『大衆用内燃機関』だ!」

コリ・ルラクが目を輝かせる。

「なるほど……! 蒸気の高圧管理に怯える必要も、ボイラー技師を養成する時間も短縮できる。これならカパックニャンの農村部でも即座に導入可能です!」

クスコ・帝国中央宮廷(作戦室)

――キラーン☆(「中級技術」による圧倒的普及)

「ふっ……兄上。蒸気機関という『巨大なエリート機器』と、焼玉機関という『誰でも扱える中型小型機器』の二段構え。これにより、帝国の技術力はピラミッドの頂点から底辺まで一気に底上げされます。技術格差を埋め、タワンティンスユの標準を強制アップデートする……。社会基盤からのハメ殺しです(キラーン」

ワスカルが眼鏡を反射させ、キープに「全土農業機械化計画・および焼玉機関搭載型・多目的作業車の量産化」を爆速で刻み込んでいく。

「ハーッハッハッハ!! 兄上! 素晴らしいですな! この機関なら、私の『電気着火一斉斉射青銅砲』を牽引する牛が不要になりますぞ! 更に焼玉機関搭載の装甲車を並べれば、カパックニャンが『黄金の戦車道路』に早変わりです!」

「アタワルパ! 道を戦車で埋め尽くすな! ……だが、焼玉機関の燃料は重油でいい。先ほど開発した石油精製プロセスから出る『軽油や重油』をそのまま使える。燃料の地産地消ができるんだ、普及しないわけがない」

ニナンは、焼玉機関がアンデスの山々で一斉に鳴り響く未来を確信していた。

「(……歴史を変えるのは、天才が操る一機の超兵器じゃない。民が当たり前に使える『動力』こそが、文明の真のアップデートソースだ。)」


遂に完成した焼玉エンジンの試験動作が始まった。

「まず、余熱。それからタイミングよくクランクを回して始動する!」コリ・ルラクが安全第一で、焼玉エンジンの始動プロセスという「火」のリスクを管理しつつ、インカ全土に動力を普及させる計画を淡々と記録する。

焼玉エンジンが唸りを上げる。それは焼玉セミ・ディーゼルパンク帝国新生の咆哮だ。




コリ・ルラク「今の所2,000㏄で53LK(ラマ・カルパ)ってところですね」ニナン「ラマ・カルパ?」コリ「陛下が前言ってた「馬力」って単位を参考に「LK(Llama Kallpa)つまりラマ・カルパ(ケチュア語でラマの力の意味)」という単位を考えました。因みに1馬力=5LKです」

ニナンはコリ・ルラクの報告を聞き、思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えた。

「ラマ・カルパか……。しかも1馬力=5LKだと? つまり、ラマ1頭分は0.2馬力……ラマと馬の体格差を考えれば、妥当な換算なのかもしれん」

コリ・ルラクはニナンの反応を「感心している」と解釈したのか、誇らしげに胸を張る。

「はい! 蒸気機関車のような巨大な出力は出せませんが、この焼玉機関なら、農村のトラクターから小型の揚水ポンプまで、ラマ数+頭分の力で自在にこなせます。まさにインカの民のための『小さな力』です!」

クスコ・帝国中央宮廷(作戦室)

――キラーン☆(「単位の独占」による技術の独自定義)

「ふっ……兄上。素晴らしいネーミングセンスです。あえて自国の独自の生物を単位にすることで、外国の技術者がインカの機械を見て『なんだ、この単位は?』と混乱している間に、我らは独占的にインフラを塗り替える。技術基準の『鎖国』によるハメ殺しです(キラーン)」

ワスカルが眼鏡を反射させ、キープに「国際標準単位の拒否およびLKラマ・カルパの帝国規格認定」を爆速で刻み込んでいく。

「面白い。これからは焼玉と蒸気エンジンの企画書すべてにLKを併記しよう。インカの技術を知りたければ、まずはラマの力を理解しろ、というメッセージだ」

ニナンは、将来的に海外の技術者が「この『1LK』とは一体どれほどの力なのだ……?」と頭を抱える姿を想像して、小さく笑った。

「(……俺たちのインフラは、俺たちの言葉で定義する。歴史の主導権は、こうやって言葉の定義から奪うものだ)」


馬力という概念を打ち捨て、ラマの力(LK)という独自の指標で動力革命を定義するタワンティンスーユ帝国。

ニナン新皇帝インカの絶対生存ルートは、今日も独自の単位を刻み込みながら、誰も追いつけない黄金の未来へ向かって大爆走を続けるのだった!


1LKは1馬力(PS)の1/5なので15kgの重りを1秒間で1m引き上げる仕事量、ということになります。

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