ep39 黒く脈打つ大地の恵み
ある日、侍女たちを連れてクスコの公民館(的施設)の臣民イベントの慰問に出かけて行ったクシリマイがアルパカのモコモココートにくるまって震えながら帰って来た「室内なのにめちゃめちゃ寒かったのです。『もう少し薪をくべられませんの?』って聞いたら『申し訳ございません。これ以上くべると明日以降の薪が無く……』とか言われてしまいましたわ。」
ワスカルが眼鏡をキラーンしながら答える「製鉄による木炭の消費が激しく原料の薪が枯渇気味ですな。帝国全体で燃料不足気味となっております。」
クスコの市民たちが凍えるような冬を過ごしているという報告に、ニナンはすぐさまワスカルと技術者達を招集した。
「公民館(的施設)の暖房すら賄えないほど薪が枯渇しているとは……。森林破壊のペースが、植林の追いつかないほど加速しているな。ワスカル、今の供給状況はどうなっている?」
ワスカルは眼鏡をキラーンと輝かせ、ラマ皮紙に纏められた帝国エネルギー資源マップを展開した。
「兄上、深刻です。製鉄所の高炉を維持するための木炭消費量が、帝国の森林再生速度を完全に超越しております。もはや『薪』という低密度エネルギーでは、この帝国を動かし続けることは困難です」
クシリマイはまだ公民館の冷え込みがを取り戻すべく俺の背中にぎゅうぎゅうにしがみ付きながら震えている。オッパイまで冷たくないか?
「お兄様……燃料不足って言っても、何かに置き換える当てとか有りますの……?」
ニナンはニヤリと笑い、地図上の現エクアドエル近辺を指差した。
「薪がダメなら、地下に眠る『燃える水』を使えばいい。ワスカル、コリ……! 油田開発だ!」
クスコ・帝国中央宮廷(作戦室)
――キラーン☆(「燃える水」によるエネルギー革命)
「ふむ……兄上。地面から湧く『燃える水』、そのような物があるなら歴史のボトルネックを一気に突き破る一手です。薪という『地上資源』から、『燃える水』という『地底資源』への転換。これによりインフラをさらに倍速で拡大可能となります。最高のハメ殺しです(キラーン)」
ワスカルが眼鏡を反射させ、キープに「全土『燃える水』探査計画・及び精製プラント建設による脱薪炭化」を爆速で刻み込んでいく。
「そういえば帝国北部では珠に……地面から黒くて臭い液体が湧いておりますが? 処理に困って放置しておりました、もしかして……」
北部国境地帯の報告を聞いていたアタワルパのふとした一言に、ニナンの脳内でスパークが弾けた。
「それだ! アタワルパ、それこそが我々が喉から手が出るほど求めていた『石油』だぞ!」
ニナンが立ち上がり、地図を指差して熱く語り始めたその時、横に座っていたクシリマイが、頬を紅潮させて割って入った。
「まぁ! そうなのですか? でも湧き出すドロドロの液体なら、私のお兄様への愛と情熱と、ほとばしる○○○も常に石油のように湧き出していますわ!」
会議室が一瞬、静まり返った。ワスカルが眼鏡の位置をずらし、「ふむ、この熱量は燃料として使えるのか……?」と真面目に検討し始めたのを見て、ニナンは頭を抱えた。
「クシリマイ! 国家運営会議に……というか、会議の場でそんな下ネタを持ち込まないで! 油田の開発と、お前の愛〇を一緒にするな!」
クスコ・帝国中央宮廷(作戦室)
――キラーン☆(「暴走する姫の情熱」を燃料に変える)
「ふっ……兄上。クシリマイの暴走もまた、帝国(主に皇室繁栄)のエネルギーの一部です。彼女の愛と熱意は大衆に『タワンティンスユ皇室は豊かな大地の恵みと共に将来安泰』と知らしめるのプロパガンダです(キラーン)」
「ハーッハッハッハ!! 兄上! 素晴らしいですな! クシリマイの情熱を動力源に変換する『愛の蒸気機関』でも作りましょうぞォォォ!! きっと通常の3倍の出力が出るはずです!」
「アタワルパ! どんな理屈だよ! ……全く、クシリマイのあのテンションを制御できるのは、誰なんだ……」
ニナンは遠い目をして、油田の図面を書き直す。
「(……俺が目指しているのは国家絶対生存ルートだ。だが、この帝国のメンツは、なぜこうも斜め上に突き抜けて行くんだ……)」
油田発見の喜びも束の間、奔放な姫の情熱が帝国の会議を迷走させるタワンティンスーユ帝国。
ニナン新皇帝の絶対生存ルートは、今日もカオスな家族会議を乗り越えながら、誰も追いつけない黄金の未来へ向かって大爆走を続けるのだった!




