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ep38 破談試験

半地下の避難小屋、分厚い鉄板越しに潜望鏡を覗き込む一行の空気は、張り詰めた糸のように鋭い。

「……で、こんなシェルターの中から潜望鏡で観察しながら、ロープで操作して動作実験でやすか? 陛下、これ、機会の実験というより大量破壊兵器の準備でやすか?」

ソリアの呆れた声が響く。ニナンは潜望鏡から目を離さず、涼しい顔で答える。

「いや、これくらいは要る。相手は未知の圧力だぞ」

「なにしろ今回は『破談』、いや『破断試験』ですからね。どこまで耐えられるか、限界まで回すのが目的ですので」

コリ・ルラクがメモ帳を握りしめながら、嬉々として専門用語を口にする。その背後で、予期せぬ闖入者であるクシリマイが顔を青ざめさせていた。

「『破談」なにか今、凄く不穏な単語が聞こえたような……? 破談? 破局?」

「破談じゃなくて破断!何故居る、クシリマイ。宮殿にいろと言ったはずだ」

ニナンの冷ややかな問いかけに答える間もなく、コリ・ルラクの耳がピクリと反応した。

「――っ! 来ます! 破断前兆音クリティカル・ノイズです!」

ドォォォォォォォォン!!

地響きと共に工房が震え、潜望鏡越しにも明らかな「火柱」が視界を埋め尽くした。シェルターの鉄壁が熱を帯び、耳をつんざくような轟音が鳴り止む。ようやく静寂が訪れた後、ニナンは満足げにうなずき、手元のデータを記録した。

「よーし、これで限界は分かった。……、更に安全策と設計を詰めよう。次は破断係数に余裕を持たせて、圧力弁を5系統に増やすぞ」

クシリマイはニナンの服の裾を握りしめ呟く「この世の終わりかと思いましたわ……蒸気って怖いんですのね……『安全第一』、大切な概念ですわ。ヨシッ!ですわね」


クスコ・帝国中央宮廷(作戦室)

――キラーン☆

「ふっ……兄上。今回の爆発は失敗ではありません。データを取るための『能動的な破壊』です。爆発の瞬間に計測されたデータこそ、未知の高圧力を保証する最強の証。最高のハメ殺しです(キラーン」

ワスカルが眼鏡を反射させ、キープに「蒸気機関・破壊限界データ解析および安全率150%向上計画」を爆速で刻み込んでいく。

「ハーッハッハッハ!! 兄上! 素晴らしいですな! この爆発で得た『衝撃波』を逆に利用して、敵の艦隊を湖面ごと吹き飛ばす『蒸気熱砲』のヒントにしましょうぞォォォ!!」

「アタワルパ! また機関爆発を武器にするな! ……だが、コリ・ルラクの言う通り、限界を知らなければ本当の『安全』は語れない。クシリマイ、お前も怯えるな。この爆発の回数だけ、インカの技術は死から遠ざかっているのだから」

ニナンは煤だらけの顔で、次なる設計図に新しい数値を書き込んでいく。

(……失敗を恐れて動かないことこそ、一番の滅亡ルート。俺は何度だって爆破して、何度だって完成させる)

ニナンの探求心が、インカを未曾有の技術大国へと押し上げていることを静かに記録する。

爆発を糧に強度を上げ、失敗をデータとして積み重ねるタワンティンスーユ帝国。

ニナン新皇帝インカの絶対生存ルートは、今日も工房から大爆発を響かせながら、誰黄金の未来へ向かって大爆走を続けるのだった!



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