第33話 電器の心臓ダイナモン
「いいか、アンタチャ? 落ち着いてよく聞くんだ。磁石の『北極(N極)』と『南極(S極)』の間にできた磁界を、お前が作った銅線のコイルが横切るだろ? その通過する『一瞬』だけ、コイルの中にイラパ(雷)の力がブワッと生まれるんだ。でも、ただ回すだけだと電気が行ったり来たりする『交流』になっちまう」
俺はラマ皮紙に、コイルの回転に合わせて回転する「整流子」と、そこに接触する「ブラシ(接点)」の構造を大きく描き込んだ。
「だから、この回転する軸のところに隙間をあけた半円の金属板(整流子)を取り付けて、外側の接点で上手くタイミングを合わせて取り出す! そうすれば、あっちこっちに暴れる電気を、一方通行の『断続的な一定方向の電気(直流)』としてゲットできる! これが『直流発電機』の心臓部だ!」
「……つうかする、いっしゅん。せってんで、だんぞくてきに、げっとする……! げっとする!! わたし、ぜったい、げっとする!!!」
アンタチャのジト目が完全に電気のケミカル反応でキマっている。俺の「げっとする!」という言葉を、まるで国家の戦闘スローガンのように復唱しながら、小さな拳をぶんぶんと振り回した。無表情のまま内に秘めたパッションがカンストしている。
「よし、いいぞその意気だ! そして、そのままだとまだ電気がドクンドクンと波打ってるからな。さらに精度を上げるために、これを使う。『焼き銅板のダイオード(亜酸化銅整流器)』だ!」
俺は工房の奥から、あらかじめ作っておいた「表面をあえて真っ黒に酸化させて焼いた銅板」を取り出した。
「銅の表面に薄く作ったこの酸化膜(亜酸化銅)にはな、電気を『片側にしか通さない』っていう便利な特性(整流作用)があるんだ。これを発電機の出口に挟み込んで完全に綺麗な一方通行の直流に整流して……いよいよ、あの希硫酸のガラス瓶(鉛蓄電池)に『充電』だ!!」
「……じゅうでん! じゅうでん!! びんの中に、イラパの力を、ギチギチに、つめこむ!! わたし、それ、だいすき、です!!!」
アンタチャの興奮は最高潮に達した。彼女は焼き銅板を両手で神聖な器のように掲げると、そのまま「じゅうでん! じゅうでん!」と呟きながら、コリ親方の工房から強奪してきた鉄のローター軸へと残像が発生するレベルの超高速で配線(銅線巻き)を開始した。職人のゾーンに入った彼女の指先は、もはや0.05ミリの狂いもない超精密工作機械だ。
「フッ、素晴らしい。ついに物理的な回転運動が、焼き銅板の作用によって100%純粋なエネルギーへとキラーンと変換・蓄積されるわけですね」
新調した本物の眼鏡のブリッジを指先でクイッと上げ、ワスカルが影から最高に邪悪で知的な笑みを浮かべて現れた。
「兄上、この『じゅうでんシステム』が完成すれば、昼間に水車や家畜の力で回した電力を蓄電池に貯め、夜間のクスコ宮廷の防衛・通信網を24時間ノンストップで完全稼働させられます。直ちに国営の『亜酸化銅焼き窯』を設立しましょう(眼鏡キラーン)」
「ガハハ! 兄上! 焼き銅板にそんなチート能力があったとはな! 筋肉のプロテイン(栄養)補給と同じく、蓄電池へのエネルギー補給(充電)もまた男のロマン! 我が鉄砲隊の機動力もこれで100倍だ!」
アタワルパも鉄製の大砲を愛おしそうに抱きかかえながら、充電のテンポに合わせてマッハスクワットの地鳴りを轟かせている。
「まぁ……! 溢れるエネルギーを一方通行でギチギチに詰め込む『充電』だなんて、まさに今夜の寝所のわたくしたちですわ、兄様!」
そこへ、クシリマイがはち切れんばかりの褐色巨乳をボインボインと大波のように揺らしながら、俺の正面から密着してきた。
「ダイオードのように、わたくしのこの身体で兄様の『突撃』の進行方向を一方通行(逃げ場なし)に整流して、わたくしの後宮奥深く(意味負荷)へ朝まで濃厚に愛のエネルギーを充電していただきましょうねぇ♡」
「陛下、焼き銅板の整流作用と、蓄電池への過充電……非常に深く理解できます」
医療神官キリヤが白衣の隙間から滑らかな褐色スレンダーボディを滑り込ませ、俺の耳元でハスキーに囁いた。
「今夜はアンタチャ様の巻いたギチギチのコイル(ベッド)の上で、私と正妃様が激しい回転運動を加え、発生した快楽電流をダイオードで陛下の神経へ一方通行で流し込み続けます。陛下の『蓄電池』が限界を突破して爆発(射精)するまで、24時間ノンストップで臨床実験(充電モード)をさせていただきますね」
「ボクも陛下のブラシ(接点)になって、火花散らしちゃいますぅ♡」
フェリちゃんまでドレスを大胆にたくし上げ、潤んだ瞳でウインクしている。
「待って!! 焼き銅板のダイオードは優秀だけど、俺の身体に愛のエネルギーを一方通行で強制充電し続けるのはガチで命の危険があるから!! 嫁たちの愛の電圧が強すぎて、俺の腰のライフゲージが満タンを通り越して一発で過充電爆発しちゃうからァァァーーー!! 誰か俺の回路に今すぐ逆流防止回路を挟んでくれーーー!!」
アンタチャと共に直流発電機とダイオードによる「完全直流充電システム」の土台を確立し、電気帝国へのカウントダウンを開始したニナン皇帝。
16世紀のインカ帝国に近代的なエネルギーインフラが爆誕しようとしていたが、今夜もまた、10万ボルト級の熱量で全方位から大突撃してくる嫁たちの「超絶過充電ハーレム」の中で、跡形もなく精錬(搾り取られ)され尽くす運命なのだった。




