第32話 南米大陸の地理的問題の解決法
「確かに、無線の研究は本気で必要かもな……。何しろタワンティンスーユは大陸国家、それも険しい山脈とジメジメしたジャングルだらけだ」
俺は、工房の机に広げたアンタチャの巻いたギチギチのコイルを見つめながら、真剣に考え込んでいた。
広大なインカ帝国において、人力の伝令がインカ道を激走するシステムはよく出来ている。だが、地形が険しすぎて、有線電信線を大陸全土に何千キロも張り巡らせるのはコストも人員もイカれちまう。もし、目に見えない波で山を飛び越える技術――「無線」があれば、この国の防衛と内政は神レベルでハックできる。
「前世の20世紀初頭みたいな高周波を生み出す『真空管』が無くても、火花をバチバチ散らすだけの『スパーク無線(火花通信)』なら、この時代でも理論上はイケるはずだ。幸い、ソリア親方のガラス容器と、アンタチャの銅線で作った、内部抵抗の低い【鉛蓄電池】はここにあるんだしな……!」
よし、と俺は決意を固め、目を皿のようにして待機している無表情な天才少女を見つめた。
「よし、アンタチャ! お前に最初の国家特命課題を与える! 無線機に安定した大電力を送り込むための、『直流発電機』を開発せよ!」
俺がラマ皮紙に、磁石の隙間で整流子を使って電気の流れる向きを一定にする「直流発電機」の概念図をサッと描き出すと、アンタチャのジト目がカッと見開かれた。バチバチバチッと、脳細胞に直接電流が走ったような衝撃の顔だ。
「はつでんき……! ちょくりゅう!! ずっと、まわすと、ずっと、イラパ(雷)が、で続ける機械……!! やる!!! アンタチャ、やります!!! いますぐ、叔父さん(コリ)の工房から、鉄の軸、ぶんどってきます!!!」
「やる!!!」と叫んだ瞬間のアンタチャの気迫たるや、普段の舌足らずな無口キャラを完全パージしたマッドサイエンティストそのものだった。彼女は図面をひったくるように抱きかかえると、小さな体で工房の床を爆走し、叔父のコリ親方のブースへパーツの調達(強奪)に向かっていった。
「フッ、素晴らしい。これで我が国の通信網は、有線の限界すらキラーンと超越するわけですね」
新調した本物の眼鏡のブリッジをクイッと上げ、ワスカルが影から不敵な笑みを浮かべて現れた。
「兄上、スパーク無線の開発が成功すれば、アマゾン奥地のジャングルやチリの最南端の部隊とも、クスコの司令部から一瞬で暗号通信が可能になります。直ちにアンタチャ通信局長に据え計画に国家予算を投じましょう」
「ガハハ! 兄上! 山を越える目に見えん雷の言葉か! 素晴らしい、我が砲兵隊の配置転換がマッハの速度で行えるな。もはや筋肉の連携速度が光速に達するぞ!」
アタワルパも大砲をガシガシと磨きながら、興奮のあまりマッハスクワットで工房の床板にヒビを入れ始めている。
「まぁ! 離れていても一瞬で繋がる『スパーク無線』だなんて、なんて情熱的な響きでしょう!」
そこへ、クシリマイがはち切れんばかりの褐色巨乳をボボイン!と揺らしながら、俺の正面から容赦なく接近してきた。
「兄様、わたくしたちの愛の火花も、今夜は後宮のベッドの上でバチバチと限界まで飛ばし合いましょうね! どんなに離れていても、兄様の『極太マスト(長槍)』が放つ愛の電波、わたくしの身体が全身で受信してみせますわぁ♡」
「陛下、直流発電機による継続的な電力供給……非常に興奮します」
キリヤが白衣をバサリと脱ぎ捨て、しなやかな褐色スレンダーボディを俺の背中に完全に密着させてきた。
「アンタチャさんが直流発電機を完成させる前に、まずは今夜、私と正妃様が陛下の『人間発電機』となり、ピストン運動による継続的な熱量と快楽をどれほど生み出し続けられるか、朝まで休むことなく臨床実験(過充電モード)をさせていただきますね」
「ボクも陛下の周りをぐるぐる回って、愛を誘導しちゃいますぅ♡」
フェリちゃんまでドレスをたくし上げ、特製の絶縁ゴム(試作品)を手にウインクしている。
「待って!! 直流発電機は開発させるけど、俺の腰のピストンを24時間ノンストップで常時回転(フル稼働)させるのはやめて!! 嫁たちの愛のスパークが強すぎて、通信機能(俺の意識)が一発で混線して消滅(ナレ死)しちゃうからーーー!! 誰か俺の回路を今すぐアースして逃がしてくれーーー!!」
大陸国家の弱点をハックするため、アンタチャに「直流発電機」の課題を与え、スパーク無線への道を切り開いたニナン皇帝。
インカ帝国はついに「大無線・通信帝国」への超進化を確定させたが、今夜もまた、10000ボルト級の愛のプレッシャーで全方位から大突撃してくる嫁たちの「人間発電所」の中で、骨の髄まで過放電(搾取)させられる運命なのだった。




