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第30話 落ち着け!先ずは人工磁石からだ!

翌朝の工房にて。

「しんくーかん! こうりゅうちょくりゅう! こーしゅうはむせんき! でんき、でんき、もっと、おしえて!!」

昨日までの無表情はどこへやら、アンタチャはジト目を血走らせ、小さな両手でニナンの胸ぐらをガタガタと激しく揺さぶってきた。少し舌足らずな口調のまま、未来のオーバーテクノロジーの単語を呪文のように連呼している。完全に電磁気学の魔力に取り憑かれたマッドサイエンティスト(少女版)の誕生である。

「落ち着け! アンタチャ、落ち着け!! まずは電磁石で方位磁石造りからだ!!」

俺は彼女の両肩をがっちりと掴み、必死に現実に引き戻した。

一足飛びに真空管だの無線機だのに行けるわけがない。前世の知識がある俺だって、ガラスの封入技術やフィラメントの素材、高真空を生み出す排気ポンプの仕組みなんて知らない。

「いいか、アンタチャ。どんなに凄い機械も、基本は小さな一歩からだ。まずはお前が引いてくれたその綺麗な銅線を、鉄の芯にきれいに巻き付ける。そこにボルタ電池の電気を流して、鉄を『電磁石(一時的な磁石)』にするところから始めるんだ。それができれば、遠く離れた場所に電気を流した瞬間だけ、向こうの方位磁石の針をピクッと動かせる。……これが、すべての通信の基本になる『電信機』の第一歩なんだよ」

「……でんしんき。まずは、じしゃく、から。……はっ、わたし、あせりすぎました。へいか、すみません。でも、アンタチャ、やる気、マックスです。いますぐ、鉄に、ぎちぎちに、巻きます……!」

アンタチャはハッと我に返ると、ふたたび無表情(ただし目は爛々と輝いている)に戻り、すぐさま銅線と鉄の棒を握りしめて猛烈な勢いでコイルを巻き始めた。その指先の動きは、もはや人間のそれではなく精密機械のピストン運動のようだ。

「フッ、素晴らしい。基礎(ステップ1)からの着実な進化、これこそ我がタワンティンスユの真髄です」

本物の眼鏡をキラーン!と冷徹に輝かせ、ワスカルがすかさず「電信線敷設のためのインカ道利権改定案」の木札を抱えて進み出てきた。

「兄上、まずはクスコの宮廷から我らの秘密工房まで、この『電磁石式電信(モールス信号)』のラインを繋ぎましょう。これにより、前線からの報告や兄上の『夜の御渡りスケジュール』の変更が一瞬で共有可能になります(眼鏡キラーン)」

「ガハハ! 兄上! 鉄の針がピクピク動くだけで、遠くの命令が伝わるのか! 筋肉の伝令チャスキが走るより早いのなら、我が鉄砲隊の斉射タイミングを電信で一斉に合わせることも可能だな! 組織的筋肉の誕生だ!」

アタワルパも大砲を担いだまま、電信のテンポに合わせてマッハスクワットを刻み始めた。

「まぁ! 電気が流れるとピクピク動く電磁石ですって……!?」

そこへ、クシリマイがはち切れんばかりの褐色巨乳をボインボインと激しく波打たせながら、頬を真っ赤にして割り込んできた。

「兄様、それはつまり、今夜の寝所でも、兄様から電気(愛)が流れてきた瞬間に、わたくしたちの身体が喜びでピクピクと激しく反応してしまうという予行演習シミュレーションですのね!?」

「陛下、電磁石の原理……非常に興味深いです」

キリヤが白衣のボタンをパチパチと外し、しなやかな褐色スレンダーボディを俺の背後から完全に密着させてきた。

「アンタチャ様の巻いたギチギチのコイルを、陛下の『最も敏感な神経の芯』に見立て、ボルタ電池から限界まで直流電流を流し込んだ際、陛下の針(下半身)がどれほど持続して『直立ホールド』し続けるか、朝まで徹底的に臨床実験(過充電モード)をさせていただきますね」

「ボクも陛下の電磁石に引き寄せられる、鉄の針になっちゃいますぅ♡」

フェリちゃんまでドレスの裾を大胆にたくし上げ、潤んだ瞳でウインクしている。

「待って!! まずは方位磁石からって言っただろ!! なんで俺の身体を電磁石にして夜のフル稼働を始めようとしてるんだ!! 嫁たちの愛の起電力が強すぎて、俺の腰の内部抵抗がゼロになって一瞬で焼き切れるからーーー!! 誰か俺の回路に今すぐヒューズを挟んでくれーーー!!」

一歩ずつ、しかし確実な技術ハックで「電信時代」の扉を叩いたニナン皇帝。

インカ帝国の情報ネットワーク化は着実に進んでいくが、今夜もまた、過充電オーバーヒート確実な熱量で全方位から大突撃してくる嫁たちの「人間発電所」の中で、一晩中ピクピクと放電(搾取)させられる運命なのだった。


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