第24話 驚愕!未来帆船スクーナー
「ちょ……ちょっと待て! 親方! なんでこの16世紀に、現物のバミューダ帆(三角縦帆)が立ってんだよ!? どう見てもこれ、18世紀以降のスクーナー船じゃねえか!!」
海岸の即席ドックに案内された俺は、建造中のキャラベル船を見上げて、あまりの衝撃に白目を剥いていた。
前世の記憶があるからこそ分かる。16世紀の大航海時代の主流は、追い風をガッツリ受ける「四角帆」か、せいぜい「ラテン帆(上方横桁三角帆)」だ。風上に切り込める上に旋回も一瞬の近代的な三角縦帆(バミューダ帆)なんて、この時代の帆柱の強度、ロープの性能、滑車の精度では、風圧に耐えきれずにマストがバキバキに折れるか、ロープがブチ切れるのがオチである。運用なんて絶対に不可能なはずなのだ。
「親方……あんたはトニー・ス〇ーク(※アイア〇マンの天才発明家)か!? それとも兜博士(※マジ〇ガーZの開発者)かよ!? ソリア親方ァ!!」
俺が頭を抱えて叫ぶと、ソリア親方は麦わら帽子を斜めに被り直し、自慢げに鼻を鳴らした。
「いやー、陛下。そりゃあ普通の材料じゃ無理でやすよ? 縦帆の強烈な風圧を逃がしたり支えたりするにゃあ、帆柱もロープも異次元の強度が要りやすからね。……ですがね、陛下に作ってもらった金属旋盤とノギスのおかげで、信じられないくらい頑丈で摩擦ゼロの『鉄製滑車』ができちまいやした。……それに何より、タワンティンスーユの繊維技術が、ちょっとぶっ飛んでやすんで!」
「……え、繊維技術?」
「そうでやすよ! インカの植物から作る紐ってなぁ、鋼鉄のワイヤー並みに引張強度が強い上に、しなやかだ! あっし、その極上のロープでマストを四方からガチガチに補強して、滑車を組み合わせたら、あっさり風圧をクリアしちまいやした!」
俺はガクガクと膝を震わせた。
そうだった……インカ帝国は、巨大な渓谷に「植物の繊維を編んだロープだけ」で何十メートルもの吊り橋(インカの吊り橋)を架け、何トンもの石材や軍隊を通していた「超絶ロープ・繊維チート文明」だ。そこに、俺がもたらした精密鉄工(ノギス&旋盤)の滑車が融合してしまった。
「200年は先のテクノロジーレベルだぞ、これ……。風上に逆らって爆走するキャラベル船とか、もはやただの現代ヨットじゃねえか……」
「へへ、風がどっちから吹こうが関係ねぇ、海の韋駄天でやす!」
ソリア親方が大笑いする横から、新しく鹵獲した本物の眼鏡をキラーン!と光らせたワスカルが、すかさずキープ(国家統計)を広げて割り込んできた。
「素晴らしい。風向きを無視して航海できる船ですか。兄上、これならばパナマのスペイン軍だけでなく、太平洋を横断してアジアや欧州へ、我が国のニナン・ウイスキーと鉄製品をマッハで直輸出し、世界の経済覇権をキラーンと強奪できますね」
「内政官房長官のビジョンがもう完全に世界征服のそれなんだよなぁ!」
「ガハハ! 逆風を切り裂く船の帆! まさに我が筋肉の突撃そのもの! 兄上、そのマストに俺の青銅砲……いや、ソリアの鉄砲を限界まで積みまくりましょう!」
雷鳴将軍アタワルパが、筋肉をパキパキに鳴らしながら大砲の増設を要求して咆哮する。
「まぁ……! どんな逆風(障害)があっても、正面から突き進むバミューダ帆だなんて……まさに毎晩、わたくし達の包囲網(槍衾)を強引に突破してくる、兄様の激しい『夜の突撃』そのものですわぁ♡」
クシリマイが興奮で上気した褐色巨乳を俺の顔面に全力で密着させてくる。
「陛下、逆風でも推進力を生み出すバミューダ帆の空気力学……非常に興味深い。今夜もベッドの上で、私と正妃様が放つ凄まじい『夜の向かい風(愛のプレッシャー)』に対し、陛下の長槍がどれほどの推進力を維持できるか、徹底的に臨床実験させていただきます」
キリヤが白衣をはだけさせ、スレンダーな褐色美脚を俺の足に絡めながら妖しく囁いた。
「ウフフ、ボクもこの船みたいに風上に回りこんで、陛下を絶対に逃げられないようにしちゃいます♡」
フェリちゃんまでドレスの裾を翻して迫ってくる。
「ちょっと待って!! 200年先のバミューダ帆はクリアできても、俺の腰のライフゲージは今夜一発で海の藻屑になっちゃうからァァァーーー!!」
精密工作機械とインカ伝統の繊維チートが奇跡の融合を果たし、16世紀にして近代的なスクーナー船を誕生させてしまったニナン皇帝。
世界最強の海洋大国へのロードマップは完全に完成したが、今夜もまた、逆風などお構いなしに全方位から大突撃してくる嫁たちの「肉体の荒波」の中に、翻弄され尽くす運命なのだった。




