第23話 ぎゅるぎゅると締め付けるアレ
「親方、製鉄の次は加工だ。実は前世の世界には『金属旋盤』とか『中ぐり盤』っていう、金属を回転させて削ったり、筒の内側をめちゃくちゃ綺麗にくり抜いたりする機械(工作機械)があってだな……」
俺は高炉計画のついでに、一気に近代工業の基礎をハックしようとソリア親方に熱弁を振るっていた。だが、ソリアは煤のついた顔をポリポリと掻きながら、いまいちピンときていない様子だ。
「はぁ……金属の轆轤みたいな物でやすか。陛下、あっしはあくまで船大工でやすからねぇ。そんな鉄を削る大掛かりな機械が、一体船の何に役立つんで?(船絡みじゃないので関心低め)」
職人というのは、自分の専門外のことには腰が重い。特に船の木工が本職のソリアにとって、精密な鉄工機械は遠い世界の話に見えるのだろう。
だが、俺はニヤリと笑って、船大工の脳髄にダイレクトに刺さる「キラーワード」をぶっ放した。
「親方、これがあればな……『めちゃくちゃ高性能で、摩擦ゼロで回るロープ用の金属滑車』が作れるんだよ。それも大量にな」
「……へっ!?」
ソリアの目の色が一瞬で変わった。
大航海時代のガレオン船において、巨大な帆を動かす「滑車」の性能は、船の操作性と速度を左右する命綱だ。木製の滑車はすぐに摩耗するし、摩擦でロープが焦げることもある。それが、精密に削り出された頑丈な青銅製になる。それだけで造船界に革命が起きるのだ。
「青銅の、高性能な滑車……! す、すいやせん陛下、あっしが間違ってやした! そのせんばん(旋盤)とやら、今すぐやりやしょう! どんな構造でやすか!?」
食いついた! さすがチート船大工、船のことになると喰い付き方が尋常じゃない。
俺はさらに畳みかけるように、ラマ皮紙にサラサラと精密な概略図を描いて見せた。
「あと、もう一つ重要な道具がある。これだ。『副尺付きノギス』っていう測定工具だ」
「のぎす……? なんでやす、この目盛りが二重になってる妙な定規は」
「これを使えばな、職人の『長年の勘』や『大体これくらい』っていう目分量じゃなく、0.1ミリ単位の狂いもない『絶対的な数値』で長さを測れる。このノギスで徹底的に精度管理をすれば、親方のような超一流の技を持たない並の職人でも、寸分の狂いもない最高精度の滑車や部品が、工場のラインで山のように量産できるようになるんだよ!」
「!!!!」
ソリアはガタタッ! と椅子を蹴立てて立ち上がった。その目は、もはや神の啓示を受けた預言者のように血走っている。
「0.1の狂いもない測定……!? それを並の職人が量産……!? 陛下、そいつは『魔法の定規』じゃねぇですか!! それがあれば、船のキール(竜骨)も、マストを固定する金具も、全部が寸分違わず噛み合う極上の船が造れる……! やりやしょう、今すぐそのノギスとやらを銀細工職人に造らせやしょう!!」
「フッ、素晴らしい。ついに職人の勘が、数値の管理へとキラーンとアップデートされるわけですね」
背後から、本物の眼鏡を指先で押し上げたワスカルが、邪悪かつ知的な笑みを浮かべて現れた。
「兄上、その『のぎす規格』を我が国のウラコ(技術者集団)の公式標準単位と定めます。これで国中の建築、武器製造の精度が爆発的に跳ね上がります(眼鏡キラーン)」
「ガハハ! 兄上! 0.1ミリの狂いもない鉄の大砲か! 筋肉の締まり具合と同じくらい精密な兵器、胸が熱くなるぞ!」
アタワルパも大砲の銃身を撫で回しながらマッハスクワットで共鳴している。
「まぁ! 0.1ミリ単位の精密な測定だなんて素敵ですわ兄様! さっそく今夜、兄様のその『長槍』の長さと硬度を、わたくしの体を使ってミリ単位で精密にノギス(ホールド)して差し上げますわぁん♡」
クシリマイが興奮のあまり、汗ばんだ褐色巨乳で俺の顔面をギチギチに測定(圧殺)しにくる。
「陛下、その副尺の概念、夜の『生殖的ピストン運動のストローク管理』にも応用可能です。今夜は私と正妃様で、陛下のピストン精度を0.01ミリ単位で厳格に管理(臨床実験)させていただきます」
キリヤも白衣の隙間からしなやかなスレンダーボディを密着させ、妖しく瞳を光らせた。
「ウフフ、ボクもノギスで測れないような、ディープな隙間の測定、手伝っちゃいます♡」
フェリちゃんまでドレスをたくし上げて参戦。
「ちょっと待って!! 0.01ミリ単位で搾り取られたら、俺の腰のライフがミクロの塵になっちゃうからーーー!! 工業の精度は上げても、夜の密度はこれ以上は上げないでーーー!!」
チート船大工ソリアの職人魂に見事に火をつけ、金属旋盤とノギスによる「精密工業化(文明ハック)」の扉を開いたニナン皇帝。
インカ帝国はついに、世界で最も正確なモノづくりを行う超大国への第一歩を踏み出したが、今夜もまた、嫁たちの寸分の狂いもない精密な包囲網(槍衾)の中で、骨の髄まで測定・開発される運命なのだった。




