22話 熱くそそり勃つアレ
「さすがに、一足飛びに『高炉』での連続精錬ってわけにはいかないか、カタロニア炉(原始的な塊鉄炉)だもんなぁ……」
ソリア親方の用意した粘土製の小さな炉を見ながら、俺が前世の記憶をもとにポツリと呟いた。すると、ソリアが黒曜石の火吹き竹を落とさんばかりに目を見開いた。
「こ、高炉!? 陛下、今なんとおっしゃいやした!? 高炉ってのは、一体何でやすか!?」
「え? いや、鉄鉱石と燃料を上からドバドバ継ぎ足して、下から常時クソ熱い風を送り続けて、ドロドロに溶けた鉄を24時間ノンストップで流し出す、悪魔みたいな巨大精錬施設のことだけど……」
俺が現代知識の引き出しから「高炉」の構造と、それによって生み出される圧倒的な鉄の生産量を説明すると、ソリアは感動のあまり持っていた鉄鉗をガタガタと震わせた。
「お、恐ろしい御方だ……! 鍛冶屋のジジイが酒の席で夢みたいに語ってた『理想の炉』の構造を、図面レベルで理解していらっしゃる……! 陛下、それがあれば、釘どころか橋だって鉄で造れやすぜ!」
「ほう……橋を、鉄で」
その言葉に、部屋の隅の影から凄まじいプレッシャーと共に歩み出てきた男がいた。
ワスカルである。
ワスカルは指先で眼鏡のブリッジをクイッと上げ、過去最高の光量でキラーン!!と閃かせた。
「高炉……大量の高品質な鉄を安定して生み出すシステムですか。素晴らしい。それには膨大な燃料と人員が必要と? ――フッ、ならばそれは『国家事業』ですな」
謀略の天才の目が、完全に巨大コンツェルンのCEOのそれに変わっている。
「兄上。あなたが以前おっしゃっていた、欧州で使われている『石炭』とやらは、残念ながら我が国の版図からはまだ見つかっておりません。……ですが、我が国にはタワンティンスーユ最強の労働寄進制『ミタ制』があります。直ちに人員を動員し、北部の森林地帯から大量の木炭を製造・輸送させましょう。さらに、将来的な燃料枯渇を防ぐため、伐採跡地への計画的植林事業も今月からキープ(国家計画)に組み込みます」
「謀略(マフィア系)から、ガチの国家予算と環境内政を牛耳る超有能官房長官に進化しとるゥゥゥ!!」
まさかインカ帝国で、16世紀の段階でサステナブルな計画植林による重工業化計画が立ち上がるとは思わなかった。ワスカル、眼鏡を手に入れてから有能さのキレが限界突破している。
「素晴らしいぞワスカル! 鉄の大砲が量産されれば、俺の筋肉の咆哮が世界の果てまで届くというもの!」
アタワルパが興奮のあまり、ソリアの粘土炉をラリアットで粉砕しそうな勢いでマッハスクワットを始めた。
「まあまあ、皆様お熱いですこと。でも、鉄をドロドロに溶かす『高炉』よりも熱いのは、今夜の兄様とわたくしのベッドの上ですわよねぇ♡」
クシリマイが汗ばんだ褐色巨乳で俺の視界を「銑鉄」ならぬ「肉肉」で埋め尽くしにくる。
「陛下、高炉の温度管理(熱力学)は、夜の『生殖活動における代謝の上昇』と非常によく似ています。今夜はクシリマイ様と私で、陛下を上下から挟み込んで1000度まで加熱させていただきますね」
キリヤも白衣の隙間からしなやかな褐色スレンダーボディを滑り込ませ、俺の耳元でハスキーに囁いた。
「ウフフ、ボクも高炉のふいご役として、下からたっぷり風(吐息)を送り込んじゃいます♡」
フェリちゃんまでドレスを翻して参戦。
「ちょっと待って!! 燃料(俺の体力)の補給が追いつかない無計画伐採はやめて!! 森林資源より先に俺の精力が不毛の荒れ地になっちゃうからーーー!!」
チート船大工の技術と、眼鏡ワスカルの国家総動員内政により、インカ帝国はついに「鉄器時代への超跳躍」を確定させた。
世界最強の鉄鋼・大砲帝国への道を驀進するニナン皇帝だが、今夜もまた、嫁たちの熱すぎる高炉の中で、激しく精錬(搾取)される運命なのだった。




