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第17話 ザ・面接!

第17話 ザ・面接!

「おお! アルマグロ殿! 我がタワンティンスーユ帝国でクラカ(豪族)にならないか? 弊社は……じゃなくて、我が国は君のマネジメント能力とロジスティクスの力を切実に必要としているんだ!」

捕虜収容所の天幕で、俺はアルマグロの手をガシッと握りしめて熱烈なリクルートを敢行した。現代のブラック企業戦士の記憶が完全にノリとして溢れ出ているが、気にしてはいけない。

「へ、弊社……? いや、それよりインカの最高財務顧問だけでなく、領地持ちのクラカのポストまで約束してくれるというのか……!? 最愛のバデンタとディエゴJr.も中央豪族として迎えてくれると……? うぅ、ピサロのケチ野郎の元で馬車馬のように兵站を回させられていた日々が馬鹿らしくなってくるな……」 アルマグロが感動のあまり涙ぐむ。そりゃそうだ、ブラック遠征軍の副社長から、ホワイト急成長国家の取締役へのヘッドハンティングである。

「ちょっと待てニナン! あとアルマグロお前もだ!! 弊社って何だよ! そもそも俺たちを破滅に追い込んだ挙句、敵の副将を音速で引き抜くなんて、どんなあくどい経営陣(?)だ貴様ら!」 ベッドの上で腹に大量の包帯(キリヤによる超絶技巧ステッチ済)を巻いたフランシスコ・ピサロが、点滴の銀針を震わせながら猛抗議のツッコミを入れてきた。

「フッ、キラーン! 敗戦の将は黙っていなさい。アルマグロ殿の我が国への移籍に伴う、敵方の兵站瓦解および我が国の生産性向上率、算盤の計算通り音速で黒字化達成です」 ワスカルがピアスを輝かせながら、移籍契約書(紙)をアルマグロの前にスッと差し出す。

「応! アルマグロ、お前が仕切る兵站があれば、俺の青銅砲部隊の火薬と藁玉がいつでも前線に届くってわけだな! 歓迎するぞ!」 アタワルパが青銅の棍棒をドンと叩いてガハハと笑う。もはやスペイン遠征軍の完全吸収合併は秒読み段階だった。

「おう、お前たちがオレリャーナ、ドミンゴ、バルバハル……じゃなくてカルバハルだな! 待ってたぞ、我が帝国のチートエンジニア&探検班の諸君!」 アルマグロの「弊社」移籍に続き、俺は捕虜の中からお目当ての超A級チート人材3人組を音速で呼び出した。

「な、何故俺たちの名前と専門分野を……!?」 大探検家のオレリャーナが驚愕し、チート船大工のドミンゴとチート宣教師のカルバハルが顔を見合わせる。 「フッ、キラーン! 我が兄上サパ・イン・インカの脳内データベースに狂いはありません。お前たちには我が帝国の『アマゾン川流域開発・超近代化造船プロジェクト』の最高責任者として、終身雇用と莫大な予算を約束します。紙の契約書はこちらです」 ワスカルが算盤をパチパチと超高速で叩きながら、すでにケチュア語とスペイン語で併記された完璧な労働契約書を提示する。鉄の錬成は粗鉄レベルで大苦戦中だが、このチート職人組が加われば、青銅補強パーツと硫化ゴムをふんだんに使った「インカ式ハイブリッド超快速船」が数年以内にアマゾン川を制覇するのは確実だ。

「す、素晴らしい条件だ……! ピサロのブラックなワンマン経営に付き合うより、こちらの『ニナン新皇帝テクノロジー社』に就職した方が遥かに未来がある!」 オレリャーナたちが歓喜の涙を流して握手を求めてくる。これでアマゾン開拓ルートも完全掌握だ!

「ふふ、さすがはお社長(陛下)。有能な男たちを音速で籠絡される手腕、ゾクゾクしちゃいますわ……!」 その横で、フリルドレスの裾を揺らしながらウインクを投げてきたのは、今や完全に「男の娘」枠として覚醒したフェリピージョ、改め『フェリちゃん』である。ピサロ兄弟の歪んだ愛から解放され、俺の完全監視下(※ただし給料は倍)に置かれた結果、完全に宮廷のジェンダーレスアイドルとしての地位を確立しつつあった。 「ボク、お陛下のためなら、異人どものどんな外交機密も可愛くチュルッと吸い上げちゃいますからねっ☆」 「お、おう、ありがとな(可愛いけど性別は男なんだよな、脳がバグる……)」


「お、おい! 待ってくれニナン新皇帝陛下! アルマグロやオレリャーナたちがあれだけ優遇されるなら、俺も……俺もこのインカ帝国でクラカ(豪族)の地位に就かせてほしい! 黄金の国で貴族になれるなら、ピサロの名を捨ててでも骨を埋める覚悟だ!」

ベッドの上で頭にぐるぐる巻きの包帯(キリヤによる「失敗しませんので」医療チート済)を巻いたフランシスコ・ピサロの弟、エルナンド・ピサロが、必死の形相で手を差し出してきた。 だが、俺は前世の記憶から知っている。この男、史実ではフランシスコ・ピサロ死後にスペインへ戻ってインカの黄金を王室に献上し、様々な宮廷陰謀を巡らせたなかなかの野心家だ。微妙に爆弾な男を我が国の経営陣に引き入れるのはリスキー。

俺はすっと背筋を伸ばし、前世の就職活動で何十通と手渡されたあの「不採用通知」のオーラを全身から放ちながら、ビジネススマイルを浮かべたかべた。

「エルナンド・ピサロ殿。この度は我が帝国の求人へご応募いただき、誠にありがとうございました。慎重に選考を重ねました結果、まことに残念ですが、今回はご希望に添えない結果となりました。貴公の今後のご健勝と、今後の活躍を心よりお祈り申し上げ――」

「何そのフレーズ!? なんで丁寧なはずなのに、精神的にガツンとくる見えない壁!?痛い、頭の傷が疼く!」 エルナンドが未体験の「お祈りメール」の精神的破壊力に頭の傷を抱えてのたうち回る。

「フッ、キラーン! 兄上、不採用通知の音速執行、見事です。彼の野心補正を考慮すると組織の運営リスクが跳ね上がりますからね」 ワスカルがピアスを冷徹に光らせてラマ皮紙の書類に

何故か持っている不採用の特大ハンコをドンと押す。

「あ、でもね」と、俺はベッドの横で死んだ魚の目をしている長兄フランシスコ・ピサロたちのほうを振り返った。 「君らピサロ兄弟には、アルマグロ殿やチート職人組、そしてフェリちゃんを引き抜かせてくれた『スカウト仲介料』としてさ、この『部屋一杯の銀』をあげるから。これで手打ちにしてよ」

「……んん!? 何か聞いたことある量だな!!」


※史実ではピサロは捕縛したインカ皇帝(史実ではアタワルパ)を助命する条件に部屋一杯の黄金と部屋二杯の銀を手に入れる。尚、史実ではその後皇帝は約束を反古にして処刑される。


「ガハハハ! 異人ども、兄上の慈悲に感謝して大人しく銀を担いで帰るんだな!」 雷鳴将軍アタワルパが青銅砲の火薬を詰め直しながら豪快に笑うのだった。

ナレ死の一行から始まった俺の転生人生。気がつけば天然痘を克服し、大砲と超長槍でスペイン軍を圧倒し、新世界最高峰の有能人材をスカウトして、世界の一大強国へと駆け上がる準備は整った。

――残る問題は、強すぎる嫁たちの包囲網的な槍衾から、俺の腰がいつまで亡国を逃れ生き残れるか、それだけだった。




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