第16話 ドクターI(インカ)「私、失敗しませんので」
「騎兵突撃! 異教徒どもを神の御名のもとに制圧せよ………ぎゃあああああ!?」
ピサロが剣を振り上げた瞬間、アタワルパ率いる『太陽の怒り(青銅砲)』が一斉に火を噴き、超長槍の壁がスペイン騎兵を文字通り「ハメ殺し」にしていった。
戦いは一瞬で決した。歴史の教科書とは真逆の、インカ帝国による完全なる一方的ワンサイドゲームである。
硝煙が晴れた広場には、突撃しようとして返り討ちに遭い、揃って重傷を負いボロ雑巾のように転がっているピサロ四兄弟の姿があった。
「あ、陛下。ピサロ、未だ息がありますね」
アルパカ織の白衣を着たキリヤが、長身スレンダーな体を屈めてフランシスコ・ピサロの容態を検分した。
「う、うあぁ……腹を裂かれ、腸が出ている……。手当など無駄だ……。一思いに……とどめを、刺して……くれ……」
全盛期の野望を粉砕され、己のハラワタを見つめながら絶望するピサロ。
この時代のスペインの常識では腹部重傷は致命的だ。傷を塞いでも腹膜炎で悶死するのが常識である。
しかし、キリヤの知的な褐色美肌の瞳は、獲物を見つけたマッドサイエンティストのごとくギラリと輝いた。
「素晴らしい。陛下に教わった『アレ』を試すのに、これ以上ない最高の人体実験の素材……おっと失礼、救命行為の対象ですね。よし、直ちにオペを始めます!コーンウイスキーによる消毒 ! 腹腔洗浄!縫合! そしてと銀針での輸液(点滴)です!」
「ヒ、ヒエッ……!」
ピサロの悲鳴を無視し、キリヤは手際よく職人に作らせた銀の中空針をピサロの静脈に突き刺し、蒸留器で作った生理食塩水を注入。さらに、はみ出た腸&腹腔を生理食塩水でシャバシャバと豪快に腹腔洗浄し、アルパカの特製糸で瞬く間に縫い合わせてお腹を閉じた。
結果。征服者フランシスコ・ピサロ、まさかの奇跡的生還。
(なお、三男のゴンサロ・ピサロは、アタワルパの放った大砲の直撃をモロに食らったたため、即死状態だった。南無)。
一方、次男のフェルナンドと四男のファンは、大砲の破片が頭部に直撃し、頭蓋骨が陥没していた。
「よし、次は頭部ですね。助手をおねがい、貴方達」
「はいっ! バッチリ骨を固定しますね!」
看護師役の侍祭達を指示しキリヤは慣れた手つきで伝統の黒曜石のメスを握り、二人の頭皮をノリノリで切開していく。
「頭部外科手術なら、私、失敗しませんので(ドク○ーX風にキリリ)」
見ていたワスカルが片眼鏡風ピアスをキラーンとさせ「さすが我が国のチート嫁(医療担当)、お見事な手際です」と感心している。
「ぶっちゃけタワンティンスーユ(インカ)なら、頭に穴開ける手術は別に不思議じゃないんだよね。元々そこだけナチュラルチートな文明だったから」
案の定、頭の圧力を抜く穿頭術を施されたフェルナンドとファンも、数日後には「ハ、ハレルヤ……」と呟きながら無事に目を覚ました。
「 何故我らを助けた……!?」
ベッドの上で包帯ぐるぐる巻きにされながらも、聞いてくるフランシスコ・ピサロ。その腕にはバッチリと点滴のゴム管が繋がっている。
「フッ、命を救われておいて威勢がいいですね。ピサロ殿、あなた方の身柄と残った兵力は、すべて我が国のスカウト枠として再利用させていただきます。もちろん、アルマグロ殿の兵站チームともすでに業務提携の契約を結びました」
ワスカルが眼鏡風ピアスを過去最高に邪悪にキラーンと輝かせ、ピサロの目の前で奴隷契約書っぽい紐をギチギチに結んだ。
「さあ兄様! 宿敵もサクッと片付きましたし、今夜こそフェリピージョちゃんも交えた『カハマルカ戦勝記念・朝までタワンティンスユ(四方世界)4P大車輪』の幕開けですよぉ!」
クシリマイが汗ばんだ褐色巨乳を俺の顔面に全力で押し当ててくる。
「陛下、ピサロ兄弟の術後経過のサンプリングと並行して、私の『夜の臨床実験』のデータもそろそろ限界値です。さあ、シーツの海へ突撃を」
キリヤも白衣を脱ぎ捨て、スレンダーな肢体をくねらせて迫ってきた。
「待って! スペイン軍には完全勝利したのに、俺の精力のライフゲージがガチで風前の灯火なんですけどォォォォ! 誰か一思いにとどめを刺してくれーーーハレルヤーー!!」
ナレ死を回避し、ピサロ兄弟すら医療チートで生け捕りにした最高皇帝ニナン。
しかし、迫り来る嫁ハーレムのカオスな大突撃からは、科学の力をもってしても逃げ切ることはできないのだった。




