第15話 カハマルカの男の娘通訳
史実ではフランシスコ・ピサロは、約168人の兵士(内騎兵は約60騎)数門の小型砲、少数の火縄銃・クロスボウ装備という非常に少ない兵力でカハマルカに到着しました。スペイン側から、ドミニコ会修道士のビセンテ・デ・バルベルデが通訳フェリピジョと共に進み出て、キリスト教を受け入れることとスペイン王への服従を求めます。ここで彼は聖書(祈祷書との説もあり)をアタワルパに手渡した、というのが有名な逸話です。神父がフェリピジョを通じ「この本に神の言葉がある」と説明。アタワルパは本を耳に当てたり開いたりするも「何も話さないではないか」と言って投げ捨て、ピサロは不敬を理由に騎馬突撃と砲撃を開始したと言われています。
カハマルカの広場。史実では、ここでアタワルパが聖書を投げ捨て、それを口実にピサロ一味が騙し討ちの大虐殺を開始した、運命の地である。
だが、現在のカハマルカ広場を埋め尽くしているのは、完全に「轟音への免疫」を獲得した戦士団と、斜面にずらりと並んだアタワルパ率いる『太陽の怒り(青銅砲)』部隊。そして、敵の重装騎兵をハサミ殺す気満々の超長槍の壁であった。
そんな圧倒的威圧感の中、スペイン側の宣教師(バルベルデ神父)が、明らかにビビりながら俺に一冊の分厚い本を差し出してきた。
「こ、これを……神の言葉が記された聖なる書物です……」
最高皇帝としてそれを受け取った俺は、パラパラとページをめくりながら深いため息をついた。
「う〜む……キリスト教ねぇ。キリスト教と言えば『神の前の貞節』と『一夫一妻制』だよな。褐色巨乳の実妹嫁と、長身スレンダーな元医療神官嫁に毎晩交互に寄り切られている現代人の俺としては、実に心が痛いというか、シンプルに説教されてる気分になるわ……」
「あ~ら、皇帝陛下。その心配は一ミリも要りませんよぉ?」
バルベルデ神父の後ろから、やたらと艶っぽい、だが少し低めのハスキーな声が響いた。
見ると、そこにいたのは現地人通訳のフェリペ(フェリピリョ)だった。
なぜか彼は、ひらひらとしたスペイン娘風のドレスを着こなした、凄まじいクオリティの『女装美少年』に変貌していた。
「おいフェリペ、なんでお前そんな格好してんの?」
「フェリピージョって呼んでください♡……っていうか陛下、あいつらレコンキスタドールなんて、神の教えを都合よく解釈して男女不問のレイプ、略奪婚、現地での一夫多妻なんて上等な、欲望の塊のゴロツキ集団ですからね? ボクだって少年時代にピサロ兄弟に捕まってから、その……色々され捲って、今ではすっかり性自認がカオスな状態にされちゃったんですから……(物憂げに微笑む)」
「うわぁ……。ドン引きだよピサロ兄弟……」
俺は思わず遠い目で、広場の向こうで今まさに奇襲の合図を出そうとニヤついているピサロを見つめた。
あいつら、自分たちはやりたい放題のくせに、こっちが聖書を粗末に扱ったら「不敬な異教徒め!」ってキレて大虐殺する気だったのか。確信犯のダブルスタンダードはさすがにちょっと付き合いきれない。
「よし、決めた。こんな説得力ゼロの『神の言葉」は、お返しします」
俺はバルベルデ神父に向かって、聖書を突き返した。
その瞬間。聖書が風に煽られ、パサパサとページがめくれて神父の眼前にあるページが開かれる。偶然か、それとも太陽神インティの悪戯か。開いたページには、キリスト教の聖書の中でもトップクラスに倫理観がぶっ飛んでいることで有名な【ロトと娘たち(※父娘の近親相姦)】のエピソードの挿絵がバッチリと描かれていた。
バルベルデ「ひえっ……!?(実妹婚推奨のインカの王族の前で、よりによってこのページが開くだなんて……神の啓示か!?)」
バルベルデ神父は顔面蒼白になり、ロトのページに激しい精神的ダメージを受けてその場に崩れ落ちた。
「兄上! 聖書が返却されました! つまり交渉決裂、今こそ我らの筋肉を証明する時ですね!?」
本陣の後方から、大砲の導火線を握りしめた『雷鳴将軍』アタワルパが、待ちきれないといった様子で雄叫びをあげる。
「フフフ、異国の哀れなアルパカどもめ。これより我が謀略と大砲の前に、泣いてひれ伏すがいい!」
安全の為後方に控えているクシリマイから声が飛ぶ「さあ兄様、あんなダブスタ男たちはサクッと大砲で吹き飛ばして、今夜はクシリマイとフェリピージョちゃんも交えて、新しい『国際交流(三部練)』を始めましょう!」
「陛下、性自認が曖昧な個体の医学的データも非常に興味深いですね。私も混ざります」
「待って!? 敵を全滅させる前に、俺の倫理観と腰が完全にオーバーキルされるカウントダウンが始まってるんだけど!?」
歴史の教科書が完全に崩壊したカハマルカの地で、新生インカ帝国vsスペイン侵略軍の、一方通行すぎる大決戦の火蓋が切って落とされた!
尚、史実の通訳フェリペが男の娘だったと言う記録は一切ありません。しかし、洗礼名はフェリペだったが“可愛いフェリペ“を意味するような“フェリピジョ“と呼ばれていたそうで、その事に着想を得た捏造です。




