第14話 スペイン軍、人材ハック会議
「いよいよか……。歴史の分岐点、カハマルカの対峙が近づいてきたな」
俺はクスコの作戦室で、アンデス山脈の立体模型を見つめながら呟いた。
天然痘を叩き潰し、大砲と超長槍(槍衾)を配備した我が軍の戦闘力はすでにカンスト状態。だが、ただ敵を殲滅するだけじゃ能がない。前世の知識を持つ俺としては、ピサロ一味の中にいる「超一級のガチ有能人材」を美味しくヘッドハンティングしたいのだ。
「ワスカル、アタワルパ、よく聞け。これから沿岸部に現れる白い異人の群れの中に、何としても生け捕りにして我が国に引き入れたいチート人材がいる」
俺の言葉に、ワスカルが眼鏡風ピアスを不敵にキラーンと輝かせた。
「ほう、兄上がそこまで評価する異人ですか。キープの名簿に記録しますので、特徴を」
「まず一人目は、ディエゴ・デ・アルマグロだ。あいつはピサロの相棒だが、チブチャ人の妻……こっちの世界じゃアナ・マルティネスとか呼ばれてるな――と、その間に生まれた混血の息子ディエゴ・ジュニアをめちゃくちゃ大事にしてる愛妻家で子煩悩な男だ。そして何より、ピサロの無茶苦茶な遠征を裏で支えた、兵站の超天才だ!」
「なるほど。我が国のインカ道とニナン・カートの物流網にその男を組み込めば、さらに効率化できますね(キラーン)」
「二人目は、フランシスコ・デ・オレリャーナ。後にアマゾン川を横断する予定のチート探検家だ。そして、三人目。その部下にいるドミンゴ・デ・ソリアというチート船大工はジャングルのド真ん中で数千キロの川下りを熟す船を建造したチート・マイスターだ。あと四人目、ガスパール・デ・カルバハルというチート通訳宣教師。こいつはボディーランゲージと表情読み取りだけでアマゾンの現地民達から食料調達の交渉を纏めまくった史実がある。このオレリャーナ一派はセットで欲しい。我が国に欠けている様々なノウハウを、彼らの知識で一気にハックする!」
「素晴らしい! 我が筋肉の届かぬ海をも支配する知恵ですね!」
アタワルパが青銅砲を抱きしめながら鼻息を荒くする。
「あ、それと、ピサロの通訳をやってる現地人のフェリペって男も、今のうちにこっちで身柄を確保して監視下に置いとけ。あいつは史実だと、勝手な通訳の捏造とか女問題でろくでもない陰謀をやらかして内戦を煽るトラブルメーカーだからな。スカウトという名目で軟禁して監視下に置いてやれ」
「フッ、陰謀の芽を事前に摘む仕事ですか。私の最も得意とするところです」
ワスカルのピアスが、冷酷な光を伴ってキラーン!と激しく明滅した。フェリペ、お前がワスカルの拷問(じゃなくて尋問)に耐えられることを祈る。
「さすがはお兄様! 敵の男たちまで身も心もハメて(籠絡して)しまうなんて、まさに絶対君主ですぅ!」
「陛下、その異国の女性たちや混血の子供たちのケア、そしてスカウトした人材のメンタル管理は、私と正妃様にお任せください。」艶然と微笑むキリヤ。「もちろん今夜のわたくし達の『緊密な外交交渉』のベッドメイキングも済ませてあります」
「クシリマイもキリヤも、異国の荒くれ者たちをスカウトする話をしてる時に、なんで即座に夜のハーレム外交に繋げようとするのかなぁ!?」
こうして、ピサロ一味を迎え撃つ準備は整った。
天然痘による人口大激減ルートを回避し、最新の銃砲火器と超長槍を揃え、さらに敵の超有能スタッフを引き抜く気満々の新生インカ帝国。
何も知らずに「金ピカの野蛮人どもを騙し討ちしてやるぜ」とやってくるピサロ一味が、カハマルカでどんな絶望顔を見せるのか、今から楽しみで仕方がなかった。




