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第13話 真昼の槍襖(やりぶすま)大作戦(非・意味深)

軍事会議の間、俺が前世の記憶から引き出した「スペイン重装騎兵突撃」の恐ろしさを語ると、イリャパ・アプこと雷鳴将軍アタワルパが、愛用のバズーカ砲型携帯青銅砲を抱きしめたまま目を見開いた。「な、何ですかそれは!? 巨大なリャマに跨った白い異人が、そのまま鉄の槍で突撃してくるだと!?」

「そうだ。奴らの乗る『馬』ってのは、こっちのリャマとは桁違いにデカくて速い。時速40キロ以上でガチガチの鉄甲冑を着た人間が突入してくるんだぞ? 物理的な破壊力は、お前のラリアットより上だ」

「俺の筋肉より上が……この世に……!?」

ショックを受けるアタワルパ。すかさずワスカルが眼鏡風ピアスをキラーンとさせて冷静に突っ込む。

「兄上、我が軍の青銅砲は威力こそ絶大ですが、一発撃つたびに弾と火薬を前から込めて……と、次弾発射までに時間がかかりすぎます。その隙に奴らの『めちゃ速い巨大ラマ兵』に間合いを詰められたら、砲兵は一瞬で全滅ですね」

「そう、そこなんだよ。だから大砲だけに頼るわけにはいかない。奴らの突撃を正面から完全にストップさせる力が必要だ。……そこでだ、アタワルパ」

俺はニヤリと不敵に笑い、あらかじめ用意させておいた新しい訓練計画書(キープ紐)を開いた。

「アタワルパ、今すぐ兵士たちに長さ4〜5メートルはある特製の『超長槍』を作らせろ。そして、直径2メートルくらいのデカくて重い藁玉わらだまを、山の斜面からゴロゴロと一斉に転がせ!」

「藁玉を……転がす? それが何の訓練に?」

「いいか、その勢いよく転がってくるデカい藁玉を、奴らの突撃馬だと見立てるんだ。兵士たち全員で超長槍の尻の石突をガチッと地面に固定して斜めに構え、密集して『槍衾やりぶすま』を作れ! その槍の壁で、転がってくる重い藁玉をビシッと一歩も退かずに止める特訓を死ぬほどやれ!!」

そう、中世ヨーロッパの最強騎兵を過去に何度も絶望させてきた対騎兵戦術、それがスイス傭兵や日本の戦国時代でも使われた「長槍密集陣形パイクスクエア」である! アンデスの急斜面を利用すれば、馬の突撃スピードを再現した最高の訓練ができるのだ。

「なるほど……! 速度と重量のある塊を、個々の筋肉ではなく、集団の槍の壁で受け止めて粉砕するのですね!」

アタワルパの目が野生の輝きを取り戻した。

「面白い! さっそくクスコの崖っぷちで毎日一万回、藁玉を槍でハサミ殺す特訓ワークアウトを開始します! 筋肉の団結力、白い異人に見せてくれるわぁぁぁ!」

アタワルパは嬉々として長槍部隊の編成へと走っていった。巨体に似合わぬ大型肉食獣みたいな敏捷な動作である。あいつ、相変わらず飲み込みと筋肉への変換が早くて助かる。

「兄上、またしても完璧なカウンター戦術ですね。これで敵の最大の武器である機動力も無効化です(キラーン)」

ワスカルが陰でほくそ笑む。

「さすがは我が旦那様! 昼は戦術の天才、夜はベッドの上での突撃(大車輪)の天才なんて、クシリマイもうキュンキュンが止まりません!」

「陛下、その『槍衾』の密集陣形……夜のベッドでも私と正妃様で陛下を挟み込めば、同じような強固なホールドが可能かと。ぜひ今夜、臨床実験を」

「クシリマイもキリヤもお願いだから軍事会議にエロい比喩を持ち込まないで!? 俺の長槍(意味深)が槍衾しちゃうから!!」

天然痘の抗体を獲得し、医療をハックし、大砲と超長槍によるガチガチの迎撃陣形を完成させつつある新生インカ帝国。

ピサロ一味の鉄砲玉どもが新大陸の沿岸に現れるその時、彼らを待っているのは、歴史の教科書とは似ても似つかない「長槍ハリネズミと大砲の要塞」と化したカオスなチート帝国だった。


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