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四話:入隊式の午後

 最後の人にまで武器が行き渡り、ようやく入隊式が終わった。

 今日は式だけで、すぐに帰宅する人もいたけど、ほとんどの人はそれぞれの武器を見せ合い、興奮した様子で語り合っている。


 私もまた、花弦を手に、美月と並んで歩いていた。


「天華の弓、めっちゃ綺麗だね! それに、剣にも変わるんでしょう?」


 美月が花弦をじっくりと眺めながら感嘆の声を上げた。


「うん。まだ慣れないから、試しに何度か使わないと実践では戸惑いそう」

「そっかぁ。でも、天華ならなんとかなりそう!私も負けないけどね!」


 そう言って美月は自分の武器を取り出した。


「私の武器はこれ、青牙槍(せいがそう)っていう槍なの!」


 美月が見せたのは一本の長い槍だった。


 槍の柄は深い青色で、ところどころに金色の装飾が施されている。


 刃の部分は銀色に輝き、角度によっては淡く、青白い光を帯びるように見えた。


「これもすごく綺麗ね。青牙槍にはどんな特性があるの?」

「これはね、水の霊紋の人と相性がよくて、一撃当てるごとに、刃が鋭く研ぎ澄まされていくらしい。まあ、外したら意味がないんだけどね」


 美月は槍を片手でくるくると回しながら説明した。


「なるほど……じゃあ攻撃が当たれば当たるほど強くなるのね」

「そう! だから、私の速さを活かせばすごく強くなれるはず!」


 美月は自身たっぷりに胸を張る。

 確かに、美月の俊敏さとこの槍の特性は相性が良さそうだ。


「明日はパートナー決めね……」

「はぁ……誰と一緒になるのかな。ちょっと緊張しちゃう!」


 美月は珍しく緊張しているようだ。誰とでも仲良くなれるタイプだから、あまり身構えなくてもいいと思うけど。


「さて、そろそろ帰りましょうか」

「うん! 私は帰ったら槍に慣れるまで挑戦してみようかな」

「私も慣れるまで扱わないと。軍で幸先の良いスタートを切るためにも、ね」


 美月と別れた後、私は花弦をしっかりと握りしめながら自宅へと足を運んだ。


 ◇


 屋敷の扉を開け、すぐそこで待っていたのは翠玲さんだった。


「翠玲さん! ただいま」

「おかえり、天華」


 翠玲さんは静かに微笑みながら私を見つめた。

 翠玲さんには、本当にお世話になっている。感謝しても仕切れないくらいに。


 あの日、お母さんは私を迎えに来てくれなかった。心のどこかでは、それを分かっていたけれど、やっぱり辛くて、悲しくて。


 親戚もほとんどいないし、頼れる大人なんて誰もいなかった。そんな時に、「私が預かります」と自ら名乗り出てくれたのが、翠玲さんだった。


 その後はトントン拍子で話が進んだ。

 何が何だかは覚えていないけど、翠玲さんの家は代々軍に優秀な人材を送り出してきた名家らしく、この立派なお屋敷で私は育てられた。


 翠玲さんのお母様、お父様も有名な方達だったそうだ。既にに亡くなっていて、私は会ったことは無いけれど。


 翠玲さんは本家の血筋? ではないみたいで、 屋敷には翠玲さん以外に使用人の方達しかいなかったけれど、私を温かく迎え入れてくれた。


「その背中の弓……いただいた武器ね?」

「うん、花弦っていう武器で……」


 私は弓を翠玲さんに見せ、そして剣へと変形させた。


「これは……」

「知っているの?」


 翠玲さんは一瞬、何か迷うような表情をした後、ゆっくりと口を開いた。


「ううん。ただ、とても古い武器みたいね」

「うん……そうなのかな」


 綺麗に手入れされているから、分からないけれど翠玲さんが言うのならそうなのだろう。


「それより、ご飯にしましょう」


 そう言って、歩き出す翠玲さん。明日はパートナー決め。誰となるのか、不安もあるけれど楽しみだ。

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