プロローグ
「ぐすっ……ひっ……おかあ、さんっ……!
たすけ、て……!!」
あの日は家族で、家から遠く離れた湖に花見をしに来ていた。美しい桜の木が咲いていて、花が好きな私は大喜び。
でも、楽しんでいた途中──突然、巨大なあやかしが現れ、私たちを襲ってきた。
さっきまで賑わっていた様子とは程遠く、叫び声や悲鳴が飛び交う。
私は必死に逃げたが転んでしまい、足が痛くて立ち上がれなかった。涙があふれ、周囲の景色がぼんやりとにじんでいく。
お母さんは妹を抱えて逃げ、私の事など気にもとめない。
──私はお父さんに似て、幼い頃から霊力適性が高かった。
お父さんがあやかしに殺されて、お母さんは次第にお父さんを思い出させる私と妹の扱いを変えるようになった。
でも今は嫌ってほど分かる。……お母さんは私が嫌いなんだって。
「っおかあ、さん……!」
心臓が脱兎がのように早く、息が浅くなる。恐怖で全身が震えた。二人姿はとっくに見えない。
……私は、見捨てられたんだ。
嫌われていても、好きだった。家族として。
私は、ただただどうしようもない絶望感と無力感に駆られた。
霧の中から大きなあやかしの影が見える。全身はねじれた手が巻きついており、頭のような部分には大きさの違う赤い目がこちらを睨みつけていた。
その大きな体で歩くたび、腐った卵のような匂いが鼻を突き、ぐちゃ、ぐちゃ、と鈍い音を響かせる。
何度も「助けて」 と叫んだつもりだったがその声は喉を通らない。
もうダメだ。
そう、あきらめたかけた時──突然鋭く空気を切り裂くような大きな音が響きわたり、あやかしの視線がそがれた。
「っ、きみっ! 大丈夫か!? 翠怜、その子を逃がしてやってくれ!」
「分かったわ。蓮人、気をつけて!」
突然現れたのは裂光軍の制服を着た男女2人。
深い藍色を基調としていて、男女ともに動きやすそうなズボン、スカート。
女の人は茶色がかった髪をゴムでまとめており、男の人は黒くさっぱりした髪で、特に目は力強い印象を与える。2人とも整った顔立ちだ。
女の人が、華奢な体に反して私を軽々と運んでくれた。
「ごめっ、なさい、足が痛くて……助けてくださいっ!!」
「大丈夫、あなたは何も悪くないわ。今、安全なところに連れていくから」
私は少し離れた建物の中で、息を整えようとした。
でも、心臓の鼓動はおさまらない。外ではまだ、戦いが続いている。
その時、翠玲──そう呼ばれていた女性が私の顔を覗き込んで優しく微笑んだ。
「大丈夫、もう怖くないわ。私たちが絶対倒すからそれまでここにいて」
──この日、私は初めて裂光軍に憧れた。
そして、この日が私の運命を大きく変えたきっかけだとは、この時はまだ知らなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
文章力は授業中なので、まだまだ未熟なところだらけですが、楽しんで読んでいただけたら幸いです!




