93_桜花動乱_アイボリー
シルバーベル、聖堂。
「状況がわからないわ! クラウンなんとかしてよ!」
「はいはい、わかりました」
クラウンは携帯端末を忙しく動かしてアイボリーに中指を立てている。
「そっちは理不尽だなぁ」
「慣れっこですよ。それより色々厄介なことになりました」
「聞かせてくれ」
「了解です天帝陛下」
「なんで私を無視するのよ!」
「面倒くさいし、聖女サマは戦う時まで待機しててください」
「それで、厄介っていうのは?」
「我々は獣桜組と取引をしていたのですが、どうやら獣桜組になりすました誰かと取引をしていたようです。用心していましたが獣桜組の内情に詳しいし、獣桜組所有の倉庫などにも出入りできていたので信用していました」
「その取引相手はどんなやつだった?」
「顔を隠してしましたしローブみたいなのをつけていたので輪郭すらおぼろげです。声も本当のものか、それとも変声機を通しているか怪しいものです」
「だとしたら獣桜組に恨みを持っている人間の犯行だな」
「あとヤマトでしたっけ、ひどくご執心のようでしたよ」
「ヤマトと接点があって獣桜組に恨みのある人間……」
「ヤマトってあの人食い虎でしょ、自作自演とかは?」
「クラウンだっけ? 馬鹿にしてるのか?」
「いやぁ可能性の話ですよ天帝陛下様」
「ヤマトがこんなこと出来るほど頭は良くねえ! あいつは筋金入りのバカだからな! 最近掛け算九九が言えるようになったんだぞ!」
「二十歳超えてましたよね……日本が終る前は中学生では」
「そうなんだよ。だからバカなんだよ」
「それは……はい」
「あとアイツが獣桜組に牙を剥くことはねえ」
「随分な自信ですね」
「あいつは椿宮師団の等級丙種を獣桜組の丙種じゃないなら不要だって蹴った男だからな」
「天帝陛下のご厚意を無碍にしたわけと」
「そんな奴がこんな事件を起こせると思うか?」
「掛け算九九言えない時点でお察しですね」
「だろ?」
「となると……さて……」
「ねえ、獣桜組とシルバーベル両方に内通者がいるんじゃない?」
アイボリーの一言で二人が硬直する。
「おい、クラウン」
「アンドロイド兵の配置と行動ログですね!」
「優秀だな。そりゃあナガトも毒殺されかけるな」
「殺しきれなかった嫌味ですか?」
「はは、ユーモアもあるな」
「というかそっちのお仲間殺そうとした奴によくもそんなヘラヘラしてますね」
「立場が変わればなんとやろさ、ナガトも言っていた。同じ立場なら同じ事をしていた的な事を」
「そうですか……ナガトにはあとで詫びないといけませんね」
「思った以上に律儀だな。サイコ野郎って聞いてたんだが」
「……ゲームとかやってるとき難易度が高ければ高いほど面白いんですよ。だから現実で人間を殺すのはとても難しいから殺してみたくて。でもわかったんですよ人間ってのは殺すより生かす方が難しいって」
クラウンはぼそぼそと返した。
「クラウン……あなた知らない間に良い子に」
「すげえ良い感じに言ってますがそこの女がナガトを殺すように指示してますからね」
「ヴッ……」
「まぁもう良いじゃないですか、NNEDに適合したし、ナガトがどう言おうとシルバーベルのポジションはかわりませんから」
「クーラーウーン!」
「お前らほんと仲いいな」
「というわでデータ送りましたよ」
「お、どれどれ……ビンゴじゃねえか」
「見事に我々の指示の裏を掻くようアンドロイド兵が配置されてますね。ナガトとメズキはたまたまルートを変えてばったりというのが可能性があります」
「やられたな……ん? これアンドロイド兵盗まれた数と合わねえ残り一台はどこに行ったんだ?」
「わかりません……スペアとして保管しているとか?」
「よくわからないけど、獣桜組に恨みがあるならエマを狙うんじゃないの?」
「あっ」
「あっ」
「なんでそこだけ鈍感なのよ……男ってホントに」
「直ぐに動ける奴がいるかわかるかクラウン?」
「天帝陛下、なんでかわからないですがセレネが動いています」
「あのCEO優秀じゃねえか」
「あ、ヤマト回収してエマのところに向っているみたいです」
「セレネ……気付いたのか……」
「そこはヤマトじゃないんですね」
「うん……ヤマトにそこまで信用できる頭はないかな……」
「それと、例の話ちゃんと考えて下さいね」
「わーってるよ……しかし裏があるとは言え余に初めて黒星を付けるなんてなぁ……」
(私、必要無いんじゃ……?)
「あ、こっちに生身の兵士が来ているそうです。装備からしてアメリカ……?」
「チッ、しっちゃかめっちゃかしやがってよぉ……」
「エイトボールが交戦するか悩んでいるそうです、国際問題に発展するおそれあり」
「もういい余が行く」
「私が行きましょうか?」
アイボリーの提案に天帝は目を細めた。




