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92_桜花動乱_ヤマト

 

 

 ヤマトは獣桜組に向って歩みを進める。

 

(さっきの砲撃……ヒクイだな)

 

 息が切れて、指先の感覚が無くなるほど足を酷使している。

 

「ヤマト! 見つけた!」

 

 蜘蛛のようなパワードスーツに身を包んだセレネが木々を飛び渡るように現われる。

 

「セレネか丁度いい頼みがある」

「何かしら?」

「獣桜組急ぎで行きたい」

「理由は聞けるかしら?」

 

 

(セレネがグル……その可能性は薄いが……万が一……)

 

「信じてくれ」

 

「OK! 格納庫に乗って!」

 

 セレネは二つ返事で返す。ヤマトは蜘蛛型パワードスーツの腹部に飛び乗る。

 

「頼む!」

「行くわよ!」

 

 想像超える機動力で雑木林を進み始める。

 

「車より速いな」

「ふっふっふ、これが私の新作パワードスーツシステム、その名もヘクセンナハト!」

「なんか妙にダサいな」

「カッコイイじゃない! 耳腐ってるの!?」

「いや……葉隠二式とか漢字使ってる方がかっこよくないか?」

「私は生粋のドイツ人よ!」

「あ、そっか」

 

 

 セレネはヘクセンナハトを操作しながら様々な人と通信をして指示を出している。

 

「何でも同時に出来て凄いな」

「実はこれ、私のベースの力なのよ」

「人より賢い生き物がいるのか?」

「違う違う、私はラヴァスパイダーという蜘蛛なんだけど、蜘蛛って体の割りに脳が異常に発達しているの、私はその影響が色濃くでたみたいでぶっちゃけ軽く糸が出るだけでそれ以外の蜘蛛らしい能力は持っていないの」

「あー、てっきりキレると髪と爪の色が変わるだけだと思ってたわ」

「それもあるけど……あれは謎なのよね……」

「まぁそんなもんだろ」

「それもそうね」

 

 空中に浮遊しているヒステロクラテスというユニットが移動の補助をしている。

 景色が一気に代わり、ヤマトは自分が走っていたのが馬鹿馬鹿しく思えた。

 

「これどのぐらい速度出てるんだ?」

「うーん、ヘリと同じくらいだから時速250キロくらいかしら、シルバーベルから獣桜組まで2時間くらいで着くわよ」

「そりゃあいい、夜明けには間に合うな」

 

「げっ!」

「どした?」

「エマさん、獣桜組出て椿宮師団に向っているみたい」

「追いつけるか?」

「いいわよ。まだすれ違ってもいないし」

「頼む。エマさんの周りには誰がいる? ホロケウは居るだろうけど」

「えーっと……ホロケウ、ノラ、アナの三人ね」

「チッ……セレネ急いでくれ!」

「ひとつ貸しよ! 振り落とされないでね!」

 

 セレネはブースターの出力を最大にする。

 

「なんだこの速度!」

「これは正規品には搭載する予定のないブースターよ。15分だけ時速400キロで移動出来るわ! 口閉じないと空気が押し込まれて死にかけるからしっかりしなさいよ!」

「グッァ――」

 

 

 そこからの景色の移り変わりを見るほどの余裕はなかった。

 

 

「もうすぐ着くわよ!」

「わかった! セレネ! ありがとう!」

 

「うーわ、柄にもないこと言わないでよ! 縁起が悪いわ!」

「悪かったな……」

 

 

 


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