↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/14

オリエンテーション(5)

「ねえ、クリス。この学校の行事について教えてくれる?」

「え? ……そう言えば、レイはまだ行事について調べてなかったっけ」

「うん。だから、これからどんな行事があるのか、教えてくれる?」

「分かったよ。えっと……」


 レイはまだこの学校の行事の事を知らなかったため、クリスからこの学校の行事について詳しく聞くことにした。


「まず四月……今なんだけど、オリエンテーションをやるって書いてた。実際に今やってるからこれは良いよね?」

「うん。それは大丈夫だよ」


 四月、デルテミア魔法学院に入学した生徒はまずオリエンテーションでこの学院のルールや魔法の使い方を学ぶ。レイやクリスも実際に明日から魔法を本格的に使うために学び始めることになる。


「ねえ、五月には何かあるの?」


 レイがクリスに質問した。


「えっと、五月には簡単なテストをするらしいよ」


 レイの質問にクリスが答える。


「テスト? どんなことするのかな」

「えっと……魔力診断テストだった……かな」


 クリスに聞いたレイだが、クリスの答えは少し自信なさげであった。


「あってるよ。個人個人の魔力の量や状態を魔法機械を使って調べるみたい」


 横で聞いていた茶髪の生徒がクリスに告げる。個人個人の生徒の魔力量を調べると言われると変わった物に聞こえるが、実際には魔法を使う事で魔力に異常が起きていないか調べるだけのちょっとした健康診断のような物である。


「そっか、間違ってなくてよかった。……えっと、六月は何も無かったよ。そして、七月に学科ごとの対抗戦をする魔法大会がある」

「各学科の代表者一人を選んで他の学科と戦う大会だったっけ?」


 クリスがレイに行事の話を続ける。六月には学校行事は何も無いが、七月には魔法大会があるのだ。


「そうだよ。この魔法大会は違う学科どころか同じ学科の生徒すら参加枠を巡って争う関係になると思うよ。何せ、参加枠を得るためには他の生徒との勝ち抜き戦に勝たないといけないみたいだし」

「それって、やっぱり自分の学科で一番強い生徒を確実に自分の学科の代表にするためかな?」

「そうだよ……というか、普通はそうでしょ? 弱い生徒を出しても意味が無いし、一番強い生徒を出すと思うよ」


 クリスとレイの会話では「魔法大会には各学科でもっとも強い生徒が出る」と言う事になっている。実際、こういった大会を行うと仮定し、かつその大会で優勝したいと思うのであれば、普通は各学科で最も強い生徒を出すことになるだろう。


「クリスは、魔法大会に出たいの?」

「だって、せっかく自分がこの学園で学び、手にした力を試せる機会があるんだよ。だったら、そこで力を試したくならない?」


 クリスは、魔法大会は自分が学んできた物、手にしてきた力を試せる機会だと考えているようである。


「うーん……確かに、自分が持っている物を全部発揮したらどれぐらい魔法が使えるのか……は興味があるけど、でも、それって模擬戦闘でいつでも出来ないかな?」


 レイが指摘した通り、クリスが魔法大会で果たそうとしているものは、普通の模擬戦闘でも可能である。共同訓練室では非殺傷結界が張られているため、仮に全力で戦っても問題は無いだろう。


「うん。まあ、それだけなら模擬戦闘でも出来るよね。でも、この魔法大会だったら、各学科の最強の生徒と確実に戦えるんだよ? それに、一対一で戦えるから、邪魔も入らないし周りに遠慮することも無いよ」


 クリスもレイが言った事は分かっているらしいが、大会だと各学科の最強の生徒と確実に戦えることや、大会が一騎打ち仕様で邪魔が入らないことをメリットに挙げた。実際、訓練室で行うとなるとスペースの問題や周囲との間での魔法の誤爆の心配が生じるだろう。


「まあ、確かにそういう大会だったら一対一で確実に戦えるだろうけど……魔法大会の代表になれなかったら意味が無いよね?」

「だから僕は周りに魔法の技術を盗まれたくないんだよ。もし自分の技術を相手に盗まれて負けたら、意味が無いからね。だから、絶対に盗まれないようにする」


 レイの言うとおり、クリスの考えはそもそも魔法大会の代表になれなかったら意味が無い。クリスは確実に魔法大会に出るために自分の技術を盗まれないようにすると言っているが……。


「……それで絶対に代表になれる保証、あるのかな?」

「あるよ。自分の技術を磨き上げ、それを周りに盗ませなければ勝てるはずなんだから」

「……それでも最初に同じ学科の生徒に負けたら、どうするんだろう? 相手が常に自分より弱いなんてことは無いと思うんだけどな……」

「ん? レイ、何か言った?」

「ううん。何も言ってないよ」


 クリスは自分の技術を磨き上げ、自分だけの物にし続ければ絶対に勝てると思っているようである。ただ、レイがクリスに聞こえないように呟いた通り、クリスが魔法大会に出るために最初に戦う相手である同じ学科の生徒がクリスより弱いと言う保証も無いのだ。その事を言っているレイ自身もその「同じ学科」の生徒であるが。


「ねえ、クリス。八月以降にも行事はあるの?」


 レイがクリスに学校行事の事を聞きなおした。


「え、うん。えっとね、八月始めには、魔法テストと学力テストがあるよ。それが終わったら、九月まで夏休みだって」


 クリスがレイに学校行事の説明を続ける。八月に行われるのは魔法と学力のテストで、それが終わったら一旦夏休みに突入するのだ。


「魔法のテストだけじゃなくて学力テストもあるんだ。魔法以外にはどんなことを学ぶのかな?」


 クリスから説明を受けたレイは、魔法以外にはどんなことを学ぶのだろうかと呟いた。


「風学科だと魔法と一緒に薬学の授業をするみたいだし、それに関するテストかな?」

「薬学? 薬を作る授業かな?」

 

 風学科では魔法と一緒に薬学を学ぶとクリスがレイに教える。レイは薬学と聞いて薬を作る授業なのかと感じたようだ。


「そうだよ。薬の材料を調合して、実際に薬品を作るんだって」

「へえ……。作った薬は貰えるのかな?」


 レイの呟きに対するクリスの返事を聞き、薬学の内容に関心を持ったレイは、薬学の授業の中で自分が作った薬が貰えるのか気になったようだ。


「自分で作った薬に関しては危険なもの以外は貰えるみたいだよ」

「本当? どんな薬を作るのか楽しみだよ」


 クリスに自分で作った薬は貰えるらしいと聞き、レイは薬学でどんな薬を作るのか興味が出たようだ。 


「所でさっきの話に戻るけど、夏休みは九月のいつまでなの?」

「夏休み? 確か、九月の初めまでじゃなかったっけ?」

「一月だけ? 案外短いんだね」


 クリスとの話の話題をさっきまで聞いていた学校行事の話に戻したレイ。クリスの話から考えると八月の初めから九月の初めまでの一月しか夏休みは無いようである。


「まあ、家に帰っても魔法は使えないだろうし、むしろ長いと感じるんじゃないかな?」

「え? 家に帰ったら魔法を使えないの?どうして?」


 レイの言った「夏休みは短い」に対して茶髪の生徒が「家に帰っても魔法は使えないし、むしろ長く感じるだろう」と言った。家に帰っても普通に魔法を使えると思っていたレイは当然不思議がる。


「学長が言わなかった? 魔法は素晴らしいけど危険な力でもある、その気になれば人一人殺すのも簡単だって。もしこの学校と同じ結界が外にもあったらこんなことは絶対言わないだろうし、多分、外ではこの学校に張ってあるような結界が無いんだよ。だから、魔法を使ったらいけないんじゃないかって思う」


 茶髪の生徒がレイに学長の話を思い出させる。学長は生徒たちに「魔法は素晴らしいが危険な力でもあり、その気になれば人一人殺すことも簡単だ」と言っていた。茶髪の生徒が今レイに言ったとおり、外にもデルテミア魔法学院と同じ結界があって安全が確保されていれば学長はこんなことは言わないだろう。もし外にも結界があったと仮定すれば、たとえ攻撃用の魔法を故意にぶつけられても死なないようになっているはずなのだから。


「結界が無いから魔法を使って他の人に当たったら凄く危険だって理由で学長はそう言ったんだよね? ……あれ? でも、それだと攻撃魔法以外なら使っても全く問題ないんじゃ……怪我を治したり空を飛ぶ事と攻撃魔法は関係ないよね?」


 レイが言った通り、例え結界の無い場所でも攻撃魔法以外の「傷つけない魔法」であれば魔法を使っても全く問題ないように思えるだろう。実際、怪我の治療や飛行程度であれば魔法を平然と使っている人間もいるかもしれない。


「うーん……確かにそれだったら怪我をする心配は無いよね。だって怪我の治療や空を飛ぶことで誰かを傷つけることになるなんて想像もつかないよね」

「これで怪我をさせるなんて考えられないでしょ?」


 レイが言ったような治療用、飛行用などの魔法であれば怪我をさせたり傷つけることは無い=外で使っても大丈夫だろう。茶髪の生徒もそう考えたようである。


「ねえ。ところで、十月以降の予定は?」


 夏休みの魔法使用関連の話題が終わったところで、レイがクリスに尋ねる。


「十月以降は……あれ? 予定表の紙にあったかな? どうだっけ?」

「無かったよ。九月の初めに夏休みが終わって学校が始まるってところまでしかなかった」

「そうなの?」


 レイの質問に答えようとしたクリスだが、どうやら入学前に渡された予定表には九月までの学校行事予定しか載っていなかったらしく、答えられなかった。茶髪の生徒に尋ねるも、彼の答えも九月初めまでしか載っていないという物だった。


「僕も寝る前に一度目を通しておこうかな」

「その方が良いよ。知っておいたほうがいいしね」

「うん。そうするよ」


 クリスにも勧められ、レイは一度自分の目でも行事を確認することにした。


ーーーー


 レイが二人の生徒と話しているその頃、レイスは一人離れた場所で考え事をしていた。


「魔法……か。僕は光学科に入れなかったから風学科に入ったけど、こっちでもちゃんとした魔法が学べるのかな? 先生は家具を魔法で自作しろって言ってたけど、魔法はどんなものが作れるんだろ?」


 彼の考えていたことは魔法の事である。セフィナが彼や他の生徒に対して「無い家具は自分で作り出さないといけない」と言った事、家すら自作できることなどを言っていたため、魔法で作れる物のイメージは理解したものの、具体的にどんな魔法を作れるのかはまだ知らないため、その事を考えていた。


「というか、魔法で家具を作るってそもそもどうやってやるんだろう? どこかから木を切り倒して運んできて魔法で組み立てるのかなって思ったけど、そんな風にも思えないし……どうやって作るのか見当もつかないよ」


 魔法で家具を作る。言うのは簡単だが、実際にそれをどうやってするのかは一切わからない。レイスはその工程をイメージしようとするものの、全く見当がつかない。


 ガラガラガラガラ……


「……何の音? 美味しそうな匂いもするし、先生かな?」


 レイスの居た場所のすぐ近くに開け放したままの扉がある。そのため、そこから食べ物の臭いも入ってきたのだ。


「ふう、おまたせ」

「先生……え?」


 レイスはセフィナが運んできた食事を乗せていたものを見て言葉を無くした。そこにあったのは台車だった。レイスも買い物で重い物を買うときは似た形状の物を使っていたため、形が違えどそれが台車と言う事は理解できるのだが、その色は薄く輝く緑色であった。


「……先生。その台車……何で出来ているんですか?」

「ん? この台車?」


 レイスは驚いて言葉を無くしかけるが、何とかセフィナに台車の事を尋ねた。


「この台車はね……魔法で作り出したんだよ。それから……」


 セフィナがレイスの質問に答える。その直後、セフィナの手から緑色の光が広がりだした。セフィナの放った光は瞬く間にその形を変え始め、大きなテーブルへと変化していった。


「……え!? 光が……テーブルになった!?」

「ね? 魔法さえあればこんなふうに、家具だって作れるよ」


 目を丸くしているレイスにセフィナがそう言うと同時に、またセフィナの手から緑色の光が放たれた。光は先ほどのテーブルを作り出した時と同様、形を急速に変化させ、今度は椅子を作り出した。


「……凄い……」

「どう? 不可能を可能にする力、そのものでしょ?」

「はい……本当に家具が作れるんですね……」


 セフィナがやったことに素直に驚くレイス。まさか直接魔法で机や椅子や作り出すとは思いもしなかったのだ。


「それじゃ、配膳は私がやっておくから、あなたはあっち側に居る皆を呼んできてくれる?」

「あ……はい」


 さっき見た光景を思い返していたのか、固まっていたレイスをセフィナの声が現実に戻した。レイスは部屋の奥に居る他の生徒を呼びに行ったので、その間にセフィナは配膳を済ませる。


「うーん……ちょっと刺激が強すぎたかな?」


 配膳を済ませたセフィナは、魔法を目の前で見た生徒の驚いた様子を思い返して苦笑した。


「でも、今度は君たちがそれを使うことになるからね。……でも、最初に魔法を見たときはやっぱりああいう反応をしちゃうよね。……私も、そうだったし」


 自分の所に向かってくる生徒たちを見ながら、彼女は当時の自分を少し思い返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。