表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星のせいにさせてくれ!  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/49

第2話(4) ラブ度100%のプリント(ただし、机の下で開くこと)

虎太郎は、出かかった言葉を胃の奥底へと飲み込んだ。


石上が鞄を肩にかける。


「また連絡するよ」


「え?」


「今度、ふたりで出かけたいから」


その提案に、虎太郎は目を見開いた。


「いや、待て、出かけるって……」


「お試しでもいいよ」


「お試し?」


「うん。俺たち、相性最高らしいしね」


石上は少しだけ悪戯っぽく笑ってみせた。けれど、その耳は真っ赤に染まっている。


やっぱり、どこまでも本気だ。


虎太郎は何も言い返せなかった。石上はその沈黙をどう受け取ったのか、満足そうに小さく頷いた。


「じゃあ、またね」


「石上、」


呼び止めようとした時には、彼はもう歩き出していた。教室の出口へと向かう背中を、虎太郎は呆然と見送るしかなかった。


追いかければいい。今ならまだ間に合う。全部間違いだったと言えばいい。なのに、どうしても足が床に張り付いて動かなかった。


机の上には、石上が残していった相性占いのコピーがぽつんと取り残されている。


【ラブ度100パーセント。何をするにも最高の相性です♡】


ふざけた見出しが、やけに眩しくて視界を刺激した。


虎太郎はゆっくりと椅子に座り直し、両手で顔を覆った。


「……どうすんだよ、これ」


声が小さく震える。完全に誤解されているし、何より石上が本気すぎる。嬉しかったと言った声も、ふたりで出かけたいと言った顔も、すべてが本物だった。


そう自覚した瞬間、胃がきゅっと収縮する。


まずい。非常にまずい。昨日、既読がついた瞬間にすぐ否定していればよかったんだ。


全部根石のせいだ。あいつが勝手に送らなければ、こんな生き地獄を味わうことはなかった。


虎太郎は机に盛大に突っ伏した。


「根石の野郎……っ!」


声はほとんど涙目だった。教室に残っていた数人の学生が不審そうにこちらを見たが、今はプライドを気にしている余裕すらない。机に額をつけたまま、ぎゅっと拳を握りしめる。


次に根石に会ったら絶対にゲームでボコボコにして、ポテチとジュースを限界まで奢らせてやる。そして、この状況を打開する作戦を一緒に考えさせる。元凶はあいつなのだから。


だが――。


脳裏をよぎるのは、石上の赤くなった顔だった。耳に残るのは、嬉しかったと囁いたあの声。


虎太郎は机に突っ伏したまま、低く唸り声を上げた。


「……なんであんな顔すんだよ」


責めるべき相手は根石のはずなのに、胸の奥にトゲのように引っかかっているのは、石上のあの表情だった。あんなふうに照れられたら、あんなふうに喜ばれたら、さすがに「嘘でした」なんて即座に突き放せるわけがない。


「……最悪だ」


もう一度呟く。昨夜と同じ言葉だった。けれど昨日よりも、その響きはずっと重く心に沈んだ。


その時、ポケットの中でスマホが短く震えた。びくっと肩を揺らし、嫌な予感を抱えながら画面を表示させる。


送り主は、石上だった。


【今日の夕方、少しだけ電話してもいい?】


その下には、星がきらきらと輝く可愛らしいスタンプ。


虎太郎は画面を見つめたまま硬直した。


電話。少しだけ。石上と。昨日の告白の続きをするみたいに。


「……無理だろ、そんなの」


そう呟きながら、既読をつけないように慌ててスマホを伏せた。


けれど、心臓はもうとっくに、うるさいほどの警報を鳴らし始めている。


これは誤解だ。嘘告白だ。罰ゲームだ。何度も自分に言い聞かせる。それなのに、石上からの通知にほんの少しだけ胸を躍らせてしまった自分が、何より、たまらなく気に入らなかった。


虎太郎は机の上の占いプリントを、乱暴に鞄の奥へと押し込んだ。


捨てればいいのに、どうしても捨てられなかった。その事実に、また少しだけ腹が立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ