21. 招かねざる来訪者
領地運営の地盤も固まり領主としての仕事も慣れてきた頃、その知らせは突然やって来た。
「ウィル様──ッ!!」
兵士の一人が慌ただしく僕の執務室に入ってきた。
その慌てようから察するに魔族が攻めてきたってことはなさそうだけど、身を構えてしまう。
隣に居たノエルも何事かと不安そうな表情をしていた。
「どうしたの? いきなり──」
「どうしたもこうしたもありませんッ!! 見つかったんですよッ!!」
「見つかった? なにが?」
「と、とりあえず、こちらにいらして下さい! シェナ様もお待ちです」
なにもそんな慌てなくていいのに。
ここで報告してくれても何も差し障りはないというものの。
そういえば──今、シェナはこの領地までの道を安全に舗装できるように、領地周辺の警戒任務に当たらせている。
ここ最近シェナが領内で見かけないのはその為だ。
兵士の一人が慌ただしくここに来たってことは、トラブルが起こった可能性が高いけど、シェナひとりで対処できる案件が殆どだから、よっぽどの事なのだろう。
僕は兵士に促されるまま、ノエルと共に現場に急行した。
「ウィル様、こちらです」
現場に着くと、そこには──たくさんの人集りが出来ていた。
兵士と舗装を行っていた作業員が集まっている。
その中にシェナとアンジェラの姿があった。
「お待ちしておりましたウィル様」
「いきなりどうしたの?」
「どうしたもこうしたも、これはここの領地が発展する大チャンスですわッ!!」
クールなシェナとは対照的に、目を輝かせているアンジェラが居た。
やたらテンション上がってるけど、よく見たらアンジェラの目はお金になってるじゃないか。
もしかして、金脈でも掘り当てたか?
いや──でも、ここは舗装作業を行ってる場所から少し離れているし、その線は無いだろう。
だとしたら、警戒任務中に偶然見つけたのが妥当か?
とりあえずはまず──物を見てみないと何も判断できない。
「とりあえず、その発見したものを見せてよ」
「おっと、これは失礼。しかし──万が一がございますので、ウィル様とノエルは私の後ろにいてください」
「うん、わかった」
人混みを掻き分けながら進んで行くと、そこには──地下へと続く大きな階段があった。
これってもしかして──
「お母様、これって──」
「そう、これはダンジョンですッ!!」
「ダンジョン──ッ!! まさかこんな所に!?」
発見されたのがダンジョンだったのは驚きだ。
正直──この領地はまだできたばかりで特産品だったり観光スポットがなかった。
その為、どうしたら領地の利益を上げられるか日夜議論を重ねていたのだが、ここに来てまさか──ダンジョンが見つかるなんて。
「これは大きなチャンスですね」
「そうだねノエル」
特産品や工芸品は広く世間に認知されるまで、かなりの時間を要する。
だが──ダンジョンは多くのハンターが居るこの世界で、人から人に伝わるスピードは尋常ではない。
我先に新しいダンジョンの攻略を始める者も居れば、ドロップしたアイテムで一攫千金を狙う者も居る。
質の良いダンジョンだと、話題がどんどん広まり、一躍ダンジョン都市として形成される。
ダンジョンというのはそれだけ莫大な富を得るのだ。
「しかも──ここのダンジョン、かなりの魔力を感じるね。もしかしたらかなり大きいダンジョンじゃないのかな」
「シェナの見立てによると、この入口の大きさ的に考えて、50階層相当はあるかと」
「アンキラブルの半分か」
これは先人たちの知恵だが、発見されたダンジョンがどれくらいの規模なのかを測る目安があるらしい。
それは、ダンジョンの入口にて人が横並びで何人通れるかでダンジョンの規模が変わるらしいのだ。
「シェナの見立てで間違いないわ。横並びで5.6人通れるかだわ。それでも大きなダンジョンなのは間違いないわよ」
50階層ともなればそれなりに強い魔物とかもいるわけで、レアな素材も手に入る。
それを加工して売り出せば、それなりの収益も見込める。
ドル箱最高っすわッ!!
「どういうダンジョン構造になっているのかは、追々調査隊を編成するとして、今はダンジョンが発見されたということを王都にしらせないといけないわ」
「それと同時にハンター向けの宿舎と、ダンジョンの依頼を管理するギルドも建設しないとね。これからどんどん忙しくなるよ!」
このトゥルメリア王国では、許可なく無断でダンジョンに入ることは違法とされている。
例え──ダンジョンが見つかったからといって、勝手に調査隊を編成して潜入することはできないし、ギルド本部の許可証とギルドマスターであるガルドの承認も必要である。
その承認があって初めて調査隊がダンジョンに潜入することが許されるのだが、この申請には早くても1週間はかかるだろう。
それまでに色々と準備をしておかなければならない。
とりあえず僕は、無断でダンジョンに入られないように、生成スキルでダンジョンに扉を作った。
あっという間に建てられた扉に、皆は呆気に取られている。
「ウィルのスキル初めて見た。こんないとも簡単に扉が出来るなんて……」
僕のユニークスキルは生成で想像できるものは何でも作り出すことができる。
この間作ったのは魔力を充填して撃つことができる二丁拳銃で、これは父さんの部下であるカマルとの組手で出したことのある代物だ。
もちろん──この拳銃があれば他の人が魔力を充填しても撃つことができるし、威力もラピッドファイヤ程度は簡単に出すことができる。
まだ改良段階だから実戦投入は難しいが、これが投入されれば戦争の概念をひっくり返せる。
「いつ見てもウィル様の生成スキルは凄いわ。私もウィル様に刀を作ってもらったから大事にしているわ」
そう言うとアンジェラはインベントリから作ってあげた刀を取り出した。
アンジェラのイメージに合わせて柄を緑にしたんだっけ。
よく似合ってる。
「えッ! お母様ずるい! わたしも欲しい」
「シェナも貰ったことないのに。ウィル様、シェナも欲しいです」
「でも、2人とも刀なんて使わないよね?」
「使う使わないは別なの。お母様だけずるい」
「シェナは刀を扱えるからいざという時に使うわ」
シェナが刀を使えるのは初耳だ。
でも──長い年月を生きていたのなら、刀が扱えるのも納得できる。
それに、ノエルに至っても護身用として持っておくのも良いだろう。
「わかったよ。今度二人の刀作ってあげるね」
「本当!? やったぁ」
「ありがとうございます、ウィル様。ウィル様の愛のこもったプレゼント……」
別に愛は籠ってないんだけどね──
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