任命式④
みんなはそれぞれ顔を見合わせる。
僕が伝えたいのはノエルとの関係のことだった。
ノエルはそれを察したのか、顔を赤くして俯きモジモジし始めた。
そんな姿見たら僕も赤くなってくるじゃないか。
とりあえず、こういう場合は勢いで言ってしまうのが得策だ。
僕は深呼吸をした後、ゆっくりと話し始めた。
「実は──ノエルと婚約しました……」
「────えっ?」
「本当か?」
「──本当です」
「ウィル様……」
予想だにしない告白だったのか、みんな固まってしまう。
シェナに関しては、食べていたドーナツをぽとりと床に落としてしまい唖然としている。
シェナも僕に求婚してきていたからね。
求婚している相手がいきなり婚約しましたって言い始めたら、そりゃ唖然としてしまうのも無理は無い。
「おめでとうウィル! ノエルさんを幸せにするんだぞ」
「ありがとうケイン。もちろんらそのつもりだよ」
「ウィルぅ〜ッ!! お姉ちゃん嬉しいよぉ〜。ウィルは婚姻とか興味ないと思ってたからぁ〜」
大粒の涙でぐしゃぐしゃになっていますよ。
でも──そんなこと思われてたんだ。
確かに──恋愛のれの字もなかった僕に婚約者が出来たってなったら、アリスも嬉しいか。
でもみんな、僕とノエルが人間同士の結婚じゃないことになんの疑問も抱かず祝福してくれることに嬉しさを覚えた。
こういう人たちが世の中にもっと増えてくれればいいけどね。
「僕だって将来の事考えてるよ。でもありがとうアリス」
「これからはぁ〜、ノエルちゃんは私の妹になるからぁ〜、よろじぐねぇ〜」
さっきまで国王代理で威厳を見せていた姉がこんなにも大泣きしてるの見ていると、ちょっと苦笑いしちゃうよね。
アリスの後ろに居たノーマンは、何も言わず背を向けて天を見上げていた。
うん、嬉しいんだよね。未来のお義父さん。
まだウィル様にお義父さんと呼ばれる筋合いは無い!って言われそうだから心に引き留めておこう。
絶対に組手やらされる。
それだけは勘弁。いや、マジで勘弁。
「ウィル様……」
いきなり──シェナが僕の前に立ち塞がった。
俯いてて顔がよく見えない。
もしかして、何も言わなかったことに怒ってるのか?
でも仕方ないよ、だって──任命式の前に決めたことだし、その場にシェナは居なかったからこのタイミングになるのは仕方ない事なのだ。
「しぇ、シェナ? どうしたの?」
「ウィル様、シェナはずっとウィル様の傍にお使いしていて、いつの間にか心からお慕いし傍に添い遂げたいお方だと思ってました」
「う、うん。前々から気持ちを伝えてくれていたから分かってるし、嬉しいよ?」
シェナはバッと顔を上げると、その瞳はうるうるとしていた。
「ウィル様が結婚することは嬉しく思います! ですが、その相手がシェナではないことに、とてつもないほど悔しく思いますッ!!」
恋というのは、どうしても傷付いてしまうものだ。
みんなも経験があるだろう。
あの人良いなって思っていて横目でその人を追っていて、淡い恋心を抱いていた青春時代。
でも──中々声を掛けられず、気付いた時には多くの時間が過ぎ去り、何も出来なかった自分を。
そして意を決して告白しようとしたのも束の間、その淡い恋心を抱いて目で追っていたその子には、いつの間にか隣に自分じゃない他の誰かが、笑いながら傍に居ることに。
何が言いたいかって?
恋愛は儚いんだよ、人の夢と書いて儚い。
そんな儚い恋心と共に、人は傷付き成長するのさ。
ちなみに僕の経験談ね。
あの子今頃何してるんだろう。
「ウィル様、第二夫人でも良いです。シェナと結婚してください」
「──────えっ?」
「えっ? シェナちゃん?」
「シェナさん、何を──」
シェナの眼差しは至って真剣だった。
この国は一般市民は認められていないものの、貴族の重婚は認められている。
子孫繁栄と血を絶やさない為に認められているのだが、てか──前にも、ノーマンが婚姻を打診した時、シェナは同じようなことを言ってたっけ。
「シェナ、お前はまだ性懲りも無く婚姻を迫るのか」
「ノーマンは黙ってて。この国は貴族の重婚は認められてます。シェナが猫人族だってこと以外には、なんの障害もございません」
「いや──障害はあるよ。だって、シェナとノエルは表向きマクレーン家の人間だってことになってるから、マクレーン家の令嬢二人が同じ人と結婚するなんて無理があるというか……」
「そ、それは盲点でした……」
重婚はまだしも、同じ家の二人と結婚するのは倫理的に問題があるし、前例がない。
てか──重婚自体、僕的には倫理的にどうかと思うけど。
「そういうことだ、シェナ。ノエルが表向きマクレーン家の遠縁である以上、お前の結婚は認められない」
「嫌だッ!! シェナもウィル様と結婚したいッ!!」
「駄々をこねても仕方なかろう」
「やっぱり──ウィル様は乳のデカい女の子が好きなんですね……なら──シェナも魔法で……」
「そういう問題じゃないからッ!! 勝手な解釈やめて!」
「ふーん、ウィルってそういうとこで女の子を見定めてるんだ。もしかして──最初私のこともそういう目でッ!!」
「違うからッ!! 変な妄想しないでッ!!」
「ウィル、実の姉をそういう目で見るのは良くないぞ」
「ケインッ! お前何言ってんだ!」
「ウィルってむっつりさんだったのね……」
「ノエルまでッ!! 違うんだッ!!」
話があらぬ方向に向かってしまっている。
一瞬の沈黙が流れると、みんなからどっと笑いが生まれた。
「ウィルがそんな目で私を見るわけないじゃない」
「そうだな。あの魔法バカのウィルだしな」
「そうです。ウィルは正義感が人一倍強いお方なんですから」
「でも──乳はデカい方が……」
どうやら僕はみんなにいじられていたみたいだ。
こんないじられ方されたのは初めてだし、屈辱を覚えさせられた……
この借りは必ずどこかで返してやる。
とりあえず、シェナの乳はデカい方が発言は無視しておこう。
「ウィル」
「────ん?」
ノエルが僕の方に寄ってきて、耳打ちをしてきた。
「ノエルの身体は、ウィル様だけのですよ」
何を言い始めるんですかね!この子は!
僕でも分かるくらい、顔が真っ赤になっていく。
みんなはその姿を見て、またニヤニヤし始めた。
「まーた、良くないこと考えてるの?」
「やっぱりウィルはむっつりスケベだったか」
「ウィル様、またノエルに対して破廉恥な想像でもしていたのですか。これは性根を叩き直さなければなりませんね」
「待て待て待てッ!! 勝手な想像で僕を貶めないで頂きたいッ!!」
「言い訳無用──」
「ノエルッ!? どうしてくれるの!? ノエルぅぅぅ!!」
ノーマンに連れ去られる僕を横目に、ノエルはペロッと舌を出していた。
ノーマンもノーマンで僕の意見を聞き入れてくれたっていいんじゃない?
本当に親バカが過ぎますよ!
退屈しないのはいいけど、苦痛は嫌ですッ!!
そう思いながら、僕はノーマンの地獄のシゴキに耐えるのであった──
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