18. 任命式
ノエルとのデートがノーマンの乱入? によって中断された数日後──
国王代理であるアリスが王都に帰ってきたので、今日は僕が新領主として任命を受ける式が執り行われる。
この式は、僕が名誉公爵として爵位を受ける授爵式も兼ねている。
ちなみに──ケインは既に授爵式を終えており、今は国王代理であるアリスの傍で公務の護衛を務めている。
ゆくゆくは僕が国王になるのだが、その時にはアリスから僕の護衛に切り替わるらしい。
あのわがままなアリスの護衛をしているのだから気苦労は絶えないだろうけど、これもケインにとって家督を継ぐための大事な修行だ。
存分に振り回されてほしい。
任命式が始まるまで滞在している宿泊用の部屋で待機している僕は、貴族が式典などで着用する黒と紅を基調とした礼装にその身を纏っていた。
ちなみに──公爵家によって礼装の色が違く、例えばフローレス家なら白と蒼、レニツァ家なら黄色と濃い緑、後見公爵であるスミス家は白と金など、様々な色分けをされている。
その色を身に纏えばどこの公爵の人間か一目で分かるし、公爵家という責任と名誉を背負っているという自覚にもなる。
まぁ、グレイシー家の礼装は如何にも軍服って感じが否めないけど。
でもかっこいいよね、こういう礼装って。
「失礼します。ウィル様、様子を伺いに参りました」
「あぁ、ノエル」
ノエルが部屋に入ってきた。
ノエルも今日の式典に参加する為、正装をしている。
といってもハーフエルフである彼女が人間の式典には参加できないので、魔法で人間の耳に変え、ノーマンの遠い親戚としてこの式に参加するらしい。
アンジェラ先生は式には参加せず領地運営の仕事をしているが、彼女曰く──
「エルフを蔑むような目で見てくる式典なんてごめんだわ。ウィル様の晴れ舞台をこの目で見たいって気持ちもありますが、この国の貴族はそれを許しませんので、大人しく仕事をしていることにします」
なんだと。
やはり──この国に根深くそして根強い純血主義は、誰も幸せにしない悪しき風習だ。
このトゥルメリアに限らず、純血主義があるせいで、ノエルは苦しみ蔑みの対象になってしまうのだ。
でも、今は僕に力が無い。
この悪しき風習を変えるだけの地位や名声は今はまだ手に入れてない。
そう、今はまだ──
「ウィル様、どうなさいました?」
僕が考え込んでいると、ノエルは不思議そうに顔を覗き込んで来た。
ちょっと、近い……
「さては、緊張しているのですね。それなら──」
するといきなり──ノエルは僕を抱きしめてきた。
「ちょ、ちょっと! ノエル!?」
「だって、ウィル様が緊張していらしたので、許嫁としてその緊張を解すのは当然のことですッ」
許嫁って……まだ決まった訳じゃないんだけどね。
でもこれが彼女なりの緊張の解し方なのならば、少し緊張は解れたかもね。
ドキドキはしたけど!
「ありがとうノエル。だいぶ気持ちが楽になったよ」
「はい。ウィル様は勇敢でかっこいい、誰にでも救いの手を差し伸べるお優しい方です。なので堂々と胸を張ってください。わたしはそんなあなたが大好きです」
「ノエル……」
彼女にここまで言わせておいて、僕は何故彼女との婚姻に待ったをかけているのだろう。
彼女がハーフエルフだから?
この国が純血主義で次期国王が他種族の血を受け入れて、国の世論に反発されるのが怖いからか?
いや──違う。
僕は、彼女を守り抜くという覚悟を持ってないからだ。
覚悟が無いから、建前として国の世論を言い訳にして待ったをかけている。
なんて卑怯な男だ。
彼女はこんなにも僕を好きでいてくれて、真っ直ぐ気持ちを伝えてくれるのに、僕はただ引き伸ばしにしてただ待ったをかけてるだけじゃないか。
そんなんでいいのか?
いいわけないよな? ウィル──
なら──答えは一つだ。
僕はノエルが好きだ。
「ノエル……」
「はい? ウィル様」
「僕と結婚してください」
あまりにも突然の告白に、ノエルは表情も身体も固まってしまった。
長く綺麗な金髪に整った目鼻、ぷっくらして柔らかい唇に、肌は透き通るように白く、宝石のように綺麗な碧の瞳。
改めてノエルを見ると、彼女は美しくかわいい女性だ。
そんな絶世の美女と表現しても劣らない彼女の目からは、大粒の涙が流れた。
「え、え? ノエル、なんで泣くの?」
「だって……だって……ウィル様が、ウィル様が……」
「やっぱ僕と結婚なんて嫌だよね。そうだよね」
「その逆ですッ! ウィル様はわたしなんて気にもかけてないって思ってたから」
「そんなことないよ! ノエルの真剣さに心を打たれたんだ」
「だとしても急に結婚しようなんて卑怯じゃないですかッ」
卑怯と言われても仕方ない。
だって、唐突すぎたからだ。
まだ僕はノエルに本心を打ち明けてない。
これを伝えないとノエルは納得しないだろう。
「ノエル、僕の話を聞いてくれるかな?」
「うん……」
「僕には覚悟が足りなかったんだ。だから建前で純血主義だの国の世論だのと色々言い訳にして答えを引き伸ばししようとした。でも──この国の在り方に不満を持ってるひとりとして、在り方を変えるなら、それを示すなら、まず──僕がその先頭に立たなきゃいけない。その覚悟が無かったんだ」
「でも──この国はエルフ王国同様、純血思想が根強く……」
「僕はそれを変えたい。そんなくだらない思想があるから、人の考えは閉鎖的になってしまうんだ。僕はノエルが好きだ。ノエルが好きだからこそ、これからも一緒に居るために、君と新しい未来をこの国に示したい」
「ウィル様……ずるい……」
より一層、ノエルの抱擁が強くなった。
僕の気持ちは全て伝えた。
あとはノエル次第。
「ウィル様、あなたの道は修羅の道よ?」
「あぁ、わかってる」
「それでも突き進むの?」
「うん、僕がこの世界を救う」
「わたしも守ってくれる?」
「ノエルが第一優先だよ。君を失いたくない」
「ウィル、だいすき」
「ウィル様呼び止めるんだ。どっちでもいいけどね」
「だって、わたしはもうウィルの許嫁だもん。もう立場は対等だよ?」
「そうだったね。ノエル、愛してるよ」
「うん、わたしも愛してる」
僕はノエルの唇に優しく唇を重ねた──
最後までお読み頂きありがとうございます。
【面白かった】【続きが読みたい】と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!
今後のモチベーションにもなりますので、正直な感想のほど、よろしくお願いいたします!
ブックマーク登録とX(旧Twitter)のフォローも併せてよろしくお願いします!




