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【第三部開幕】転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第三部 トゥルメリアの後継者編

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16. 卒業式

翌日──

王都セリカにあるトゥルメリア魔法学院に赴いた。

今日は学院で行われる卒業式に参加するのだが、今年度入学した僕も飛び級という形で卒業することになった。

僕が領地経営に集中できるようにと、姉であるアリスと後見公爵家のスミス家が決めたことなのだが、やはり──当人である僕に許可なしで決めたことは釈然としない。

今日会ったらひと言言ってやろう。


校門の前にやって来ると、見慣れたひとりの女性? 幼女?が立っていた。


「ウィル様、おはよう」


「おはよう、シェナ」


そこには人化したシェナが立っていた。

シェナは人化するとどうしても幼女体型になってしまい、言葉もカタコトになってしまう。

彼女自身、自分が猫人族だとバレないように人間に擬態して生活している訳なのだが、そんなシェナも今回で卒業という形になるらしい。

元々シェナは僕の護衛でこの学院に潜入していた身だし、僕が卒業してしまえばここに残る理由もない。


「ウィル様、制服、見納め。服、捨てる?」


「制服は記念に取っておくかな」


「なら、シェナ、もらう、それ、シェナ着る」


何を言っているのですかこの人は。

記念貰って飾っておくっていうなら百歩譲って分かりますけど、着るって。

僕のこと好きっていうのは嬉しいけど、シェナさん、それだとただの変態ですよ。

あと、何に使うのか分かったもんじゃない。

どうせ制服にくるまって寝るとかそういうのだろうけど。


「あげないよ。諦めるんだね」


「なら、せめてズボン」


「なんだよせめてズボンって。普通ネクタイとかボタンとかそういうのだろ。ズボンおねだりは初めて聞いたよ」


「え、ウィル様、制服、他に欲しいやつ、おねだりした。誰? そいつ、殺す」


うわー、何か勘違いさせちゃったかもー。

色々説明するのはめんどくさいから省くとして、殺すなんて物騒な言葉、女の子が使っちゃダメよ。


「誰も言い寄って来てないし、制服欲しがる人なんてそうそう居ないから。てか何もあげないから諦めなさい」


「ウィル様、ケチ……」


そんな可愛くふくれっ面になってもあげないものはあげません。

これじゃまるで、幼女をたぶらかす悪いお兄さんだよ。



教室に入ると、みんなの視線が僕に注がれた。

急に視線が集中するからちょっとたじろいでしまったが、僕を見つけるや否や、勢いよくアリスが飛びついて来た。


「ウィルッ!!!!!」


「うおぁぁぁぁ!」


「もう身体は大丈夫なの? どこか痛いとこはない? なにかあったら、私に何でも言ってね? それと、もう無茶はしないで!」


「ごめんねアリス。でも大丈夫、もう元気だから心配ないよ」


「大丈夫って言っても口だけでいつも大変なことをしてるんだから! ちょっとは私の言葉も聞き入れなさい!」


うん、久々だねこの感じ。

そういえば、アリスってかなりのブラコンだったよね。

暫く月日が空いて忘れてたけど、インパクト強めで面食らっちゃうよ。

そういえば、アリスにひと言ガツンと言いたかったんだ。

でも──この場では人が多すぎる。

いつの間にかギャラリーは増えていて、その視線が何か知らないけど痛い……


「久々に学院に来たというのに、他の男子生徒の標的になるなんてね」


ニコニコしてやってきたのはケインだった。

まさか──アリスさんって、この学院の高嶺の花的存在になってるんですか?

通りでさっきから他の男子生徒たちの視線が痛いのか。

確かにアリスはこの国の王女で麗しい容姿の持ち主。

他の貴族たちがアリスを色目で見てしまうのは納得するけど、これって──アリスが僕に恋してるって勘違いされてない?

だって他の人たちは、僕とアリスが実の姉弟だって知らないわけじゃん?

なのに、二人は親密そうに抱き合ってる(一方的に)わけだ。

これ、政治的にも公爵家跡取りのウィルに個人的に好意を寄せているって誤った情報流されたら大変だよね?

しかも──アリスは今や国王に代わって国家運営しているわけだし。

まーたグレイシー家が陰でネチネチ言われるのか。

ごめんね父さん。

悪気はなかったんだよ。


「アリス様、そろそろお離れになられてください」


「なによケイン、久々にウィルに会ったんだからそれくらい許しなさいよ」


「恐れ入りますが、立場というものがございます。ウィルは一介の公爵家です。その公爵家の人間と親密以上の行動を取ったら、根も葉もない噂が立ちます」


「ケインの言う通り、みんな、見てる、アリス様、やめた方がいい」


二人の説得に何かを悟ったのだろう、アリスは少し気まづそうに僕から離れた。

ケインの言葉は正論だった。

まだ僕とアリスの関係性は公にされていない。

その2人が友達でハグする関係であっても、王女と公爵家の跡取りが抱き合っていたら、誰だって勘違いをしてしまうだろう。

でも──ケインがアリスに敬語を使ってるなんて、なんだか面白いよね。

そういえばシノの姿が見えないけどどうしたんだ?


「シノはどうしたの? いつもだったら後ろらへんでニヤニヤしてるんだけど」


「あ、あぁ。そのことについて話さなきゃいけなかったな」


ん? 何かあったのかな?

ケインはちょっと気まづそうにモジモジしているけど、口を開いたのはアリスだった。


「シノちゃんとケインは結婚したのよ! それでシノちゃんとケインの間に子供ができて、今は出産のために休学中よ」


「アリス様ッ!! なんで全部申されてしまうのですかッ!! こういうのは俺の口から──」


「──ケインがモジモジしてるのが悪いのよ。大事な親友のシノちゃんに子供ができるなんて、私嬉しいもの」


「全く……あなたってお方は……」


なんだか、ケインもアリスの天真爛漫っぷりには手を焼いてるのね。

それは弟として謝っておくよ。

でも──まさかケインとシノが結婚しただなんて驚きだ。

二人はいつも言い合いばかりしててとてもじゃないけど結婚するような間柄には見えなかった。

それも子供まで授かるとは。

世の中何があるか分からないね。


「おめでとうケイン。これで守る者が出来て責任重大だね」


「ありがとう。これからはシノと生まれてくる子供の為に、そして──この国のために頑張るよ」


「そういえばアリス、君には言いたいことがあるッ!!」


「な、なによッ!!」


「僕の卒業を勝手に決めるなんて酷すぎやしないか? それならそうと、ひと言くらい言って欲しかったよね」


「だってウィル眠ってたんだもん。これから領主になる人が学院に通って二重生活だなんて、経験している私からしたら相当辛いものよ」


「だとしても、ひと言は欲しかった!」


「だから、アンジェラが私の代わりに伝えてくれたんじゃない。起きてから数日以内にはお伝えするようにって私言ったもん! 起きるタイミングが悪い! 」


起きるタイミングは神に言ってくれよ。

まあでも、アリスはアリスなりに僕を思って決断してくれたってことだよね。

これ以上の言及はしないでおこう。

別に怒りたい訳ではないし、言いたいこと言っただけだから、特別中身もない。

だからこれでいいのだ。


「僕のこと思ってくれての行動だったんだね、ありがとう」


「このまま学院生活が続いたら大変だったのはウィルのほうなんだからね。もっと感謝しなさい」


「はいはい、ありがとう」


「はいはいってなによッ! これじゃ、私が厄介者みたいじゃない!」


「ごめんごめん」


ドッと笑いが起きた。

こうしてくだらないことで笑ったのっていつぶりだろう。

ずっと戦ってたから、笑うことも忘れてたみたいだ。

誰かを守ることに必死で、悪魔を倒すことにも必死で、僕は心の底から笑うことを忘れてたみたいだ。

でも──こうして、誰かと笑うことに幸福を感じている。

こういう日がずっと続けばいいのにな。


ガチャっと教室のドアが空く。

みんなが笑っている中、音に気づいた僕はその方向に目をやった。

その人物を見て、僕の顔から笑顔が消えた。


「ニーナ……」


そこには、助けられなかったジェイドの元許嫁、ニーナ・オースティンがそこに立っていた。

僕の胸が痛くなる。

あの日の記憶が……ジェイドを助けられなかった、あの記憶が……

表情が次第に曇っていく僕に、ニーナは一筋の涙を浮かべながら、優しく口ずさんだ。


「おかえり──」


ただいまは言えなかった──

最後までお読み頂きありがとうございます。


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