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【第三部開幕】転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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誰かの為に、強いては自分の為に③ (アンジェラSide)

時は遡り半年前──


「二人とも……頼んだよ……」


そう言い残し深い眠りについたウィル様。

寝顔が子供のように無防備で愛らしい。

あれだけ神聖魔法を行使し吐血までされては、身体に相当負荷がかかっているし、この場で眠りについてしまうのは仕方がない。


「シェナ、ウィル様をお願い」


「分かった」


「フリーゲルお兄様、国民と残存兵士に十分な食料と休息を取らせてください。それと体力がある兵士には見回りをさせて下さい」


「しかし──テネス兄様の処遇は……」


「今はそれどころじゃないわ。今は人材も何もかも足りてないの。テネスお兄様、働いてもらいますよ」


だが──テネスお兄様は項垂れて泣いたまま、立ち上がろうとしなかった。

アンデルお兄様に騙されていたとはいえ、自身もお父様を殺してしまった自責があるのだろう。

けど、今は本当にそれどころではない。

また悪魔が魔族を引き連れてやって来たら、ジリ貧状態のわたくしたちは、再度侵攻を許し、この首都ジャルダンは陥落してしまう。

頼みの綱のウィル様はとっくに限界を超えていて深い眠りについてしまった。

いつ目覚めるか分からないし、もしかしたら──


「ウィル様にいつも頼ってしまうのは悪いクセだわ……。文官たち居る?」


「はい、こちらに」


数名の文官が私の元にやって来た。

みんな困惑の表情は隠せてないけど、戦闘は出来ない分、やってもらうことはたくさんある。


「テネスお兄様に、オールリベレイトを使って。それが終わったらテネスお兄様を連れて部隊編成と戦える国民を集めて頂戴」


「はッ! 仰せのままに」


オールリベレイト──

オールパージの上位互換魔法で、オールパージで解けない魔法を解除できる魔法だ。

恐らく──テネスお兄様は、オールパージでは解けない闇魔法、傀儡くぐつの沈黙をかけられている。

傀儡の沈黙とは、対象となる相手の声を全て遮断する魔法で、このせいでテネスお兄様は喋れなかったんだわ。

だとすると、やはり──このエルフ王国の中枢には、数年前から悪魔が入り込んでいたことになる。

そうすればお父様をジワジワと弱らせて病死したと見せかけるのは容易だし、何より──裏で操っていた黒幕を吐こうとしたアンデルお兄様を、口封じで殺すことなど容易い。


「嫌だ、嫌だッ!! 僕がお父様を殺したんだッ!! 僕にも罪と責任がある。早く殺してくれッ!!」


「テネス王子、今やあなたはこの国の最高権力者です。しっかりとして責務を全うしてください」


「たかが文官が僕に知った口を利くなッ!! いいから殺せッ、罪は全部償うッ!!」


オールリベレイトで解除は成功したものの、テネスお兄様は、お父様を殺してしまった自責の念から、殺せとせがんでしまっているではないか。

でも──攻撃系の魔法は使えない、武器を持たない文官にそんなことは出来るはずもなく、気がついたら私はテネスお兄様の頬をはたいていた。


「なにするんだよ……アンジェラ……」


「しっかりしてください。どうせ死ぬなら、エルフ王国の民を守ってから死んでください。まだ戦争は終わってません。あなたのエゴで周りを振り回さないで頂きたい」


神聖魔法部隊が展開する、首都を守るバリアは既に魔力切れで解除されている。

首都は野ざらしの状態で、国民に危険が及んでいる。

殆どの兵士が魔力切れで戦闘不能だし、援軍に来た私たちでさえ、悪魔と戦った後で疲弊しいつ倒れてもおかしくない状況。

それなのに──お兄様は自分を殺してくれって?

そんなんじゃ、誰もあなたに引導は渡してくれませんわね。


「わかった、死ぬ前に民たちを守ると約束する。その後は、アンジェラ──君が僕を裁いてくれ」


「承知致しましたわ」


そういうとテネスお兄様は、数名の文官を引き連れて持ち場に向かった。

それと入れ替わるように、ノーマンとケインが私の元にやってくる。


「騒ぎになっているからここに来てみたは言いものの、これを見て大体の予想はついておる。わたくしたちも何か出来ることがあれば──」


「なら、ウィル様を連れてエルフ王国から離れてちょうだい」


「しかし、アンジェラ将軍──」


「恐らく、これだけでは終わらないわ。悪魔は疲弊したエルフ王国が今陥落寸前だってことは知ってる。でも、ここであなたたちを失えば、トゥルメリアの損失になる。だから、ここは逃げて」


多分──エルフ王国はもう持たない。

分かっているからこそ、最後まで抗いたかった。

私がエルフ王国を追放されて15年。

お父様に謝罪と恩返しを果たせず、お父様は死んでしまった。

それでも、エルフ王国元第三王女として死に場所は自分で選ぶ。

全てを悟ったかのように、ノーマンは私を優しく抱きしめた。


「君と出会えたことが、わたくしの最も幸せな瞬間だった」


「ノーマン……」


「わたくしは君を今でも愛している。その気持ちはあの時出会ったわたくしのままだよ」


「その貴方は、もう老け込んだおじ様ですけどね。私も愛してるわ、ノーマン」


「……どうせなら、わたくしもエルフに生まれたかった」


「残念、エルフだったら見向きもしませんでしたわ」


和やかな笑いが涙と共に流れる。

側には困った顔をしながら私たちを見つめるノエルもそこに居た。

私ノーマンはノエルを抱きしめる。


「ごめんねノエル。まだ一緒には暮らせないみたい。お母さん、やることがたくさんあるの」


「わたしも手伝うよ? やっとお父様とお母様に会えたんだもん」


「ダメよノエル。あなたはこれから幸せにならないとダメなの」


「でも──」


私はノーマンとノエルを突き放した。

その意志を汲み取ったのか、ノエルは再び抱きつこうとはしなかった。

だがノエルの頬からは大量の涙が流れていた。


「ノエル、誰かを愛しなさい。それは誰かの為に、強いては自分の為になるから」


「はい……お母様……」


「アンジェラ姉様、そろそろ……」


「分かったわ。それじゃ、またね」


私は名残惜しい気持ちは残しつつも、その場を離れた。

無事──みんながトゥルメリア王国に帰れることを祈ってるわ。



数時間後──

王城を出てすぐ、残存する兵士が居る広場に向かった。

そこには国民の中から戦えるものも含めた人だかりがある。

その数、たった5000──

200歳未満の子どもは招集できないから、これでも集まったほうだ。

ノーマンたちはエルフ王国の国境付近に着いたころかしら。

彼らを帰らせて正解だったわ。

この数を見たら参戦するもの。


「さて──アンジェラ姉様、この数でどう戦いますか」


「それは分からないわ。悪魔の出方次第ってのもあるけど、出来れば攻めてこないことを願うしかないわね」


「残念ながらその願いは叶わないかもね」


テネスお兄様が前方偵察から帰ってくる。

お兄様が言うには、数はざっと5万。

後詰めにしてはかなり多い魔族の数だ。

魔族は既に、城門前まで押し寄せていた。

城門の上の見張り台に移動すると、多くの魔族の前にひとりの男が立っていた。

恐らく悪魔だろう。

白髪で整った白い顎髭。サングラスを掛けていて、スーツをぴっしりと着ていた。


「ようやく姿を現したな、アンジェラ・カリオペ」


「あら──私のことをご存知で。どちら様でしたか?」


「おぉ、これは失敬。わたしは序列4位の地獄の王、クラウリーと申します。以後お見知りおきを」


クラウリーという悪魔、聞いたことがある。

契約の悪魔と呼ばれているクラウリーは、生命や生命力と引き換えに願い事を叶えてくれるらしく、契約履行破棄されると、一瞬にして契約者を殺すと文献に書いてあった。

元々序列5位だったクラウリーは、元序列4位のベリアルがウィル様に倒されてそのまま昇格したっぽいけど、だとしても厄介な悪魔が出てきたものだわ。


「後詰めに出てきたのは契約の悪魔とは、エルフ王国も舐められたものだな」


「隣にいるのはフリーゲル・カリオペ総帥だね。いやぁ、事実上のトップもここに居てくれて助かるよ。仕事がやりやすい」


「貴様、舐めてるのか」


「むしろその逆だ。貴様らこの軍勢を見てそこまで虚勢を張るなどと、逆に悪魔を舐めてるのか?」


「────くッ」


クラウリーの言う通りだ。

私たちは圧倒的な数の前に虚勢を張るしかできなかった。

相手は5万の軍勢に対して、私たちエルフ王国の兵力はたった5000。

しかも──殆どが国民から徴兵した素人同然の者たちだらけだ。

もはや──戦う前から勝負は決まっているようなものだった。


「それで、アンジェラ・カリオペ。貴様たちには大した戦力は残ってないみたいだが、どう太刀打ちするんだ? 投降して捕虜にするのも良いが、そんな煩わしいことしないで殲滅したいのがこちらの主張だ」


「私たちが投降するなんて有り得ない話よ。誇り高きエルフ王国は何者にも屈しないッ!!」


「おぉーッ!! それは殊勝なことだ。なら──エルフ王国にはここで退場してもらおう。自らの選択を悔やんで死んでいくと良い。おい愚民ども、放て──」


すると──後ろに居た5万の軍勢は、一斉に魔法攻撃を放ってきた。

防御魔法が使えない中、次々と相手の魔法は壁を超えて首都に直撃する。

ダメだ──これでは犬死にしてしまう。

私も魔力が枯渇していて魔法が放てない。

白兵戦を仕掛けるにもこの数では──


「アンジェラ──」


「テネスお兄様?」


「君はエルフ王国再建の希望だ。アンジェラはここで死んではならない」


「お兄様? それはどういう……」


「テネス兄様と同意見です。アンジェラ姉様、あなたは生きてください」


「二人ともどうしたの? らしくないわよ」


すると、フリーゲルは私の足元に魔法陣を展開した。

これは──転移魔法陣。


「ダメよッ!! 私の死に場所はここって決まってる! 私も最後まで戦うわッ!!」


「──ダメだッ!! 姉様は生きてください。我々の死を無駄にしない為に。必ず──悪魔たちを」


「やめてッ!! フリーゲルッ!!」


そして──私は、魔族の放った魔法を受けるフリーゲルとテネスお兄様を目の前に、転移されてしまった。

転移先は、ノーマンたちの元だった。

緩衝地帯を歩いているノーマンたちは足を止め、私を見て驚いた表情をする。


「アンジェラ……なのか?」


「あぁ……あぁッ!! どうして、どうしてッ!!」


再びエルフ王国に向かおうとする私に、ノーマンは抱きしめて制止させた。


「ダメよ……戻らなきゃ……お兄様とフリーゲルがッ──エルフの国民たちが……」


「アンジェラ……もうやめてくれ……」


「いやぁぁぁぁぁぁあッ!!!!!!」


私の泣き叫ぶ声が、何も無い砂漠の緩衝地帯に霧散していった──

最後までお読み頂きありがとうございます。


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