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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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悪夢の幕開け⑤

王城の外に出ると、魔族が神聖魔法のバリアに対し攻撃を仕掛けていた。

ただでさえ神聖魔法部隊の疲弊は深刻化しているのに、このままでは瓦解を早めてしまう。

一刻も早くこの攻撃を止めさせなきゃいけない。


「こちら総司令のフリーゲルだ。神聖魔法部隊はあとどれくらい持ちこたえられる」


どうやら王城地下の神聖魔法部隊と念話を行っているらしい。

フリーゲルの表情はより一層険しさを増した。


「それでは魔族に突破されてしまうッ!! 休憩している人員も総動員して死守を行うのだ!! あぁ、絶対だ。絶対にバリアを解くなッ」


そろそろ限界か。

すると──フリーゲルは僕の元に駆け寄り、深々と頭を下げた。

あれほど見下していた僕に、フリーゲルは頭を下げている。

このことがなにを表しているか──もう万策は尽き、神聖魔法を使える僕しか頼る人間が居ないということだ。


「ウィル王子──頼む、エルフ王国を救ってくれ……私は民を守る身。ここでエルフが滅亡したら、代々この国を守ってきた先代方に申し訳がたたない。どうか、この通りだ……」


その横に並び、ノエルも頭を下げる。


「ウィル様、わたしからもどうかお願いします。どうか、エルフ王国を救ってください。わたしの大事な故郷なんです……」


ハーフエルフと蔑まされて、差別されてきたノエルでさえ僕に頭を下げて来た。

どんなに迫害されても、彼女にとってエルフ王国はかけがえのない故郷だということなのか。

正直──フリーゲルの態度でエルフ王国に良い印象は持ってない。

それでも──大切な尊い命ということは変わりないのだ。

それを侵し、我がもの顔で蹂躙じゅうりんする魔族には腹立たしいし、それを操っている悪魔には、もっと腹を立てている。

断る理由は無い。


「フリーゲルさん、頭を上げてください。ノエルさんも」


二人は顔を上げると、涙で顔がぐちゃぐちゃだ。

既に心は切羽詰まっていたのだろう。


「僕たちはエルフ王国を助けにここに来ました。もちろん、最善は尽くします。ですが──僕たちの目的はあくまでも魔族から首都を防衛することではなく、裏で糸を引いている悪魔の討伐です。それだけは忘れないでください」


「それでは──」


「はい、今から大規模な神聖魔法を展開します。場外に居る兵士含め、場内に退避してください」


フリーゲルはその言葉に膝をつき泣き崩れた。


「ありがとう……ありがとう……ウィル王子……このご恩は絶対に忘れない」


「でもウィル様──大規模な神聖魔法を展開すると言いますが、ざっと見ても外の魔族は70万はくだらないと思われます」


「それでもやるしかないんだよ。じゃないと本丸を叩く前にエルフ王国が倒れて終わりだ」


おそらく──悪魔の考えは、エルフ王国の殲滅だろう。

エルフ族は人間と同様、神聖魔法が使える。

人間と仲が悪いとはいえ、エルフが人間に組みしたら悪魔にとって都合が悪い。

だからエルフ族を殲滅し、不安要素を取り除きたいと思っているはずだ。

その為に──魔族というとてつもない数の暴力でエルフ王国を滅亡させようとしているのだ。


『シェナ──聞こえてる?』


『はい、ウィル様。ご命令ですか?』


『今からアンジェラ先生と共にそっちに向かう。ケインを城内の城門前まで退避させてくれ』


『かしこまりました──』


「アンジェラ先生──」


「聞いてましたわ。早速向かいましょう」


僕たちは城門前に向かった。

城門前に到着すると、既に兵士の退避は完了している。

僕とアンジェラ先生は城壁の外に出ると、そこには──おびただしい数の魔族が跋扈ばっこしていた。

やはり──バリアに向けてかなりの魔族が闇魔法で攻撃していた。


「かなりの数だね」


「そうですね。ちょっと気が引けてしまいますわ」


「シェナは戦える。いつでもご命令を──」


神聖魔法を扱える二人はやっぱり心強いや。

僕は二人の手を握った。


「悪いけど、二人の魔力を貸してほしい。この数だから僕の魔力だけでは少し足りないんだ」


「ウィル様、お言葉ですが──この後、悪魔との戦いも控えてますわ。体力を温存しておかないと身体が持たないどころか命の危険まで──」


「大丈夫だよアンジェラ先生。ね、シェナ」


「はい、マナポーションは潤沢にあります。なので心配なく魔法をぶっぱなしてください」


「ってこと。準備はいい? 二人とも」


二人は僕の手を強く握り返した。

そこにはもう言葉は要らなかった。

僕は神聖魔法を発動する為、詠唱に入った。


「親愛なる光の神よ、我が言の葉の願いを聞き光の加護を。そして──我が言の葉の願いを叶え給い、悪しき者を尊き力によって、魂を浄化せん。さすれば──罪は消え、堕落した者を救う光の導きは、尊き者に変わり永遠の安らぎを給わるだろう──オールピュリフィケーション」


魔族の頭上に広範囲の光の柱が展開された。

魔族は攻撃する手を止め、それを見つめる。

やがて──光の柱は轟音を轟き、光り輝いた。


「綺麗です……」


「えぇ……シェナの言う通りですわ」


綺麗に光り輝く光の柱は、やがて収束した。

そこの跡地には、魔族は誰一人残っていなかった。

70万もの魔族の掃討に成功したのだ。

膨大な魔力を使ったせいか、膝からガクッと崩れ落ちる。

直ぐさまインベントリからマナポーションを取り出し、それを飲んだ。

シェナとアンジェラ先生も魔力を消費したので、マナポーションを配った。

今にも死にそうだった二人はマナポーションを口にすると、生き返ったかのような表情になる。


「これで魔族の侵攻の心配はいらなくなったけど、油断はできないから、見回りを強化しよう」


「そうですね。ただ──エルフでも魔族を相手するには練兵した兵士10人で魔族一人がやっとです。一個大隊規模での見回りを進言しておきます」


「ありがとう、アンジェラ先生」


「ウィル様──前から誰か来ます」


シェナの言葉に前を見ると、そこには──ウェーブがかった緑色の髪の毛に、屈強な体躯。片目が傷付いているエルフが歩いてくるではないか。

もしかして──エルドレッドっていう将軍?


「まさか──エルドレッド!?」


やはり──エルドレッド将軍だ。

だが、なにやら様子がおかしい。

彼はニヤニヤしていて、右手にはエルフの首を持っていた。

アンジェラ先生は彼に駆け寄ろうとするが、僕はそれを制止させた。


「どうしたんですウィル様。彼はエルフ王国将軍のエルドレッド・サイフェンですよ?」


「いや──不自然すぎるんだ。あんな大規模なオールピュリフィケーションを撃ったのに、すぐここに現れるなんておかしい。もしその場に居たのなら、彼も僕の魔法で消え去ってるはずだ」


「アンジェラ様、落ち着いて。ウィル様の言うことが正しいわ」


「でも──」


するといきなり──エルドレッドは手に持っていたエルフの首を投げつけ、一気に間合いを詰めてきた。

この身体から溢れる殺気──

そして、彼の身体から魔素溜りを感じる。

エルドレッドは剣を取り出し斬りかかって来た。

僕は咄嗟に刀を取り出し、エルドレッドに相対した。


「ほう──面白い人間が居るものだ。たしか……そうそう、ウィル・グレイシー。いや、ここはウィル・トゥルメリアと呼んだ方がいいかな? 偉大なる御方の器よ」


やはり──エルドレッドは悪魔に支配されていた。

いや──殺されて悪魔の器にされてしまったというのが妥当か。

その証拠に心臓部分がくり抜かれている。

悪魔はたとえ器の一部が無くなっても、精神体であるからなんの支障もない。

むしろ──器自体を再生さえできてしまう。

僕は剣を弾くと、間合いを取った。


「お前──悪魔だな? 名はなんていう」


「我が名はオロバス。序列7位の地獄の王だ。ようやく地上に顕現できたが、まさか──最初に相対する人間がベリアル様を打ち破った少年だとはな」


悪魔オロバス──

確か、対象に変身し技まで模倣できるという悪魔だよな。

昔文献で読んだことがある。

500年前に地上に一度来たらしいのだが、当時の器が死刑囚だったらしく、そのまま器ごと焼かれてしまって、即地獄に帰って行った、ちょっとアレな悪魔だ。


「まさか──僕も相手する悪魔が500年前に器が死刑囚でそのまま火やぶりの刑で地獄に帰らされた、可哀想な悪魔だなんてね」


「少年、物知りだな。あれから我の器が現れないからヤキモキしたが、ようやく器が手に入り我も偉大なる御方の為に戦えるものよ」


「また──器焼かれないといいね」


「エルドレッド──ッ!!」


エルドレッドの姿を見たのか、城内からフリーゲルが顔を出してこちらに駆け寄ってくる。

ダメだ──見た目はエルドレッドでも、中身は既に悪魔のものになっている。

こちらに近寄っては、フリーゲルの命が危ない。


「こっちにきちゃダメだッ!! コイツはエルドレッドさんじゃないッ!!」


「なにを言っている! どう見てもエルドレッド──」


その刹那──

オロバスは、フリーゲルに斬りかかった。

咄嗟のこと過ぎて、オロバスを止められなかった。


絶壁ぜっぺき──ッ」


オロバスのいきなりの攻撃を、ノーマンが受け止めた。


「なんだオッサン。面白い防御魔法だな」


「エルドレッドに扮した悪魔よ──。これは魔法ではない。アケチ桔梗流格闘術──絶壁だ」


「ほぅ。面白そうじゃねえか。気に入った。オッサン、あんたの相手はこの我だ」


「良いだろう。だが──わたくしとこの青年で戦わせてもらう」


そこには、ケインも立っていた。

ケインは既に抜剣していて、臨戦態勢だ。


「二対一か。まあいいだろう。ガキ、簡単に死ぬなよ?」


「それはこっちのセリフだ」


「あら──面白いことになってるじゃない」


僕は頭上を見上げると、そこには──アスモデウスが立っていた──


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