幕間のひと間
どうもみなさんこんにちは、私の名前はアリス・フローレスと申します。
フローレス公爵家の長女で、フローレス家は長年トゥルメリア王国の商業を担ってる家系です。
兄が2人居ますので、私に家督を継承する権利はないのですが、他にもちょっと込み入った事情があるので、そこはおいおいお話しましょう。
そして──今日はトゥルメリア魔法学院に入学する日!
この国の貴族や裕福な家に育った子は、15歳で成人すると、学校に通って勉強をするって習わしがあるのです。
15歳で成人した私は、この間の入試を経て、トゥルメリア魔法学院の制服に身をまとい、現在登校中でございます!
「ねぇ、アリス!今日楽しみだね!」
「そうだね、シノちゃん」
私の隣で歩いてるのはシノ・エクシアちゃん。
エクシア侯爵家のお嬢様で、私の家の直属の部下です。
シノちゃんとは昔から仲良しで、立場関係なく仲良くさせて頂いております。
「でもさぁ、彼本当に来るかねぇ〜。でもあのグレイシー家のお坊ちゃんで跡取りだから来るのは当然だけど、あの時のアリスの発言はねぇ!」
嘲笑うかのように挑発してくるシノちゃん。
シノちゃんが人をバカにする時、大体──嘲笑が混じってるんですよね。
「シノちゃん!やめてよ!今でもなんであんなこと言ったのかわからないくらい、私だって混乱してるんだから!」
そう、あの時──
『私を、ウィル様の許嫁にしてくだはひ!!』
初対面のウィル様に許嫁を申し込んだり、盛大に噛んだり、恥ずかしくなって逃走したり……
かなり踏んだり蹴ったりだったのですが、あれから少し日がすぎてしまい、今会っても気まづい感じになってしまいます。
「ま、普通に接したらいいんじゃない?女は度胸!男は愛嬌!って言うしね」
「シノちゃん、逆だよ……女の子が愛嬌なのに。普通ってなんなんだろ……」
身も蓋もないアドバイスをされた私はしょぼくれていると──
「アリス様……アリス様……」
横の路地からヒソヒソと男性の声が聞こえました。
私がそこに目をやると、定期的にやり取りしてる外套を纏って深くフードを被った男性がそこに居ました。
シノちゃんごめんね、ちょっと外すね。
私がシノちゃんにバレず離脱すると、男性は話始めました。
「アリス様、彼の御方と同じクラスになるよう手配しました。しかし──打倒派の動きも神経を尖らせてるみたいで……」
「ご苦労様です。さすがじぃやですね。担当教師は打倒派ですか?王権派ですか?」
「そこはご安心ください。戦鬼の懐刀が担任されます」
「なんと──叔父様も動いてたの?」
「ええ、彼は昔からの王権派で国王と同門の出なので」
「そうなのね、父上はなんと」
「父君様は、アリス様と彼の御方のことを心底心配しておりました。アリス様、ご無礼を承知で申し上げますが、父君様と一度お会いしてはどうかと」
「それは出来ないわ。この災禍が終わるまで私と彼は日の目を見ることは無いし、常に脅威に晒されるの。そして──打倒派に気づかれでもしたら、それこそ災禍の到来を早めてしまう」
「申し訳ございません。アリス様──誰か来るようです。シーカーの痕跡をキャッチしました」
「分かったわ。話は終わり。短刀を握って」
「かしこまりました」
彼は短刀を握ると──ドタドタと2人分の足音がこちらに近づいてくる。
「ばーかばーかばーか!」
「もうちょっとマシな事を言ってください!」
「だって思いつかないんだもん!!」
なんかごめんなさい……。
「──アリス!!」
「ウィル様!!」
私は、咄嗟にウィル様後ろに隠れました。
「彼女に御用ですか? 何やら言い争っていましたが」
「………………ったく、飛んだ邪魔が入ったな」
「邪魔とは?あなたは一体何者なんです?」
「君には関係ない事だ」
「関係あります。友達が見知らぬ人と言い争ってたら助けるのが当たり前でしょう」
「見知らぬ人ねえ。……まあいい。あまりこういうことはしたくないんだがね、これでは分が悪い。今日は引かせて貰うよ」
そういうと彼は助走も無しに高く飛び──建物の上に消えて行きました。
ウィル様、ごめんなさい。
今はあなたには言えないの。
----------------
さて、入学式がやって参りました。
長々と学院長の話を聞いてて少し退屈ですが、
その前に教室でウィル様がケインとかいう王家後見の公爵家のお坊ちゃまに喧嘩売られてましたけど、一応私も公爵家の人間ですけど!?
でも──私はいいのです。だって、ウィル様があのケインを叩きのめしてくれるから。
それだけで私は満足です。
ちなみに──
小さい頃、この国の貴族は5歳になるとお披露目会があり、当時私はケインに、
『やーい、ブスブス!フローレスなんて6家の底辺!』
なんて言われて、相当頭に来ましたね。
あの出べそのくそガキが成長して今や女の子に囲まれてイケメン風吹かしながら、出来る跡取り気取ってるの見てると、虫唾が走りますね。
しかもウィル様に喧嘩売ってタダで済むと思うなよ?
おっと、あらやだ!淑女たるもの、高貴高潔でなければなりませんわ。
「それでは、新入生挨拶。ウィル・グレイシー」
「はい!」
ついに──ウィル様の挨拶が始まりました。
高潔で凛々しいお姿。
まるで王子様のようです。
「この度は、我々新入生の為にこのような式典を開いていただいた事、感謝の意を表します。この誇り高きトゥルメリア魔法学院の一員になれたことに慢心せず、より多くのことを学び、未来のトゥルメリア王国を支えられるような人材になれるよう研鑽を積み、努力することを誓います。新入生代表、ウィル・グレイシー」
ウィル様が一礼すると、会場からは大きな拍手が讃えられました。
素晴らしい、素晴らしすぎる。
やはりウィル様は尊きお方です。
私も頑張らないと。
そう心に誓うのでした──




