王都奪還作戦② (ケインSide)
「良いかッ、バリアを維持したまま反撃するんだッ!! 楽して王都を守れると思うんじゃないぞッ!!」
俺たちは暴徒化したハンターを鎮圧するべく、戦闘が激化しているガルドさんたちの下に向かっていた。
到着すると、ガルドさんを含めたハンターたちは大規模バリアを展開し、相手の猛攻を防いでいた。
だが──相手の数はこちらより遥かに多い数だ。
このバリアもいつまで維持できるか分からない状況だった。
「これはまずい状況だ。ガルドッ!! 加勢に来たッ!!」
「ノーマンの叔父貴ッ! それにカマルとトーマス、ケインまで──」
「叔父貴と呼ぶのは止めろといつも言っているだろう。それで──ハンターはどれくらい暴徒化しているんだ」
「わかりません。幾度と倒しても次から次へと出てくる始末です」
それもそのはず──
普通のダンジョン都市とは違く、国内最大級のダンジョン、アンキラブル大迷宮がある。
多くのハンターが富と名声を欲するままに挑んでいくが、大半のハンターはそれだけを欲して活動しているわけではない。
学もなければ知識も無い、腕っ節だけで生きてきたハンターは大抵落ちぶれるのだ。
強奪、殺人、婦女暴行……いくらあげてもキリがないが、それだけタチの悪いハンターが、ここ王都セリカに多いという訳だ。
「ま、再三アリス王女殿下から改善命令を受けているのにも関わらず、ハンターの治安正常化を実現できやなかったガルドの責任だな」
「叔父貴それはないですよ……これでも一生懸命がんばって──」
「──絶壁」
ノーマンはガルドたちが展開したバリアを貫くほどの魔法か何かを絶壁で阻止した。
ノーマンが装着している白い手袋からは煙が出ていた。
「相当な力ですね。この暴徒の鎮圧、一筋縄では行きませんよ」
「師匠……もしかして──」
「えぇ、あの中にSランクハンターが居ます」
FからSまであるランクにおいて、Sランクハンターはハンターにとってこれ以上無い名誉と言っていい。
ただ──そんなSランクハンターの数は多くない。
貴族のダグラス卿、ガルド卿、ノーマン師匠、そしてアンジェラ将軍、シェナ将軍はSランクハンターだった。
そんな彼らを除いて平民上がりのSランクハンターは国内に5人しか存在しない。
その中の一人がここにいるのか、それとも複数名いるのか。
「この国の為に老体に鞭打って馳せ参じたのに、Sランクハンターが相手では分が悪いですな」
「叔父貴、何を言ってるんですか。まだバリバリ現役であるあなたが言う言葉ではありませんよ」
「ガルド卿の言う通りです。──とりあえず俺たちが援軍に来た以上、これ以上の被害は出せません。対策のご思案を」
「対策はケイン、君に任せる」
師匠──今なんて……。
「師匠、一体どういうことですか?」
「君にこの場の指揮権を任せると言ったんだ」
「それは妙案ですな。未来ある若者に指揮の経験を積ませるのに、この場は最適だ。ケインやってみろ」
確かに──この場において俺がSランクハンターを相手するよりも、経験豊富で同じSランクハンターだった師匠やガルド卿が相手する方が良い。
俺はなるべく他の暴徒化したハンターたちが邪魔して来ないように、カマルさんたちと連携して鎮圧することに徹しよう。
すると、暴徒化したハンターたちの攻撃が止み、誰かを通すかのように分かれる。
その真ん中には、Sランクハンターらしき人物が鎮座していた。
「やはりお前か。ポーン・ディグル──」
「これはこれは、元Sランクハンターの絶拳──ノーマン・グレイシーじゃねえか。すげぇ大物が参戦してきたもんだ」
ポーン・ディグル──
二つ名は生命喰らい
僕でも耳にしたことある名の通ったハンターだ。
見た目は20代半ばでこの歳でSランクハンターになったということはかなりの実力者。
見た目は野蛮で、ドレッドの髪型が特徴的。
主要属性は土。
土から生成した人型の眷属を操り攻撃を仕掛けてくるスタイルだが、土魔法を操るハンターは誰でもできる芸当である。
だが──彼がSランクたらしめる理由は、彼のユニークスキルがあってこそだ。
それは──ライフスティール。
対峙した敵や味方問わず、自分の意思で生命力を吸い上げ、体力回復をしたり魔力に変換したりできる厄介なスキルだ。
しかもそのライフスティールは、土から生成した人型の眷属からでも発動出来て、近距離特化の師匠では分が悪い相手だった。
「雷帝のガルドだけじゃ物足りねえって思ってたんだよ。でも、絶拳が居るなら話は別だ。2人まとめてかかって来い。ジジィども」
「安い挑発だなポーン。わたくしはなんとでも言っていいが、ガルドはお前の直属の上司だ。例え許しを乞うても貴様の首が飛ぶぞ」
「ハッ!! はなっから許してもらおうざなんぞ思ってねえよ。それとも絶拳、俺様に負けるのが怖ぇのか?」
「貴様みたいな小童にわたくしが臆するとでも? ダンジョンの中でしかイキれないガキがわたくしに挑発するなど、滑稽の極みですな」
師匠……あまり表情に出さない人だけど、物凄くキレているのが分かる。
だって──気が有り得ないほど吹き出してるんだもん。
Sランクハンターであるポーン・ディグル、命は大切にしたほうがいいよ……。
「ごちゃごちゃうっせぇなッ!! さっさとかかって来いよッ!! どうせまともな攻撃も出来ずに死ぬんだから、あっさり死ねよッ」
「これだけわたくしの気を見ても臆することが無いのは、さすが──Sランクハンターと言ったところでしょうか。それならば生死問わず問答無用。本気で参らせて頂く」
「ヘッ、ようやく本気になったか。最初ごちゃごちゃ何言ってるかサッパリ分かんなかったけどよ、あんたをやりゃあ、俺様に箔が付くってもんよ。せいぜい楽しませてくれよなァ!!!!」
既に両者待ったなしの状況だった。
暴徒化したハンターたちもポーンが戦いに出ることに歓声を上げ士気が高まってしまう。
これ以上──防御に徹していても勢い付いたハンターたちは止められない。
かくなる上は──
「ケイン──策は決まりましたか?」
「はい師匠」
「では、その策を皆に」
僕は頷くと後ろを振り返り皆に目を合わせた。
ひと呼吸置いて冷静になり、語り始める。
「師匠がポーンと戦っている間、我々は暴徒化したハンターの鎮圧を行います。バリアを張れるハンターと前衛部隊を交互に配置してください」
「了解しました」
「そして、トーマスさんは更にその上からバリア障壁を展開してください」
「骨が折れますね。了解しました」
「カマルさんは別働隊を率いて、敵の横っ腹を襲撃してください。相手はハンターと言えど、軍略には疎い連中ばかりです。対策できずに瓦解するでしょう」
「了解しました。何人かわたしに着いてこいッ」
カマルさんは数名を引き連れて街の中へと消えていった。
「そして──ガルド卿は師匠の援護です。あの人型眷属は厄介です。遠距離から攻撃し無力化を計ってください」
「了解した。それでいいですか、叔父貴」
「えぇ、素晴らしい策です。さすが、わたくしが見込んだ弟子です。ケインにも才能開花の兆しが見えましたね」
「いえいえ、とんでもない。俺はまだまだです。でも、これからもっと精進いたします」
「その意気ですよ。では──始めましょう」
「はい────ッ」
皆が配置に付き師匠が前に出ると、バリアが展開された。
ポール・ディグル──
Sランクハンターの頂きに立てたのに、何故王国に楯突く側になってしまったのだろう。
このまま暴徒化せず反乱もせずに居たら、今後もハンターを生業として生活できたはずだ。
だが──彼はそれを選ばなかった。
安定を求めることは悪いことじゃない。
誰だって安定した生活できなくなるのは嫌だし、なにより食べ物に困ることが嫌なのだ。
それを捨ててまで彼は修羅──いや、破滅を選び進んでしまったのだろうか。
今考えても仕方の無いことだってわかってる。
でも──俺には彼が下した選択に納得いかなかった。
「無駄話は終わったようだな」
「貴様と言葉を交わす理由などもうない。かかって来い」
「んだよ釣れねえな。んじゃ──やらせてもらいますかねッ」
師匠とポーン・ディグルの戦いが始まった────
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