幕間のひと間 その14
過激な性描写があります。苦手な方は注意してお読みください。
ここはどこなのでしょうか──
王宮で公務を行っていた時でした。
資料を見ながらひとりで廊下を歩いていると、いきなり後ろから取り押さえられ、鳩尾を殴られた私は痛みのあまり気を失ってしまったわ。
目を覚ましたのは良いものの、椅子に座らされている私は手足を拘束され目隠しまでされている。
手足の自由と視界を奪われた私は、それを解くすべもここがどこなのか把握することもままならなかった。
何より──すごく寒い。
春が訪れて暖かい気候になったけど、ここは外からは隔絶された日差しも当たらない場所なのでしょう。
「誰か──誰か居ませんか」
誰かに助けを求めるが、自分の声だけが反響し返ってくる。
まさか──ここは、王宮内にある地下牢なの?
主に政治犯罪を行った罪人が収容される場所だけど、どうして私がここに?
もしかして誘拐?
いや、何のために──
でも──何のためになどは考えれば分かることだった。
私を誘拐して地下牢に閉じ込めている間に、トゥルメリア王国でクーデターを起こす気だ。
「モーガン・トゥルメリア……あなたの絵図ですね」
父であるジェフリー・トゥルメリアの弟で、私の叔父にあたる人。
数十年前に王位継承争いで敗れ、父の手によってこの国から放逐された叔父様が、クーデターを敢行する為に行った犯行。
私を地下牢に閉じ込め封じていれば、快復に向かっている国王といえど容易く御してしまうのは必定。
ノーマンはウィルの領地に居るし、ダグラスは特殊任務で暫くここを離れている。
ケインは私が攫われたことをウィルに伝えに行ってる時かしら。
寧ろ──私が攫われたということを気づくかしら。
モーガン派も今回のクーデターを大事にはしたくないはず。
どちらにせよ、助けが来るのは望み薄だわ。
「ここは──自分でどうにかしないと」
「おやおや、お目覚めになられましたな。王女殿下」
「その声は……ネルソン・レニツァ公爵?」
目隠しされているので相手が誰だかわからないけど、聞く度に嫌悪が増すその声の持ち主が、ネルソン・レニツァ公爵だということに疑う余地はなかった。
「声だけで私だと理解してくれているとは、興奮が増しますなぁ」
凄く息が荒い。
声の距離からして少し離れているのは把握できるけど、相手は変態で有名なネルソン。
この状況で襲われてもなんら不思議では無かった。
「ネルソン、私を解放しここから出しなさい。そうすれば今回の愚行は水に流します」
「愚行……? 何を言っている。私はあなたを好きにしていいと、モーガン様からお許しを得ています」
「叔父様……? どうして」
「どうしてなどどうでも良いことでしょう。私はずっとあなたを私のモノにしたいと思ってました。こんなにも見目麗しいアリス王女を玩具にできる唯一のチャンスですからねぇ」
気持ち悪い……
私をそんな目で見ていたなんて。
どうにかここから脱出しないと。
こいつの慰め物にされてしまう。
そんなの嫌だ。
「アリス王女……いや、アリス。私の妻になるのだ。毎日私がお前を抱いてやる。どうせ男の味など知らぬのだろう? なら私が隅々まで教えてやろうじゃないか」
ネルソンが近づいてくる。
ズボンを下ろす音が聞こえた。
嫌だ──本当に犯される。
地下牢は神聖魔法はおろか、属性魔法も使えないように遮断されている。
魔法が使えないこの場所では、私はただの乙女に過ぎなかった。
ネルソンは私の服に手をかけると、勢い良くビリビリと破いた。
私の身体が露になる。
「なんとも美しい身体だ。形の良い胸をしていて、透き通るように白い肌。こんな無垢な身体を汚すのは少し惜しいが、私の理性は決壊寸前だよ」
指先で身体をすーっと撫で回される。
撫で回される度に背筋に悪寒が走った。
ネルソンは私の身体に顔を近づけ、匂いを嗅ぎ回った。
その度に息が当たり吐き気を催す。
ネルソンから放たれる熱気が不快で不快で堪らなかった。
彼の汗なのかなんなのか分からないが、粘っとした体液が太ももに垂れ落ちる。
更に吐き気が加速した。
「やめて……お願い……」
「やめてと言われてやめる男はおらんよ。なーに、最初は痛いが後々それは快楽に変わるさ。私以外では物足りない身体にしてやる」
そういうと無理矢理足を開かせられ、身動きが取れなくなる。
「いやッ!! やめてッ!! ヤダッ!! 離れてッ!!」
「暴れるなッ!! 今日からお前は私の玩具だ。玩具が反抗するでないッ!!」
私は頬を思いっきり殴打された。
頬に激痛が走る。
同時に頭もクラクラして、一瞬にして力が抜けた。
「ようやく大人しくなったか。──それじゃ、楽しませてもらおうかのう」
もうダメ──
私はこの人の慰め物にされてしまう。
誰かと結婚するまで守ってきたこの貞操を、呆気なくこの憎きネルソンに奪われるのだ。
誰か──誰でもいいから助けて──
「父上──いらっしゃいますかッ」
誰かの声にネルソンの動きが止まる。
ネルソンは私から離れると、その声の方向に身を傾けた。
「ったく──私の楽しみを邪魔しおって。どうしたスレブ。要件はなんだ」
私は頑張って足で目隠しを取ると、そこにはスレブが居た。
スレブはネルソンの息子。
スレブと目が合うと、彼は目で頷いた。
彼は私を助けに来たのだ。
「モーガン様がお呼びです」
「何用で私を呼んでいる。見てわかるだろう私は今尋問中なのだ。邪魔しないで頂きたい」
「でも、モーガン様は父上をお呼びです。向かわれたほうが宜しいかと」
ネルソンはひとつ大きなため息をつくと、スレブに背を向けた。
そして私に目を向ける。
「いいか、私はモーガン様に暫く尋問で忙しくなるからと申し付けたのだ。それなのに私を呼びつけるなど疑問が生まれるよ。それに──こんな綺麗な女を抱けるチャンスなんだ。私の玩具と遊ぶ──ッ!!」
刹那の時だった。
スレブは忍ばせていたナイフで実の父親を、ドスッと刺したのだ。
あまりの咄嗟の出来事に、ネルソンは動揺を隠せなかったのか、目が見開いている。
「ス、スレブ……これはどういう……」
「いくら父上といえど、王女を慰め物にしようとなどレニツァ公爵家の恥──いや、この国の恥です」
「き、貴様ぁぁぁぁあ!!!! ──うッ!!!!」
スレブがもう一刺しすると、ネルソンは床に倒れた。
ネルソンは立ち上がろうとするが、あまりの激痛と身体の重さで立ち上がれなかった。
その隙にスレブは私を拘束している縄を解いてくれた。
「アリス様申し訳ございません。もうすぐ援軍が参ります。それまで安全な所に避難して貰うので、もう暫くの辛抱です」
「どうして私を助けるの? あなたはレニツァ家で王権派の私とは敵対する身でしょ?」
拘束が解かれると、スレブは着ている礼装を私に羽織らせた。
ビリビリに破かれたドレスで外を歩くのはちょっと宜しくないと思ったのだろう。
あんなに人を見下して威張っていたスレブが、今となっては紳士な好青年に変わってる。
これも全部ウィルに出会ったお陰かしら。
「王権派だの打倒派だの今はどうでもいいです。忠誠を誓うトゥルメリア王国の御方にこんなことをする父が許せなかっただけです」
「でも──実の父を刺すだなんて……」
「致し方ありません。覚悟はしていました。このまま地下牢を出ていけば刺すことはなかったでしょうが、ね」
「ス、スレブ……」
地面に横たわったネルソンが私の足首を掴む。
私はそれを思いっきり踏みつけた。
ネルソンの手が離れる。
「汚らわしい豚め。私に触るなど1万年早い」
「アリス様、ここを離れましょう。この王宮はモーガン派に占拠されています」
「でも──お父様がまだ王宮に──」
「大丈夫です、国王陛下のお側にはダグラス卿が付いてます。ウィルたちも市街地に潜り込めたと報告を頂いてます」
ウィル──
やっぱり助けに来てくれたんだね。
でも私の救出は二の次でいいから、クーデターを起こしたモーガンを討ち果たして。
でないと、この国は完全にモーガンに支配されてしまう。
一抹の不安を抱きながら、私は救出してくれたスレブと共に地下牢を後にした──
「派手にやられたなネルソン」
「お、お前は……」
「んー、クライアントって言っても分かんねえか」
「な、なにをする……」
「お前の身体を寄越せ。醜い身体をしているが、無いよりかはマシだ」
「や、やめろッ!! 悪魔、この身体は私のモノだッ 貴様にはやらんッ」
「ウダウダうっせぇよ。んじゃ、入るぜ」
「うごあぁぁぁぁぁあ────」
「くっせぇ身体してんな。まぁ仮の身体だし良いか。早くここから脱出しねえと。タイムリミットは3時間ってとこかな」
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