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神に選ばれた転生貴族は、世界を救うことにしました 〜退屈だった人生から始まる英雄譚〜  作者: リオン
第三部 トゥルメリアの後継者編

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いざ、ダンジョンへ②

 父さんの黒歴史と引き換えにノエルからダンジョンに行く許しを得た僕は──アンジェラ、シェナ、ニーナ、そしてノエルを連れて迷宮に訪れた。

 その代わりと言ってはなんだが、領地には父さんが残ってくれており、ノーマンと雑務をこなしてくれるらしい。

 ブツブツ文句を言っていたが、なんだかんだで兄弟水入らずの時間を過ごせるのだから、許してほしいという気持ちはある。

 当の本人は不服っぽいけど。

 でもアンジェラ、シェナ、ニーナはいいけど、どうしてノエルまで着いてくるのだろう。

 ダンジョンは危険だし、ノエルって戦闘系魔法使えるの?


「ノエルまで着いてこなくてもよかったんだよ?」


「無茶しないための監視でわたしも着いていくの。それとも──女の子だらけの編成で浮気でもする気?」


 そんなことするわけないだろう。

 と、強く言いたいところだが、言ったところでノエルは納得しないし、どんな理由であろうとノエルは着いてきていただろう。


「そんなことをしたら私が許さないわ。大事な娘を泣かせるなんてことをしたら、100年の苦しみを与えるもの」


 アンジェラさん、物騒なこと言わないでくださいね。

 自分の婚約者のお母さんの目の前でそんなことするわけないでしょ。


「あとはシェナさんの監視も含まれてます。何かとウィルに迫ってはふしだらなことをしますからね」


「あら、シェナを監視するってことは自分がウィル様に愛されているって自信がないからかしら。安心しなさい、この探索は任務でもあるの。そんなことをしてると命の危険に晒されるわ。あなたこそ気を引き締めて頂戴」


 喋り出しのチクチクは置いといて、久しぶりにまともなことを言うシェナを見た気がする。

 シェナの正論が刺さったのか、ノエルは頬をプクっと膨らませるが、対称的にシェナは余裕の表情を浮かべていた。

 だが──シェナの言う通り、この探索は今まで誰も足を踏み入れ無かった未開のダンジョンに足を踏み入れるのだ。

 気を緩ませていると一気に足元を掬われる。

 命の危険と隣り合わせの仕事だし、僕も気を引き締めよう。


「さぁ、着いたよ」


 僕たちは新しく発見されたダンジョンに着いた。

 領地から歩いて10分程度の場所にある為道のりは容易だった。

 だが、ダンジョンの規模からしてもしスタンピードが起きたら、真っ先に領地が危ない。

 やはり──領地の防衛システムの再構築は早急に行わないと。


「にしても、大きなダンジョンね」


「アンキラブルの大迷宮とまでは言いませんが、少し不安です」


「ニーナはあまり戦闘が得意じゃないからね。それでも、後方支援は任せたよ」


「は、はいッ!! 任せてくださいッ!!」


 ニーナは僕らの世代でも数少ない無詠唱で雷魔法を発動する人間だ。

 保有する魔力は少ないものの、後方支援ならそんなに魔力を必要としないし、無詠唱で魔法を放てるのはかなり心強い。


「ノエルはニーナの側から離れないように。危ないと感じたら直ぐに撤退してね」


「大丈夫よ。自分の身は自分で守れるから心配しないでウィル」


「いや、でも───」


 僕が言いかけたその時、ノエルは僕の手を握った。

 その手は温かくて柔らかく優しさの籠った手だ。


「ウィル───あなたがピンチの時、わたしがあなたを守るの。安心して。あなたが進む道はわたしも歩む道でもあるから」


「ノエル……」


 いざとなったら、ノエルをオールテレポーテーションで領地に返せばいい。

 あとで絶対に怒られるけど、命の危険に晒されるよりかはマシだ。


「うん、わかった。でも、絶対に前に出ちゃダメだからね」


 ノエルは無言で頷く。

 ダンジョンの入口はこの間僕が生成スキルで扉を作って、更に開けられないように封印魔法も施している。

 僕はそれを解除すると、ゆっくりと扉が開いた。


「さぁ───みんな、準備は良い?」


「わたしは大丈夫」


「いつでも行けるわ」


「シェナは大丈夫」


「準備はできてます」


「それじゃあ、行こう────」


 僕たちはダンジョンの中に足を踏み入れた。









「にしても、やたら明るいダンジョンね」


「ノエルはダンジョンに入るのは初めて?」


「ううん、エルフ王国にもダンジョンはあったわ。けど、ダンジョン内は舗装されててしっかりと明かりが灯されてるの」


 エルフ王国にもダンジョンがあるのか。

 てことは、必然的にアンジェラも入ったことがあるってことだよな。


「エルフ王国のダンジョンは何千年も昔から存在していまして、先人たちが最低限の安全の為にと中層に入るまでは明かりを灯しているのです。要は新人ハンターの死亡率を最低限抑える為ですね」


 そういえば、アンキラブル大迷宮も低層は明かりが灯されていたな。

 あれは新人ハンターが不用意な死を迎えない為の人の手を加えられた安全策だったのか。

 それくらいダンジョンは危険な場所だし、油断したら簡単に命を落としてしまう場所だってことだ。

 でも──ここのダンジョンはそんな明かりが必要ないくらい明るい。

 その正体は、地面に生えている魔晶石が原因だ。

 魔晶石は魔素が固まって出来た石で、青白く輝いている。

 だが──魔晶石自体に価値は無く、地上に持ち出そうとしても、外に持ち出した瞬間霧散して無くなってしまうのだ。

 その原因は未だに解明されてなく、今でも多くの学者が研究している。

 しかし魔晶石は中層に生えている石で、一回層目から出会える代物じゃない。

 少し不気味な気配が僕の背筋をなぞったが、気にしすぎだろう。


「中層に生えてる魔晶石がこんな一回層目に生えるなんて以上ね。シェナ見たことないわ」


「シェナの言う通りよ。一回層目から魔晶石を見るなんて、もしかしたら────」


「────ラピットファイヤッ!!」


 僕はアンジェラに目掛けてラピットファイヤを放った。

 いや──正確には、アンジェラの後ろにラピットファイヤを放った。

 高速で火球がアンジェラの横を通過すると、後ろにいた何かに当たった。


「ぐぅぬぬぬぬぬぬぬァ……ギャァァァァアッ!!!!」


 そこには人型の大型爬虫類、リザードマンが立っていた。

 アンジェラは咄嗟に間合いを取り、臨戦態勢に入る。

 ラピットファイヤが命中したは良いものの、厚い鱗で覆われているリザードマンにはあまり効いていないようだ。


「ウィル様、助かりました」


「いや、いきなりラピットファイヤ放ってごめん」


「いいえ、しかし──全く気配に気づきませんでした。たかがリザードマンでこんなこと有り得ません」


 それもそのはず──リザードマンは爬虫類といえど擬態する能力は無く、魔法も使えない。

 だが属性魔法に対する耐性を持っていて、ただ腕っ節が強い本能の赴くままに攻撃してくる魔物だ。

 なのに、こんなにも接近を許してしまうなんて、このダンジョン何かがおかしい。

 普通じゃない。

 僕はインベントリから刀を取り出した。


「シェナ、リザードマンの気を引いて。アンジェラはシェナのサポート。ニーナは遠距離からライジングショットで援護して」


「「「了解ッ!!!!」」」


 それぞれの持ち場に着いた僕たちは、まず──シェナから間合いを詰め、その後ろにアンジェラが随行した。


「アケチ桔梗流格闘術──絶拳ッ!!」


「ウィンドブラストッ!!」


 シェナってアケチ桔梗流使えるんだ。

 そういえば──シェナは元々わたくしの弟子です。って、ノーマンがそんなこと言ってた気がする。

 シェナの絶拳がリザードマンの鳩尾みぞおちに命中すると、そこには大きな跡がついた。

 そこに畳み掛けるように、アンジェラのウィンドブラストが命中する。

 だが──属性魔法に対する耐性があるリザードマンには、アンジェラの攻撃は効いてなかった。

 けどそれでいい。

 リザードマンのターゲットは逃げ足の速いシェナに向いた。

 ターゲットがシェナに向いたまま、僕は間合いを詰めた。


 リザードマンが耐性を持っているのは、あくまでも属性魔法。

 だが──僕の魔法は属性魔法のカテゴライズから逸脱した神聖魔法だ。

 僕は刀身に神聖魔法を宿すと、一気に振り抜いた。

 真っ二つになったリザードマンは倒れ込み、ただの肉塊へと成り果てた。


「大丈夫ですか、ウィル様」


「うん、大丈夫。にしても、一回層目から中層の魔物が出てくるなんて驚きだよ」


 普段は中層に生息しているリザードマンが一回層目から現れた。

 しかも──完全に気配を消してアンジェラに近づいてきたのだ。

 極めつけは周りに生えている魔晶石。

 これはもう、一つの答えを全員が認識した瞬間でもあった。


「ここには低層は存在しない」


「そういうことになるわね」


「低層が無いってことになると、初心者ハンターにはこのダンジョンは無理だわ」


「うん、いきなりリザードマンに対峙するんだ。初心者狩りも良いとこだよ」


 僕は落胆し肩を落とした。

 そりゃあ無理もないよ。

 初心者ハンターの需要は中堅ハンターよりも大事だ。

 何故なら、中堅以降のハンターは初心者より少ないし、最強ハンターを夢見る初心者が来てくれれば、その分街の興行だって潤う。

 数が多い需要が見込めないと、それだけ得られる収益も減ってしまうのだ。

 しかも──ここがいきなり中層クラスとなると、若手ハンターでも踏破するのは厳しくなる。

 いきなり借金まみれの領主生活はやだよぉぉぉ!!


「いきなり中層だなんて……とりあえずまだ探索は始まったばかりだから先を進もう……」


「ちょっと待って──」


 僕が落胆しながらトボトボ歩いていると、ノエルがそれを制止させた。


「どうしたのノエル。留まってると危ないから先に進もう……」


「わたしに試させて。時間を頂戴」


「留まってたら危な────」


 僕の言葉を聞かぬ間に、ノエルは地面に右手をかざした。


「オールアナリシス──」


 え……どうして────

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