誘拐されたどん!
8
しまった!!ここは漁場だ!!早く逃げないと、お刺身にして食べられてしまいます。歌を歌う事に夢中で、逃げるのが遅くなってしまいました。
どんどんはバタバタと足をばたつかせて逃げようとしました。しかし、全く前に進みません。
そこへ陸が、魚を入れるコンテナを乗せた台車を引いてやって来ました。中には少し水が入っていました。
「どんどん乗って!!」
騒然とする中、どんどんはステージからコンテナに飛び乗りました。
台車は重く、あまり早くは進めませんでしたが、陸少年の後ろからおじいさんが押してくれました。漁港の外まで出ると、やっと一安心。一息つきました。
「みんなに一言言って来る。陸、ここからお前1人でどんどんを家まで運ぶんだ。できるな?」
「うん!」
「おじいさんありがとうどん!」
そう言っておじいさんは漁港へ戻って行きました。
陸少年は一生懸命台車を押しました。それでも、どんどんの乗った台車は重く、少しずつしか進みません。とうとう、陸少年は疲れて止まってしまいました。
「陸、ありがとう。もういいよ。おいどん、ここから海に帰るどん。」
ガードレールの下は岸壁になっていて、すぐ下は海でした。これじゃまるで崖の上の何とかです。ここから飛び降りれば、生きて帰れるかどうかはわかりませんが、海には帰れます。
陸少年は泣きそうになりながら言いました。
「もうお別れなんて嫌だよ!せっかく友達になれたのに!」
「でも、これじゃ陸がいつまで経っても家に帰れないどん。」
「僕、どんどんが一緒じゃなきゃずっと家に帰らない!」
もうすっかり日が暮れて、辺りは暗くなって来ました。
「そうだ!大人に手伝ってもらおう!僕、大人を呼んで来る。待ってて!すぐ戻って来るから!!」
そう言って陸少年は、家の方へ走って行きました。
1人になったどんどんは泣きました。悔しくて、悲しくて、どんどんどんどん泣きました。
せっかくおじいさんと陸少年が、自分の夢を叶えてくれたのに、拍手は少しももらえず、人魚の姿に戻ってしまいました。
いっその事、ここから海に帰った方が、もう誰にも迷惑はかからない。そう思いました。
どんどんがコンテナを這い出ようとすると、車のライトで照らされました。
「まぶしいどん!」
その車は、どんどんの前で止まりました。車から1人のおじさんが降りて来ました。
「本当だ……。本当に人魚が実在したなんて……。」
「良かったどん!陸に頼まれて助けに来てくれたどん?」
「…………え?ああ、そうなんだよ。安心してこっちにおいで。大きな水槽が用意してあるからね。」
そう言うと、おじさんはどんどんを大きなゴミ袋に入れ首の所で口を縛りました。
「少し我慢していておくれ。」
そう言って車の後部座席にどんどんを乗せました。これじゃ、まるで人質みたいです。
こうして人魚に戻ったどんどんは、悪い人に誘拐されてしまいました。




