初ステージどん!
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「どんどんはどうして演歌歌手になろうと思ったの?」
陸少年はどんどんに訊きました。
マイクも知らないどんどんは、どうして演歌歌手になろうと思ったのでしょう?
すると、どんどんは理由を話始めました。
「おいどん、まだ小魚だった頃、釣り人の針にかかって、釣られた事があるどん。その時、初めて陸の音楽を聞いたどん。」
「それで感動したんだね。」
しかし、どんどんは首を横に振りました。
「違うどん。」
「違うの!?」
どんどんはまた海の歌を歌ってみせました。
「バケツの中で、海の歌を歌ったら、気持ち悪がられて海に放されたどん。」
「うん、それ、ちょっと気持ち悪い。」
陸少年は少し困った顔をしました。
「陸の歌なら、気持ち悪がられる事もなく、食べられる事も無いどん。」
「それって、演歌歌手になったら食べられないからって事?でも、どんどんは人間だから食べられないよ?」
どんどんはまだ漁港に警戒していました。幸い、足はまだ魚になりそうにはありませんでした。
「でも、どうして演歌なの?」
「後で、海に戻った時、陸で歌を歌う人は演歌歌手だとサメのおじさんに教えてもらったどん。」
「演歌とは限らないんだよ。陸にはたくさんの音楽があるんだよ?」
その、まだ聞く事ない陸の音楽は、これ以上聴ける時間はなさそうでした。
「もっと陸の音楽を聴きたかったどん。おいどん、陸の全部の音楽を聞くのが夢どん!」
「あれ?演歌歌手じゃないの?」
そんな事を話していると、村人が何人も何人もやって来ました。
「歌を聴きに来いって言うから、来てみたけども…………こりゃステージかい?」
「こっちは歌手かい?」
陸少年に呼ばれた村の老人達が集まって来ました。
それからどんどんはら言われた通りにステージに上がりました。マイクを上下逆に持って。
「どんどん!マイク逆だよ!」
陸少年が間違いを教えてくれました。
「おいおい、大丈夫かい?」
どんどんは村人達に笑われてしまいました。
「どんどん!挨拶!挨拶して!」
陸少年にそう言われ、どんどんは集まったみんなに挨拶をしました。
「こんにちは。」
どんどんが挨拶をすると、村人達は戸惑いながら挨拶を返しました。
「…………こんにちは。」
「おいどん、どんどん、どん!」
どんどんが自分の名前を言うと、村人達は口々に言いました。
「ドンドンドン?」
「変わった名前だねぇ。」
「嫌だよ、ありゃ芸名ってやつだよ。」
「そんな名前で売れるのかい?」
「売れないからこんな所で歌うんだろ?」
おじいさんの合図で、どんどんが一礼すると、音楽が始まりました。そして、いよいよ、どんどんはマイクに向かって歌い始めました。
どんどんは、どんどんどんどん歌いました。
それでも、拍手はもらえませんでした。お客さんはみんな、あんぐり口を開けていました。
しばらく歌うと、どんどんは立っていられなくなって、ステージに座りました。
すると、村人達がざわめき始めました。
「ありゃどんなからくりだい?」
「歌謡ショーじゃなくて、マジックショーかい?」
気がつくと、どんどんの足先はヒレになっていました。何とか隠そうとしましたが、どんどん変化していきました。
曲が終わる頃には、どんどんの足はすっかり魚になってしまいました。
こうして、どんどんの初めてのステージは終わりました。
7日目の夕方、どんどんは演歌歌手の卵から、元の人魚に戻ってしまいました。




