漁港へ行ったどん!
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あと2日で、どんどんには何ができるでしょうか?
何も思い浮かばないどんどんは、とにかくひたすら聴いて、覚えて、練習しました。
その間、陸少年やおじいさん、おばあさん、陸少年のお母さんとお父さん、お姉さん、陸でできた家族から、少しずつ拍手をもらうようになりました。これで人魚に戻らないといいのですが……。
人魚になったら、半分にされてちょっぴり薄衣の唐揚げにして食べられてしまうでしょうか?どんどんは心配でたまりませんでした。
そして、とうとう、7日目の朝を迎えました。
どんどんの、演歌歌手になるという夢は叶いませんでした。その願いは叶えられず、海に戻る事を覚悟しました。
朝ご飯の前に、陸少年はどんどんに漁港へ行くように言いました。
「お昼過ぎたら、じっちゃんが漁港に来るようにって。どんどん、僕と一緒に行こう!」
「漁港!?」
ウミネコのお父さんと魔女が言っていました。
『漁港には行ってはいけないよ。』
どんどんは迷いました。
陸少年の言葉を信じて、漁港へ行くか、それとも、ウミネコのお父さんや魔女の言葉を信じて漁港へ行かないのか。
「漁港は魚を売り出してくれる所だと聞いたどん。それは食べるためだどん?」
「そうだよ?魚はね。でも、どんどんは人間でしょ?人間のどんどんを食べたりしないよ?」
「あ!!そうか!!」
どんどんは自分が人間になった事をすっかり忘れてしまいました。
「それなら安心して漁港に行けるどん!」
そう言うと、陸少年に笑われてしまいました。
朝ご飯の後、おばあちゃんに着物を着付けてもらうと、あっという間にお昼過ぎになりました。
陸少年とどんどんが漁港へ行くと、漁港の一角にポツンと荷物を運ぶ箱のようなものを重ねた台がありました。それはもしかして、ステージでしょうか?
そこへ、陸少年のおじいさんがやって来ました。おじいさんは、大きな機械を台車に乗せて、その台車をゆっくり押して来ました。
陸少年はおじいさんに気がつくと大きな声でおじいさんを呼びました。
「じっちゃん!どんどんを連れて来たよ!」
「おぉ!やっと主役の登場か!」
どんどんは漁港をキョロキョロと見渡すと、言いました。
「どんなに恐ろしい場所なのかと思ったけど…………全然恐ろしくないどん。」
「どんどん、漁港の事何だと思ってたの?」
また陸少年に笑われました。おじいさんが台車を止めて、なにやら機械に線をつなぐと、音が流れ始めました。
「よし、これで音は出る。マイクの調節もした方がいいな。ほらよ。」
そう言って、おじいさんはどんどんにマイクを渡してくれました。
「これ、何だどん?」
「何って…………マイクだろ?」
「どんどん、演歌歌手はマイクを持ってマイクで歌うんだよ。え?マイク知らないの?」
二人はどんどんがマイクを知らない事に驚きました。演歌歌手になりたいと言っていたので、当然知っていると思っていたからです。
マイクを知ったどんどんは、7日目にやっと、演歌歌手の卵になりました。