厳しいどん!
5
「じゃあ、どんどんはどんな歌を知ってるの?」
辰義少年にそう訊かれたどんどんは気がつきました。
そういえば、陸の歌を知りません。どんどんは海の歌しか知りませんでした。
「海藻と小魚の歌なら知ってるどん!」
どんどんは歌ってみせましたが、陸の歌とはほど遠く、拍手はもらえませんでした。
「じゃあ、うちの演歌ならじっちゃんだ!じっちゃんの所に行こう!」
陸少年はどんどんにそう提案しました。
そして、二人は陸少年の家へ行く事にしました。陸少年のお母さんは、大きなお友達のどんどんに驚きました。
陸少年のおじいさんは、村の漁師でした。普段は船で沖に出ているのですが、今日はちょうど家にいました。
陸少年の家には、曲を聞く機械と、曲の入っている円盤がたくさんありました。
じっちゃんは「若けぇのに珍しいな!」そう言って、快くどんどんに演歌を聴かせてくれました。
どんどんは機械の中から音が聞こえてきた事に驚きました。
「箱の中に演歌歌手がいるどん!おいどん、中に入って挨拶して来るどん!」
どんどんが箱の穴に頭を突っ込もうとすると、陸少年に止められました。
「違うよどんどん!これは録音だよ。中に人はいないんだよ!」
おじさんはどんどんに少し驚きましたが、笑って機械の使い方を教えくれました。そして、いくらでも好きなだけ聴いていいと言ってくれました。
陸少年とどんどんは、どんどんどんどん歌を聴きました。
そのうちに、陸少年は飽きて、漫画を読み始めました。そのうちに、じっちゃんも居間にテレビを見に行きました。
1人残ったどんどんは、どんどんどんどん曲を聴きました。そして、どんどんどんどん歌を覚えました。そのうち、覚えた歌をどんどん歌ってみました。
とうとう日が暮れました。しばらくすると、陸少年がどんどんを呼びに来ました。
「どんどん、ご飯だよ~?」
どんどんはご飯を食べるのも忘れて、歌を聞いて、歌を練習しました。
ずっと曲を聴いているどんどんに、呆れた陸少年のお姉さんが、音楽プレイヤーとイヤホンを貸してくれました。これで、トイレに行く時も、ご飯を食べる時も、お風呂に入る時も、寝るときも、ずっと曲が聞けます。
そんな生活が3日続くと、陸少年が拍手をしてくれました。
「拍手…………?そうだどん!陸にあがってもう5日どん!」
「どうしたの?どんどん!」
どんどんは訳を陸少年に話しました。
「そうだったんだ!あと2日!?僕、お母さんに相談してくる!!」
しかし、大人にそんな話信じてもらえるはずがありません。
しかし、じっちゃんだけは他の大人とは違いました。
「そりゃあ大変だ!!」
じっちゃんは笑ってそう言いました。しかし、腕を組んで頭を左右に傾けても、名案は出て来ません。
「あと2日で演歌歌手かぁ…………ちっと厳しいなぁ……。」
「厳しいどん……。」
おじさんに厳しいと言われ、どんどんは、どんどんどんどん気持ちが沈んで行きました。
「大丈夫だよ!どんどん!僕、色んな人に方法がないかきいてみる!そうしたら、何かいい方法が見つかるかも!」
「陸!ありがとう!!」
「よし、家族の一大事、一肌脱ごうじゃねぇか!」
一肌脱ぐ?どんどんは思いました。おじさんは脱皮ができるのでしょうか?いやいや、そうではありません。
「じっちゃんも助けてくれるって。だから諦めちゃダメだよ。」
そうそう。あと2日あります。
陸にあがると、あっという間に5日経ちました。まだまだ演歌歌手にはなれそうにありません。
しかし、陸少年の家で家族のようになりました。




