疑惑七、その子どもたちは悪事に利用されていますか(4)
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神殿の灯りが揺れる。暗い夜道で、その光は灯台のようだった。
何度となく、もう背負われてはどうだと申し出られながら、ジーンは坂を登りきった。途中からなかば足が浮いていた気がするが、マリエには悟られずにすんだはずだ。
平身低頭して、肩を貸してくれたおじいさん神官にお礼を伝えて、部屋まで送るというのを断る。
案外あっさり引いてくれたので、ほっとしつつ首をかしげていると、門のところに、ユーリオが立っていた。そして。
「うわっ、ちょ、ちょっと……!」
有無を言わさず抱え上げられる。
「暴れると、子どもたちが起きてくるよ」
「だったら、降ろして!」
ユーリオはちらりと読めない目をしてジーンを見る。
「誰が『魅力が足りない』って?」
これは、降ろしてもらえない。答えるまでこのまま粘られるやつだと察し、ジーンはため息をついた。
「さあ?盗み聞き、する、ところとか?」
「そりゃぁ、こんな息も絶え絶えの女の子がずぶ濡れで話しこんでるんだから、いつ倒れるかって様子くらい伺うよ」
じろりと睨まれる。気をもみながらも思い通りにさせてくれたのは分かったので、そっぽを向いてごまかした。
耳がユーリオの胸に触れる。心臓の音がする。びくりと震えかけたところに、タイミング良くユーリオが言った。
「ありがとな。マリエのこと」
「何のこと?」
「泣いてるより怒ってるほうが、元気だろ」
「私は……言いたいこと、言っただけよ」
別に慰めようとしたわけではないと、主張する。水だってかけたし、実際慰めなど全く口にしていない訳で、礼を言われるのは、かなり気まずいのだ。
「うん。そうだね」
ユーリオは否定しなかった。
「それに……あの子、まるで、小さいころの私みたいで……」
最後まで言い切らないうちに息の限界が来る。
部屋につくと、ポリーが桶に湯を張ってくれていた。お姫様抱っこを目撃されたことを恥ずかしいと思うより先に、ジーンは直接湯の中に降ろされた。
「服、着たままなんだけど」
「脱がせた方がよかった?」
そう言うユーリオはいつものおちゃらけた口調ではなくしかも真顔で、そのことにジーンは動揺した。
顔を真っ赤にしてぶんぶん首を横に振ると、
「じゃあ、外で待ってるから。終わったら声かけて」
そのまますたすたと部屋を出て行く。
「さあさ、もうひと頑張りよ。手伝うから、早く暖まってスープを飲んで、布団に入ってしまいましょう」
「自分で…」
できると言おうとすると、ポリーが厳格な表情を作って言った。
「今日はもう、言うことを聞いてなきゃあ駄目です」
「でも」
「みんな心配したんだからね。それに……これ以上心配をかけると、ユーリオが手ずからお湯に入れると言い出すわよ」
それは絶対御免被るので、ジーンは仕方なく幼子のように服を脱がされ、お湯をかけられ洗われて、乾いた寝間着に着替えさせられた。
ジーンをベッドに座らせると、ポリーは扉を開けた。
すぐにユーリオが入ってきて、使い終えた桶を抱え上げて去っていった。
落ちてくるまぶたと戦いながら、ジーンはそれを複雑な気持ちで見送った。一瞬だけ、目が合ったが、すぐに逸らされた。やっぱり勝手な行動を怒っているのだろうかと、そんなことを考えかけたが、ポリーがスープを運んでくる間に睡魔に負けてしまった。




